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1-3.妖精卿との出会いと平穏の崩壊編3【R-18:半非合意、全身愛撫】

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 ようやく落ち着いてきた俺に囁きながら、ヴァルネラは下肢に手を伸ばしていた。
 慌てて体を離そうとするが、彼はもう俺の下履きに指を掛けている。

「ぜ、全部脱がないといけない? さすがに、それは抵抗あるんだけど」

 俺は恥ずかしさが抜け切らず、手近にあった毛布で体を隠そうとする。
 けれど素肌に布が触れる感覚が非日常を際立たせて、余計に羞恥心を煽られた。

「できる限り接触面が必要ですけど、下着は残しましょうか。だから隠さないで」
「わ、勝手に捲らないで! 分かった、自分で退けるから!」

 申し訳程度にしか体を隠せない毛布だが、それでも手放すには時間が掛かった。
 剥き出しの体を自分で晒すことに途中で気づいたが、もう止めることはできない。

(くそ、自分で自分の首を絞めた気がする。こんな、見せつけるみたいな恰好)

 素肌のほとんどが外気に晒され、更にヴァルネラの視線まで絡みついてくる。
 その表情は好奇心に満ちており、遠慮を知らない子供に近い危険性を秘めていた。

「ふふ、それ凄くいいですね。貴方のその恰好、とても興奮します」
「ばか、最低! じゃあヴァルネラも脱いでよ、不公平だ!」

 勝手に俺の服を暴いた彼は少しも脱いでおらず、せめてもの反撃に不平を漏らす。
 けど混乱した頭で出した答えは、口に出した後で間違えだったと気づかされた。

「えぇ、構いませんよ。元々そのつもりでしたし」

 ヴァルネラはあっさりと俺の言葉を受け入れ、上着を寝台の外に放り投げる。
 すると目の前に露出された体は均整が取れていて、思わず目を奪われてしまった。

「でもおかしいですね。接触面を増やしているのに、魔力が伝わってこないなんて」
「俺、さっきより苦しいんだけど。熱いのが、俺の中でずっとぐるぐるしてる……」

 寝台とヴァルネラの間に挟まれた俺は、逃がせない熱と息苦しさに喘いでいた。
 心臓から魔力は発露しているが、それを肉体が拒絶しているようにしか思えない。

「うん、ちょっと魔力を排出して様子を見てみましょうか。ほら、足を上げて」
「うそ、下着まで取るの!? あっ、や……!」

 朦朧としている間に下着を剥ぎ取られ、俺は一糸纏わぬ姿になってしまった。
 そして体を離される代わりに強引に足を割り開かれ、下肢に手を伸ばされる。

「魔力は血や精に溶け込みます。陰茎に刺激を与えて、一度出してしまいましょう」
「あっ、あっ、だめ、出ちゃう、から!」

 唯一自由になる両手で顔を隠して呻くが、なんの解決にもなりはしない。
 けれどそれが興奮材料になったようで、抵抗を楽しむように刺激を強めてきた。

「その為にしてるんですよ。ほら、もっと気持ちよくなってください」
「やだっ、もう無理! あっ、んあぁあああっ!」

 建前は俺の魔力放出のはずだが、彼の指使いは完全に俺を弄ぶためのものだ。
 強制的に性感を昂らされて、俺は為す術もなく熱を吐き出すしかなかった。

「出ましたけど、量が少ないですね。まだ苦しいですか?」
「苦しいけど、もうやめたい……」

 俺の腹に散った白濁に指を絡めて、ヴァルネラは含まれた魔力を確認している。
 一方俺は毛布を引き寄せようとするが、それすらも許されない。

「ダメですよ。貴方は、私の同類になるって約束したんですから」
「ヴァルネラのいう同類って、こんなことする関係なの?」

 彼の行為が俺の知っている関係性に結び付かず、鈍くなった頭が疑問を生む。
 しかしその問いにヴァルネラは首を振って否定し、興奮した表情がすっと消える。

「これは魔力を引き出すための過程です。私の求める同類は、同じ魔法使いとして並び立てる者ですよ」

 感情が読めない面持ちで、彼は目の前にある肉付きの悪い体をなぞっていく。
 その目は俺を見ておらず、多分彼の中にある過去に向けられていた。

「最初は家門の兄弟や同級生に目をつけてたんですが、みんな最後にはいなくなってしまった。だからいなくならない人を、自分で作ろうって思ったんです」

 交わらない視線は熱を帯びているが、あれは温かみではなくもっと苛烈なものだ。
 彼は渇望したものが手に入らないのではなく、多分無意識に自ら滅ぼしている。

(もしかして俺、とんでもない人に手を出したのかもしれない)

 今更後悔が押し寄せるが、ここを出て行ったところで淘汰されて終わりだ。
 それを解決するには、俺は体を対価にして力を手に入れるしかない。

(頭ではそう分かっていても、心はそう簡単に割り切れないけど)

 この世界で生き残るには彼の玩具に徹するべきだと理解している。
 だが触れられると体が縮こまり、諦めがつかず部屋中に視線を彷徨わせていた。
 けれど解決策はなく、肌をまさぐる感覚を受け入れるしかない。

「でも今は、難しく考えないで。ただ気持ちよくなってください」
「っ、どこ触ってんの!? うあ、そこは本当に嫌だ!」

 探るように動いていたヴァルネラの手が尻の割れ目に滑り込み、俺は声を上げる。
 反射的に腕を掴んで止めようとするが、意外と力が強い彼はびくともしない。

「もうここまで来たら、直接魔力を注ぎましょう。貴方だけの魔力じゃ足りない」
「直接、って」

 俺に腕を掴まれたまま、ヴァルネラの指が入り口を撫で上げてきて腰が引ける。
 これからの行為なんて予想できるが、未知の出来事を前に怖気が止まらない。

「性行為にはなりますけど、本質は魔力のやり取りですから。深く考えないで」
「やっ、ぁあ! やだ、お願いだからやめて! いやだぁあああ!」

 弱々しい抵抗は無視され、ヴァルネラは空いていた手で俺の片足を持ち上げる。
 平衡感覚を奪われた体は寝台に沈み、無防備な姿勢を強要されてしまった。

「やだって、ヴァルネラ、……んぁっ!」
「大丈夫ですよ。洗浄魔法を使った後は、花の蜜で指を濡らしましょうか」

 挿入された指先から洗浄魔法を使われて、冷たい刺激に涙が出る。
 同時に香った甘い匂いが鼻を突いて、頭がおかしくなりそうになった。

「あぅ、やだ、あっ」
「そんなに固くならないで。ほら、痛くありませんから」

 さすがに奥までは入れられず、入り口を出入りする指から痛みは感じられない。
 しかし異物感が酷過ぎて、駄々を捏ねる子供のような言葉しか出なかった。

「やだ、抜いて! 抜いてってば! あうっ!」
「やはり内側は感覚が鋭いんですかね。随分体、跳ねましたけど」

 ヴァルネラは俺の反応を刺激によるものだと考えているらしい。
 けれど実際は、実際は追い詰められた精神によるところが大きかった。
 体に残る魔力の圧迫感よりも、指の感触に意識が持っていかれてる。

「そこばっか触らないで! やだぁ! あっ、ぁあ!」
「ちゃんと慣らさないと、貴方が辛いばかりですよ」

 精神的には死にたいくらいに嫌なのに、恐怖であられもない声を上げてしまう。
 刺激の逃がし方を知らない背中はしなって、寝台から浮き上がるほど反り返った。
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