逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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一章 地獄の酒場

八話 当たり屋が現れた!

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「あ、すみません」

 俺は咄嗟に振り返った。肩に強い衝撃が走ったのだが、俺の方にケガはなかった。
 後ろでは禿げ頭の巨漢が、尻もちをついている。
「イッテ……」
「大丈夫ですか?」
「イテエじゃねえかよ!」

 男は唇をゆがめて笑った。辛そうに頭をさする仕草がいかにもわざとらしい。
「すみません……」
「おい、ぼんやり突っ立って、もごもご喋ってよ。それが人に謝る態度なのか?」

 男は立ち上がって言った。
 身長は俺をはるかに超えている。一九〇センチか、二メートルはあるかもしれない。どうぶつかれば、あんなイカつい男が尻もちをつくのか。
「でも……、僕は掲示板を見てただけですし……ぶつかったのはあなたですよ」
「なんだと?」
 なるほど。まともな人間は新人を無視し、話しかけてくるのはこういう男か。俺はここがどのような場所か理解し始めていた。

「アレぇ? おいおい、これどうなってるんだ」
 男はわざとらしく手の中にあるものをひっくり返したり、日にすかしたりした。
「………………」
「おい、兄ちゃん、お前なまえなんて言うんだ」
「え、俺はヤグラですけど」
「ヤグラ君かあ。俺はヴァーギンって言うんだけどよ、ちょっとヤグラ君、これ見てくんねえかなあ」
 ヴァーギンが差し出した手を開いた。
 見ると懐中時計が握られているのだが、その針が止まっている。文字盤の数字が取れかけていて、六の数字がひっくり返り、九になっている。

「お前にぶつかったせいで、壊れちゃったんだよなあ。この時計。ほら、針が止まってるしよお。数字がひっくり返って、六が九になっちゃったじゃねえか」
 数字がひっくり返るくらいなんだっていうんだ。こっちは消化管がひっくり返って、口が肛門になったんだぞ。

「なあ、ヤグラ君……、なんとか言ってくれよ」

 この場合、なんて言えばいい? 相手は明らかに当たり屋だ!

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