逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

文字の大きさ
上 下
92 / 97
最終章 最高の逆転劇

92話 ミーノの声は絶望していた

しおりを挟む
「どうしたんだ?」
「道がない……」
「道がない?」
 思わず彼女の言葉を繰り返した。

「触ってください。ほら。右手の山肌が道を塞ぐように前に崩れ落ちています」

 彼女の手に誘導され、俺は山肌に手を這わせた。確かに、先ほどまで、緩やかにカーブしていた山肌が突然、なくなり、それと同時に足元に段差ができている。段差を足で探ってみると、崩れた土砂が完璧に山道を塞いでいる。

「あのときの大雨だ……」
 ミーノは言った。

「え?」
「ほら、ミタカさんを見つけろっていう緊急クエストがあったとき、物凄い大雨が降った日があったでしょう?」
「ああ」
「少しくらいの雨じゃ、土砂崩れなんて起きません。だから、きっとあの日に崩れたんだ」
「それで、どうするんだ? 崩れた土砂の上を歩いていくか?」
「それは危険すぎます。この先の地形が分からないんですよ? 崩れた土砂に滑って道を踏み外す危険もありますし、そんな単純に土砂をまたいで、従来の道に合流できる保証もありません。今までだって、私が地形を覚えていたから、歩けてきたんです」
「じゃあ、どうする?」
「そっか。村のみんなはこっちの道が土砂崩れがあることを知ってたんだ」
 ミーノは俺の言葉を無視して言った。
「なに?」
「さっきほとんどの人が、わたしたちが来た道に入ってきたことですよ。右の道を選んだのは、二人か三人で、残りが全員左の道を選んだ理由です」
「どういうことだ?」

「土砂崩れがあったことを知っていたなら、私たちがこれ以上先へ進めないことも分かっていたでしょう。村のみんなだって、これより先へは追跡はしないはずです。だから、こっちの道がここで途絶えてて、私たちがいないことを確かめたあとは、どっちにしても右の道へ戻らなくてはいけないんです。それなら、ここで追い詰めた私たちを掴まえるときのことを考えて、大勢をこっちに向かわせた方が良い」

 ミーノの声は絶望していた。

「もう駄目だ……」
 顔を覆ったのか、彼女の声が突然くぐもった。


「駄目だなんて……」
「駄目じゃないですか!! もうどこにも逃げられない。あと、十分もすれば村のみんながやってくる。この状態でどう逃げればいいんです?」
「一か八か、土砂をまたいで先に進もう。そんなに遠くまで行かなくても、土砂をまたいだ先で隠れて行けば、村人が引き返すかもしれない」
「どっちにしても同じことですよ!!」

 ミーノが叫んだ。その声は獣の咆哮のような怒鳴り声だったのに、一晩中泣き続けたときのようにかすれていた。

「同じじゃないですか!! ここで追手をかわしたところで何になるって言うんです?」

 俺はそのとき彼女が本気で怒ったところを初めて見た。
 今まではたとえ、俺が泥棒を繰り返したとしても、俺を諭すような穏やかな口調だった。怒りや失望はあっただろうが、こんな風に感情をむき出しにすることはなかった。

 思えばミーノはほとんど感情を出さないのだ。よほど追い詰められない限りいつもにこにこ笑っているし、酷い事態に陥ったとしても気丈に振る舞う。弟や妹が多いからだろう。彼女は長女として振る舞うことになれていた。
そんなミーノがどうしようもないくらい怒っていたのだ。

「だってそうでしょう? ここで村のみんなを巻いたところで、ヤグラ君がまた泥棒をしたら同じじゃないですか。ヤグラ君が盗みを働くたびに、真っ暗闇の中逃げて、隠れて、引っ越しをするんですか? やっていけるわけないじゃありませんか!」

「いや、それは……その……」
「少なくとも私にはやっていける自信がありません」
「じゃあ、ミーノは俺を置いて村のみんなの元に戻ってくれよ」
「嫌です!! ヤグラ君がボコボコにされて、二年前のあの人みたいになぶり殺しにされるのは見たくありません」
「それはそうかもしれないけど……」

「私が治してあげますよ」
 ミーノは冷たい声で言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する

藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。 彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。 そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。 フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。 だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。 柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。 三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...