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最終章 最高の逆転劇
94話 いるから苦労してるんだよ!!
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「えへへ、でも、ヤグラ君に助けてもらったから、そんな悲しいことにはならなかったんです。ね? 分かるでしょう? あのとき死んでたものだと思ったら、今日まで生きてただけでも十分ですよ」
「だからって……」
「へへへ、動かないでいてくれますよね? だってもう、どうしようもないんですから」
松明は背後、二十メートルのところまで近づいてきた。耳をすませば、男たちの話し声が聞こえる程度の距離だ。
彼女が絶望しているのは、仮にここで逃げ切ったとしても俺が泥棒癖を治さない限り、こんなことが何度も続くことだ。しかし、続かない。本当は続かないんだ。だって、俺は梅干し泥棒なんてしていないから。
俺は彼女にあれを見られたのが決まり悪くて、あんなうそをついただけなんだ。俺は村人に追われるようなことはやってないし、真犯人が誰かも知っている。
それが言えたなら、何もこんなことにはならなかったのだ。
「なあ、ミーノ」
「なんです、ヤグラ君」
「本当のことを言うから、驚かないでいてくれるとうれしいんだけどな」
俺はそう言うと、口元の布切れを外し、彼女に例のあれを見せた。
「うそ……ヤグラ君……それ……」
「そうなんだよ。こんなことになったのは全部これの――」
ミーノは目尻をせいいっぱい吊り上げ、俺の言葉を遮った。
「呆れた人!! この状況でよく梅干し食べれますね!!」
「違う! それがそもそもの勘違いなんだ!!」
俺は全力で否定した。
「どこが勘違いなんですか。そんなに美味しそうに口をすぼませて!! 見てるこっちまでヨダレが出てくるくらいですよ」
「こんなもん見てヨダレだすな!!」
「説明しましたよね? この村で梅干しがどれほどきちょ――」
「だから、違うって言ってるだろ!! これはお尻の穴なんだ!!」
俺は説教モードに入りつつある、ミーノの肩を掴んで揺すった。
「はあ?」
「俺さ、生まれつき身体が変で、消化管が上下逆についてるんだよ」
「なんですか、消化管って」
ミーノは怪訝そうに眉を寄せる。
「口からお尻までの一連の消化器官のことだよ。普通の人は口が顔の真ん中についてて、口から食べたものが、食道、胃に運ばれて、小腸、大腸、肛門を通過して、うんちとして排泄される。それくらいは分かるよな?」
「ええまあ、ご飯を食べたらうんちが出るのは常識ですから……」
「それが上下逆についてるの。俺の場合は、お尻の割れ目に口がついてて、下から上に流れるように、口にお尻がついてるんだよ」
「そんなバケモノがいるものですか」
「いるから苦労してるんだよ!!」
「大体、ミーノだって初めてこれを見たとき、びっくりしただろ?」
「ええ、一瞬、イソギンチャクが顔の真ん中にへばりついてるものかとおもいましたけど、梅干を食べた後だと言われて納得しました」
「どれだけ梅干しがすっぱくても、こんな器用にすぼませられないだろ!」
「それはまあ、そうかもしれませんが……」
「そもそも、酒場の出会いからして、俺はおかしかっただろ? 尻から酒を飲んでたんだぜ」
「それはまあ変なことをするなとは思いましたけど」
「違う、違う。あれは普通に口からお酒を飲んでただけなんだ」
「だからって……」
「へへへ、動かないでいてくれますよね? だってもう、どうしようもないんですから」
松明は背後、二十メートルのところまで近づいてきた。耳をすませば、男たちの話し声が聞こえる程度の距離だ。
彼女が絶望しているのは、仮にここで逃げ切ったとしても俺が泥棒癖を治さない限り、こんなことが何度も続くことだ。しかし、続かない。本当は続かないんだ。だって、俺は梅干し泥棒なんてしていないから。
俺は彼女にあれを見られたのが決まり悪くて、あんなうそをついただけなんだ。俺は村人に追われるようなことはやってないし、真犯人が誰かも知っている。
それが言えたなら、何もこんなことにはならなかったのだ。
「なあ、ミーノ」
「なんです、ヤグラ君」
「本当のことを言うから、驚かないでいてくれるとうれしいんだけどな」
俺はそう言うと、口元の布切れを外し、彼女に例のあれを見せた。
「うそ……ヤグラ君……それ……」
「そうなんだよ。こんなことになったのは全部これの――」
ミーノは目尻をせいいっぱい吊り上げ、俺の言葉を遮った。
「呆れた人!! この状況でよく梅干し食べれますね!!」
「違う! それがそもそもの勘違いなんだ!!」
俺は全力で否定した。
「どこが勘違いなんですか。そんなに美味しそうに口をすぼませて!! 見てるこっちまでヨダレが出てくるくらいですよ」
「こんなもん見てヨダレだすな!!」
「説明しましたよね? この村で梅干しがどれほどきちょ――」
「だから、違うって言ってるだろ!! これはお尻の穴なんだ!!」
俺は説教モードに入りつつある、ミーノの肩を掴んで揺すった。
「はあ?」
「俺さ、生まれつき身体が変で、消化管が上下逆についてるんだよ」
「なんですか、消化管って」
ミーノは怪訝そうに眉を寄せる。
「口からお尻までの一連の消化器官のことだよ。普通の人は口が顔の真ん中についてて、口から食べたものが、食道、胃に運ばれて、小腸、大腸、肛門を通過して、うんちとして排泄される。それくらいは分かるよな?」
「ええまあ、ご飯を食べたらうんちが出るのは常識ですから……」
「それが上下逆についてるの。俺の場合は、お尻の割れ目に口がついてて、下から上に流れるように、口にお尻がついてるんだよ」
「そんなバケモノがいるものですか」
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「大体、ミーノだって初めてこれを見たとき、びっくりしただろ?」
「ええ、一瞬、イソギンチャクが顔の真ん中にへばりついてるものかとおもいましたけど、梅干を食べた後だと言われて納得しました」
「どれだけ梅干しがすっぱくても、こんな器用にすぼませられないだろ!」
「それはまあ、そうかもしれませんが……」
「そもそも、酒場の出会いからして、俺はおかしかっただろ? 尻から酒を飲んでたんだぜ」
「それはまあ変なことをするなとは思いましたけど」
「違う、違う。あれは普通に口からお酒を飲んでただけなんだ」
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