80 / 97
最終章 最高の逆転劇
80話 俺は泥棒を追うことにした。
しおりを挟む
最後のは本心から出た言葉だった。実際、困り果てていて、これからどうしていいか分からない。
俺としては顔面にケツの穴がついているのを隠し通すために、梅干し泥棒を名乗るのは仕方ない。仕方ないが、こっちが更生しようとしている横から、本物の梅干し泥棒に仕事をされたんでは、俺の信頼はがた落ちだ。
仏の顔も三度までという諺があるが、もうすでに俺は三回梅干しを盗んだことになっている。三回目もミーノを裏切っているのに、ミーノは今でも俺を見放さないでいてくれる。しかし、次はどうか分からない。
俺はなんとしても梅干し泥棒を見つけて、彼に仕事をやめさせなければならない。そうしなければ俺がどれだけ反省の色を見せても、解決しないのだ。
梅干し泥棒として、一番怪しいのは先日見かけたあの男だろう。梅干しの種を吐き捨てて去っていったわけだから、犯人に違いない。
しかし、どうやって見つけるべきか。
最初の事件のときも犯人は王都の方に向かっていった。恐らく、王都の商人に梅干しを売るためだろう。
とすると、今回も王都に向かっていることになる。今も街道を歩いているところかもしれない。俺は今から追えば間に合うかもしれないと思い始めた。
犯人は夜中にグレナさんの家から梅干しを盗ったのだろうが、真っ暗な夜道を歩いて王都まで引き返したとは思えない。王都は夜になると城門を閉めることになっている。夜に王都に入るには、それ相応の理由と、特権的な地位、それに見張りの者の許可がいる。
そんな目立つことはしないだろうから、朝、王都の門が開き、市民が出入りを始めた頃に王都に入るつもりだろう。だとするなら、わざわざ目立つ夜に明かりを提げて、夜道を歩くより、朝まで村のどこかに隠れておいて、通行人が出始めた頃、王都に向かった方がいい。
俺の予想が正しければ、犯人はまだ王都に入っていないはずだ。
「悪い、ミーノ。俺、どうしても自分の病気を治したいからさ、今から王都に行って医者やコフネさんに相談してくるよ」
俺はミーノ返事も聞かずに立ち上がった。
「ちょっと、ヤグラ君、それなら私も行きます」
「いや、良いんだ。今日はもう泥棒をしたから、さすがに一日に二度も泥棒っ気をおこさないとおもうんだ。仮に、そんな気がしても、今度は絶対我慢する。だから、ミーノはこの村にいて、ムゥくんのお弁当を作ってやってくれ」
「ちょっと待ってください。私もお弁当さえ作ったらいっしょに行けますから」
「本当に一人で大丈夫だから」
俺はあわてて支度を始めたミーノの背中に声をかけると、そのまま家を飛び出した。
俺は泥棒を追うことにした。
俺としては顔面にケツの穴がついているのを隠し通すために、梅干し泥棒を名乗るのは仕方ない。仕方ないが、こっちが更生しようとしている横から、本物の梅干し泥棒に仕事をされたんでは、俺の信頼はがた落ちだ。
仏の顔も三度までという諺があるが、もうすでに俺は三回梅干しを盗んだことになっている。三回目もミーノを裏切っているのに、ミーノは今でも俺を見放さないでいてくれる。しかし、次はどうか分からない。
俺はなんとしても梅干し泥棒を見つけて、彼に仕事をやめさせなければならない。そうしなければ俺がどれだけ反省の色を見せても、解決しないのだ。
梅干し泥棒として、一番怪しいのは先日見かけたあの男だろう。梅干しの種を吐き捨てて去っていったわけだから、犯人に違いない。
しかし、どうやって見つけるべきか。
最初の事件のときも犯人は王都の方に向かっていった。恐らく、王都の商人に梅干しを売るためだろう。
とすると、今回も王都に向かっていることになる。今も街道を歩いているところかもしれない。俺は今から追えば間に合うかもしれないと思い始めた。
犯人は夜中にグレナさんの家から梅干しを盗ったのだろうが、真っ暗な夜道を歩いて王都まで引き返したとは思えない。王都は夜になると城門を閉めることになっている。夜に王都に入るには、それ相応の理由と、特権的な地位、それに見張りの者の許可がいる。
そんな目立つことはしないだろうから、朝、王都の門が開き、市民が出入りを始めた頃に王都に入るつもりだろう。だとするなら、わざわざ目立つ夜に明かりを提げて、夜道を歩くより、朝まで村のどこかに隠れておいて、通行人が出始めた頃、王都に向かった方がいい。
俺の予想が正しければ、犯人はまだ王都に入っていないはずだ。
「悪い、ミーノ。俺、どうしても自分の病気を治したいからさ、今から王都に行って医者やコフネさんに相談してくるよ」
俺はミーノ返事も聞かずに立ち上がった。
「ちょっと、ヤグラ君、それなら私も行きます」
「いや、良いんだ。今日はもう泥棒をしたから、さすがに一日に二度も泥棒っ気をおこさないとおもうんだ。仮に、そんな気がしても、今度は絶対我慢する。だから、ミーノはこの村にいて、ムゥくんのお弁当を作ってやってくれ」
「ちょっと待ってください。私もお弁当さえ作ったらいっしょに行けますから」
「本当に一人で大丈夫だから」
俺はあわてて支度を始めたミーノの背中に声をかけると、そのまま家を飛び出した。
俺は泥棒を追うことにした。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで220万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する
藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。
彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。
そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。
フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。
だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。
柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。
三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる