逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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最終章 最高の逆転劇

83話 梅干し泥棒との接触

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「先月の配置換えで少々、政に関わるようになったのでな、その手の情報は嫌でも耳に入ってくる。どうやら、その建物は闇商人の持ち物で、盗品の買取を行っているようだ。盗品は足のつく恐れがあるからな、その辺の市場で売るわけにもいかん。買う方だってまともな商人なら、怪しげな品は断るもんだ。そこでこういった盗品や曰くありの品を専門に扱う輩が存在するわけだ」

「なるほど」

「じゃあ、さっきの男が梅干し泥棒で決まりなのね?」
「その可能性は高いだろうな。出てきたところを取り押さえて聞いてみると良い」
「本当に出てくるんでしょうね? あの男が入ってから十五分は経ってるわよ?」

 ミタカさんが疑わしそうにドアを見ると、コフネさんが落ち着いた調子で言った。

「ああ、こういう店は大概、入り口と出口が別になってるもんだ。入るときは周囲を確認して、誰も見てないところを入ればいいが、出るときは外の様子が分からん。出てくるところをひとに見られてはたまらんからな。だから、既に裏口から外に出てるかもしれん」
「それならさっさと教えてくださいよ!!」
 俺はコフネさんに叫んだ。
「いや、聞かれもしないのに言うのは学を衒うようで遠慮していたんだ」
「遠慮するところはそこじゃありませんよ!! じゃあ、俺はこの建物の裏に回って、出るところがないか調べてみます。二人はこの扉を見張っててください」

 俺は建物の外観に目をやった。この場所以外から外に出られるとしたらどこだろうか。建物の裏には古びたレンガ造りのアパートがたっており、それが市場の表通りに面している。
 俺はそのアパートの特徴を覚えると表通りに出てみた。
 市場と横道の交差したところに、アパートの階段がある。俺はそこまで走っていくと、階段をのぼって、二階の廊下を覗いた。
アパートの構造を確認する。商館とアパートが直接つながっていることはないようだ。

 アパートの廊下を歩きながら、裏手の商館との隙間を覗き込む。

 あった。商館とアパートの間に、人が一人通れるほどの隙間があり、そこに勝手口として使うにはいかにも不便な扉が見える。その扉から横道に出ることはできそうだが、建物の隙間にゴミや紙くずがたまって通れそうにない。
俺はその扉からどこに出られるか考えた。

「あそこか」

 アパートの一階。商館の裏口からはす向かいのところに、裏庭が広がっている。そこはアパートの一部を吹き抜けにしたようなところで、ちょうど、入り口すぐ。住人たちがエントランスを入る際、庭木の一部を拝めるような構造になっている。

 商館からアパートの裏庭に入り、そこから一階の部屋にあがれば、部屋の扉からさも住人を装って出ることができる。
俺は一階に降りると、その部屋の前に来てみた。

 角部屋のためか、そこは他の部屋より豪華なようで、扉の間隔からでも、かなり広いことが分かる。

 隣の商館と裏庭を隔てるのはわずか一メートルほどの柵だけだ。乗り越えようと思えば、乗り越えることができる。もし闇商人がこの部屋を借りていたなら、何かあった際に客を逃がすための便利な避難経路となってくれるだろう。
俺は扉に耳をつけて、中の様子を確認してみた。ゴソゴソと物音がしているかと思うと、コツコツと足音が近づいてくる。
「誰かが出てくる……」
 俺は廊下を離れ、階段の陰に隠れて、部屋の様子を伺った。
 俺が隠れたと同時に扉が開き、中から誰かが出てくる。その男はそのまま廊下をぐるりと回って、アパートの正面口から出て行こうとする。
 後ろ姿でもはっきり分かった。あの男だ。
 俺は男の後を追うと、市場を抜けて住宅街に差し掛かったところで、彼の肩を叩いた。

「すみません、ちょっといいですか?」

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