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一章 地獄の酒場
15話 勝ちレースの始まりだ
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「それなら、俺に賭けるやつはいねえか!!!」
ヴァーギンが叫んだ。
一座のほとんどが手をあげる。
「三分の二くらいか……。じゃあ、こんどはこのヤグラ君に賭けるやつはいねえか?」
三分の一くらいの人間が、俺に手をあげる。なんでケツから酒を飲むとなると、オッズが正常に戻るんだ……。俺は首をかしげたくなる。
「それじゃあ一人、二十リラを――」
ヴァーギンの言葉を俺は遮った。
「いや、百倍にしよう!! 一人二千リラだ!!」
俺は言った。
「なんだって? 一人二千リラ?」
一座がざわつき始めた。二千リラの相場がどの程度なのかは分からない。だが、彼らの顔色を見る限り、かなりの高額になるのだろう。それならそれでいい。
「それで俺は自分で自分に賭ける!!」
俺は叫んだ。出るときは、とことん強く出る。勝ち目があると分かれば、どこまでもその目に張るしかない。こんなところで、二十リラ勝っただ、負けただのと言っても仕方がない。
「自分で自分に賭けるってお前金持ってねえんじゃないのかよ!!」
ヴァーギンが俺を睨みつけた。
「借金をするぜ!!」
俺は冒険者ギルドの受付で二千リラ借りると、ボンっとテーブルの上に叩き置いた。
「二千リラだってよ……」
「構うことねえよ!! どうせヴァーギンが勝つんだ!!」
「じゃあ、俺もヴァーギンに変えよう」「やっぱりヴァーギンに変えるぜ!!」
こいつら、意外と冷静だな……。掛け金が二千リラになったところで、オッズが急激にヴァーギンに傾く。二十人中、十六人がヴァーギンに、残りの四人が俺につく。
俺はゆっくりと息を吸い、四つん這いになった。テーブルの上には、取り巻きが賭けた金が山をなしている。
隣でヴァーギンも四つん這いになり、ズボンを下ろす。
「うおおおおおおおおおおおお!! こんな飲み比べ見たことねえぜ!!」
場は物凄い盛り上がりを見せた。掛け金があがったことによって、男たちの顔に悲壮感が漂っている。万が一にでも賭けに負ければ、二千リラを即座に失うことになる。
「おい!! フースコ」
ヴァーギンは後ろの方でぼんやりと見物していた気の弱そうな青年に声をかけた。
「な、なんですか……?」
「お前が俺のケツに酒を流し込むんだ!!」
「え? 僕ですか……」
フースコは露骨に顔をしかめている。
「さっさと準備しやがれ!!」
フースコは慌てて厨房に走り、蒸留酒を口の尖った水筒のような入れ物に移し替えた。そして、それを持って、ヴァーギンの後ろに立つ。ヴァーギンは四つん這いになって生尻を突き出したまま、勝負が始まるのを待っている。
「おい、誰かヤグラ君のケツに酒を入れたいやつはいるか!!」
ヴァーギンがそう叫ぶ。
だが、一座の反応は思わしくなかった。
「え、流石にそれはやだな……」
「俺、別にこいつのこと知らないしな……」
「いや、ちょっとそれは……」
取り巻きが突然冷静になりはじめたのだ。
その辺の感性はまともかよ!!
