逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

文字の大きさ
上 下
44 / 97
三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

44話 クジ引き国王と謁見する

しおりを挟む
「あれ、涼子はもう帰ったの?」

「橅木! 今さっき帰っちゃったよ」

 同期の橅木圭佑。
常にニコニコしていて取引先の相手に気に入られやすい。
 見た目も暗いブラウンの短髪に切長の奥二重で見るからに体育会系と思える風貌だ。身長も高く手足も長くてスタイルはモデル並み。その見た目のおかげなのか(失礼か……)体育会系のノリのおかげなのか彼にとって営業も行うマーケティング部は天職なんじゃないかと入社当初から思っている。
 チームは別なので今は仕事中に濃い絡みはないが涼香と橅木だけが同期なので昔はよく三人で仕事終わりに飲みに行ったりしていた。
 今は涼子も家庭があるし、ここ数年行っていないが。

「んじゃ、真紀の隣に座るかな~」

「どうぞ」

 さっきまで涼子が座っていた席に橅木が座り久しぶりお互いのグラスをカチンと合わせ小さく乾杯をした。

「真紀とこうやって飲むの久しぶりだよな」

「だね、もう歓迎会とか送迎会とかないと飲む機会ないもんね~」

「涼子も子供がいて大変だしな、俺と真紀だけ独り身じゃん」

「それはもう言わない方がいい……考えてはいけない」

 はははと笑い合う。
橅木とは気を遣わずに話せるので楽で良い。
 他の部署の女の人からも「爽やかイケメン~」とか言われモテているのに彼女がいないのが謎だ。
 お互い飲んできたビールが空になった。
そろそろセーブしないと酔いそうなので白ワインをジンジャエールで割ったオペレーターを注文し、橅木はレモンサワーを頼んだ。

「どうよ、新人教育は大変か?」

「それが全く手が掛からなくてすぐに仕事覚えてくれるからかなりの即戦力になってくれてる」

「チャラそうに見えるけどそれがギャップなのか……こりゃ先が楽しみだな」

「そのうち橅木も抜かされちゃうかもよ」

「そんな事あり得ないですよ」

 聞き覚えのある声が橅木とは反対の方から聞こえる。
 いつの間にか隣に松田が座っていた。
 ずっと松田は木島部長の隣にいると思っていたので、不意を突かれすぎて驚きと動揺を隠せなかった。

「お~松田! 一緒に飲もうぜ!」

「是非、今日は本当にありがとうございます」

 近くにいる人達でもう一度乾杯をした。
カチャンとガラスの当たる音が鳴り響く。

「さっき真紀と話してたんだけど、松田仕事覚えるの早いらしいじゃん」

「いや、そんな事ないですよ、水野さんの教え方が上手なだけです」

 ……なんて猫被りな話し方をするんだろう。
世渡り上手とはこの事だ。
 私を挟んで松田と橅木が話すものだからなんとも言えない両脇からの圧迫感に必死で耐えた。
 少しでも姿勢を崩したら松田に肩がくっつきそうだ。
 橅木は元からスキンシップが多い為肩を叩かれようが、腰を叩かれようが、なんなら頭を撫でられた事も何回もある。
しかしそれは年の離れた妹がいるらしくつい癖でやってしまうと昔本人が言っていた。
なので私も全く気にしなくなった。
 今も私の肩に手をかけ松田に話しかけている。
けど良い加減重くなってきたのでそろそろ退かして欲しい。

「橅木、そろそろ肩が重いんだけど」

「あ、悪い悪い、つい真紀の肩の高さが丁度いいもんだから」

「肘置きにするな!」

「そんなに水野さんの肩がちょうど良いなら俺も乗せさせてもらおうかな」

 冗談なのか本気なのか分からない表情で松田が言うものだから少しドキッとしてしまった。
 橅木にはないこの緊張感はきっとキスされて、意識してしまっているからに違いない。
 伸ばしてきた松田の手をビシッと手で払い「有料です」と言い放った。
周りにはこのやり取りがコントのようで面白かったらしく周りからドワっと笑いが起こった。
 皆んなお酒がかなり進み酔っている人もチラホラ出てきていて、更に歓迎会は盛り上がりを見せた。

「水野さん、橅木さんかなり酔ってませんか?」

「ん? あー橅木はいつもあんな感じだから大丈夫よ」

「そうなんですね……」

 本当に橅木が酔ったところを今まで見た事がない。いつも周りに気を使ってくれている。
 橅木よりも自分の方が怪しい。少し寒気がしてきていた。
お酒を飲むと暑くなるどころかどんどん寒くなるタイプなので手足が冷えてくる。
 手を温めようと自分の太腿の間に手を挟んで温めているとスルッと自分の太腿の間の手をすっぽり包んでしまう程の大きい手が私の冷たい指に絡んできた。
 驚いて隣を見ると松田はなにもしていません、と平然な顔をしながら私の指に自分の指を絡めてくる。
 周りに人がいる為やめて! とは声に出して言いづらい。
どうかバレませんように……
 そう祈るだけで私は松田の指を拒否しなかった。
暖かくて触れているだけなのになぜか気持ちが良かった。

「真紀、顔が赤いけど珍しく酔ってる?」

「え? そう? いつもと変わらないと思うけど……」

「ふーん、じゃあ気のせいか、真紀の酔ったところって一回も見た事ないんだよなぁ」

 私は人前で酔うのが苦手だ。
 なんとなく自分の酔ってる姿を見られるのも恥ずかしいし、どうも昔からクラス会の幹事を任されたり、会社の飲み会の幹事もするので、酔った人を介抱する事が多い。
 けどそれは外で気を張っているだけで、家に帰って気が抜ければ一瞬で酔いが回り一人で酔っ払いそのまま寝てしまう事も多々ある。
 自分を人に曝け出すのが苦手だ。
特に弱い部分を見せるなんてもっての外。
なので私は外では酔ったところを人に見せない。

「……松田君、そろそろ部長の所に戻った方がいいんじゃない?」

 早く戻ってこの手を離して欲しい。
もし誰かが見たりしたら大騒ぎになるだろう。
 二人の体温が重なり合い手と手の間が少し汗ばんできた。

「まずいですかね~じゃあ戻ります、失礼しました」

「お~松田また飲もうなー!」

「はい」

 やっと松田が席を立ち木島部長の元へ戻る。
 離された手は少し汗ばんでいたせいかスースーする。
とにかくバレなくて良かったとホッと胸を撫で下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する

藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。 彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。 そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。 フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。 だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。 柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。 三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...