逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

55話 何かが繋がりそうだ!!

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「平気ですよ。ちゃんと手を洗えばいいんですから。ほら」
 言われるままに俺は牛糞に触れてみた。

「あっち!! あっち!!」

 牛糞は素手では触れられないほど高温になっていた。
「へへへ」
 ミーノは熱がる俺を見て、悪戯が成功した子どものように笑った。
「これだけ暑いと暖房に使えそうだな」
「ええ、東方の騎馬民族はヒツジのウンチをカーペットの下に敷くそうですよ。そうすると暖かくて、快適だそうです」
「うげ……羊のウンチか」

 思わず顔をしかめた俺を見て、ミーノが苦笑した。
「直接その上に座るわけじゃないんですから。そう嫌がることないですよ」
 俺たちはそんな話をしながら、牛小屋の掃除を終え、牛を小屋に戻し、エサをやった。その頃になると、日も高くなっていた。
「お腹すきましたね。少し早いですけどお昼にしましょうか」
 ミーノはあぜ道を歩きながら言った。田んぼの稲は日の光を浴びて、気持ちよさそうに穂を揺らしていた。それを見ながら歩いているだけで気分が良かった。
「マジか!! 朝が早かったから、腹ペコだったんだ」

「ミーノもです。今日は特別にうどんに卵を落としましょうか!!」

「それ良いなあ!!」
家に帰ると、ミーノは水を張った鍋を火にかけ、そこに塩をたっぷりと入れた。
 俺はその光景に既視感を覚えた。
「あれ? どっかで見たような……」


「何がですか?」
「うどんだよ。うどんを作るのに塩を入れるの、珍しいなと思ったんだけど、俺はそれを知ってたような気がしたんだ」

「へー、不思議ですね。初めて見たんですよね?」
「ああ、初めて見たと思うんだけど、前にも見たような気がする」
「そういうことってありますよね」
 ミーノは鍋に干したうどんを投入した。
 やはり、その光景をどこかで見たことがあった。
 どこか……。どこか……。
「そうだ!! シリンキ寺だ」
「え?」
「ミタカさんを探すためにシリンキ寺の墓地をたずねたじゃないか。そのときに和尚さんが夜食を作ってくれて、三人でうどんを食べたじゃないか!!」
「ああ、そういうこともありましたね」

 そのとき確か、王都では塩を入れないと言った話を聞いた。このあたりは気圧が低くて、沸点が低い。そのため塩を入れて、沸点をあげるのだ。気圧が低いと沸点が下がる。塩を入れると沸点が上がる。
「ミタカさん……残念でしたね」
 シリンキ寺の話題から、ミタカさんのことを思い出したのだろう。
 俺は今日の熱湯裁判を牢屋で待つミタカさんの姿を思い浮かべた。なんとかして助けてやれないだろうか。
 目の前の鍋はぐつぐつと煮え、うどんがその中を踊っている。

 何かが、何かが繋がりそうだ! 俺の頭の中で今、閃きの火花が燃えている。
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