俺は叫びそうになった。
考えてみれば当然のことだが、別にフースコだってやりたくてやってるわけじゃない。半分、強制的にやらされてるだけだ。
「やっぱり、こんな気持ち悪い事やめるか!!」
一人がそう言った。
「そうだな……、べつに良いか!! 普通のルールに戻そうぜ!!」
誰かがそう言ったのを機に流れが一気に変わった。
「おい!! いつまで四つん這いになってるんだよ!! さっさとズボンをあげろよ!!」
「誰もお前らのケツなんかみたくねえんだよ!!」
皆が口々にヤジを飛ばす。ヴァーギンはすでにズボンをあげようとしている。
ヤべえ……。ルールが元に戻ってしまう……。
形勢は振り出しに戻りつつあった。
ヴァーギンが叫んだ。
一座のほとんどが手をあげる。
「三分の二くらいか……。じゃあ、こんどはこのヤグラ君に賭けるやつはいねえか?」
三分の一くらいの人間が、俺に手をあげる。なんでケツから酒を飲むとなると、オッズが正常に戻るんだ……。俺は首をかしげたくなる。
「それじゃあ一人、二十リラを――」
ヴァーギンの言葉を俺は遮った。
「いや、百倍にしよう!! 一人二千リラだ!!」
俺は言った。
「なんだって? 一人二千リラ?」
一座がざわつき始めた。二千リラの相場がどの程度なのかは分からない。だが、彼らの顔色を見る限り、かなりの高額になるのだろう。それならそれでいい。
「それで俺は自分で自分に賭ける!!」
俺は叫んだ。出るときは、とことん強く出る。勝ち目があると分かれば、どこまでもその目に張るしかない。こんなところで、二十リラ勝っただ、負けただのと言っても仕方がない。
「自分で自分に賭けるってお前金持ってねえんじゃないのかよ!!」
ヴァーギンが俺を睨みつけた。
「借金をするぜ!!」
俺は冒険者ギルドの受付で二千リラ借りると、ボンっとテーブルの上に叩き置いた。
「二千リラだってよ……」
「構うことねえよ!! どうせヴァーギンが勝つんだ!!」
「じゃあ、俺もヴァーギンに変えよう」「やっぱりヴァーギンに変えるぜ!!」
こいつら、意外と冷静だな……。掛け金が二千リラになったところで、オッズが急激にヴァーギンに傾く。二十人中、十六人がヴァーギンに、残りの四人が俺につく。
俺はゆっくりと息を吸い、四つん這いになった。テーブルの上には、取り巻きが賭けた金が山をなしている。
隣でヴァーギンも四つん這いになり、ズボンを下ろす。
「うおおおおおおおおおおおお!! こんな飲み比べ見たことねえぜ!!」
場は物凄い盛り上がりを見せた。掛け金があがったことによって、男たちの顔に悲壮感が漂っている。万が一にでも賭けに負ければ、二千リラを即座に失うことになる。
「おい!! フースコ」
ヴァーギンは後ろの方でぼんやりと見物していた気の弱そうな青年に声をかけた。
「な、なんですか……?」
「お前が俺のケツに酒を流し込むんだ!!」
「え? 僕ですか……」
フースコは露骨に顔をしかめている。
「さっさと準備しやがれ!!」
フースコは慌てて厨房に走り、蒸留酒を口の尖った水筒のような入れ物に移し替えた。そして、それを持って、ヴァーギンの後ろに立つ。ヴァーギンは四つん這いになって生尻を突き出したまま、勝負が始まるのを待っている。
「おい、誰かヤグラ君のケツに酒を入れたいやつはいるか!!」
ヴァーギンがそう叫ぶ。
だが、一座の反応は思わしくなかった。
「え、流石にそれはやだな……」
「俺、別にこいつのこと知らないしな……」
「いや、ちょっとそれは……」
取り巻きが突然冷静になりはじめたのだ。
その辺の感性はまともかよ!!
俺は叫びそうになった。
考えてみれば当然のことだが、別にフースコだってやりたくてやってるわけじゃない。半分、強制的にやらされてるだけだ。
「やっぱり、こんな気持ち悪い事やめるか!!」
一人がそう言った。
「そうだな……、べつに良いか!! 普通のルールに戻そうぜ!!」
誰かがそう言ったのを機に流れが一気に変わった。
「おい!! いつまで四つん這いになってるんだよ!! さっさとズボンをあげろよ!!」
「誰もお前らのケツなんかみたくねえんだよ!!」
皆が口々にヤジを飛ばす。ヴァーギンはすでにズボンをあげようとしている。
ヤべえ……。ルールが元に戻ってしまう……。
形勢は振り出しに戻りつつあった。
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