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二章 秘宝「ジェタクの果印」
30話 ジェタクの逸話と語り継がれるということについて
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それから一週間、俺とミーノは朝早くから起きて、ジェタクの果印を探した。ジェタクの住んでいた場所を特定しようとしたり、シリンキ山をあてもなくさまよったりした。
ジェタクがタチションをしたというシリンキ寺にも訪れてみた。
「わが寺は「占聖」と呼ばれたジェタク師が立ち小便をした場所に立っています。ジェタク師が立ち小便したのは、ちょうどこのあたりで、その頃から、ここの土は一度も渇くことがなかったと、伝わっております」
確かに、坊主の指さしたところだけ、砂が黒く変色している。ジェタクが小便をして以来、五百年間一度も乾かない土……。はた迷惑な神通力だ。
「本当に乾かないんですか? 毎日、水をかけてるとか」
「いえいえ、そんなことはしておりません。ここに住んでいる私たちでさえ、驚いているくらいなのです。ささ、記念に触ってみて下さい」
「は? なにを?」
俺は坊主の言わんとしていることが分からなかった。
「だから、ジェタク師の小便あとですよ。見ればわかるでしょう? 色が濃くなってるじゃないですか」
「いや、色が濃くなってるのは分かるんですけど、これを触れって言うんですか」
「記念ですよ」
「どんな記念だよ!! ってか、触らなくていいっ!!」
俺は真剣な表情で手を伸ばすミーノの腕をつかんだ。
「いや、幸運の銅像とか、松の木なら、触ってもいいんですけど、これ、五百年モノの小便ですよね?」
「ハッハッハ、ヤグラ様は面白い。五百年モノだなんて。まるでブドウ酒のようですな」
坊主は能天気に笑っていた。
それにしてもどうして小便にまつわる逸話なんかが残っているのか。
俺は不思議に思った。
逸話というものはたいてい、「後世の人間の納得」によって生まれる。「ああ、あの人なら敵に塩を送りそうだ」とか「あの人なら千人切りをしても不思議ではない」と後世の人間が納得するから逸話が残るのだ。
逆に、どれほど千人切りを成し遂げたところで、誰も納得せず、嘘だと思われたら歴史には残らない。
濡れたまま一度も乾かない土。それで、坊主たちはジェタクの小便というシナリオを考えたのだろう。それにしたって「ああ、ジェタクさんの小便なら土が乾かなくなっても不思議じゃない」と後世の人が納得したのだ。
納得……するか?
ジェタクがタチションをしたというシリンキ寺にも訪れてみた。
「わが寺は「占聖」と呼ばれたジェタク師が立ち小便をした場所に立っています。ジェタク師が立ち小便したのは、ちょうどこのあたりで、その頃から、ここの土は一度も渇くことがなかったと、伝わっております」
確かに、坊主の指さしたところだけ、砂が黒く変色している。ジェタクが小便をして以来、五百年間一度も乾かない土……。はた迷惑な神通力だ。
「本当に乾かないんですか? 毎日、水をかけてるとか」
「いえいえ、そんなことはしておりません。ここに住んでいる私たちでさえ、驚いているくらいなのです。ささ、記念に触ってみて下さい」
「は? なにを?」
俺は坊主の言わんとしていることが分からなかった。
「だから、ジェタク師の小便あとですよ。見ればわかるでしょう? 色が濃くなってるじゃないですか」
「いや、色が濃くなってるのは分かるんですけど、これを触れって言うんですか」
「記念ですよ」
「どんな記念だよ!! ってか、触らなくていいっ!!」
俺は真剣な表情で手を伸ばすミーノの腕をつかんだ。
「いや、幸運の銅像とか、松の木なら、触ってもいいんですけど、これ、五百年モノの小便ですよね?」
「ハッハッハ、ヤグラ様は面白い。五百年モノだなんて。まるでブドウ酒のようですな」
坊主は能天気に笑っていた。
それにしてもどうして小便にまつわる逸話なんかが残っているのか。
俺は不思議に思った。
逸話というものはたいてい、「後世の人間の納得」によって生まれる。「ああ、あの人なら敵に塩を送りそうだ」とか「あの人なら千人切りをしても不思議ではない」と後世の人間が納得するから逸話が残るのだ。
逆に、どれほど千人切りを成し遂げたところで、誰も納得せず、嘘だと思われたら歴史には残らない。
濡れたまま一度も乾かない土。それで、坊主たちはジェタクの小便というシナリオを考えたのだろう。それにしたって「ああ、ジェタクさんの小便なら土が乾かなくなっても不思議じゃない」と後世の人が納得したのだ。
納得……するか?
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