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5章 運ばれゆく罪人

13、減り過ぎた生存者

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  ◇

 二つの死体を後方の寝台車に運ぶと、短い祈りを捧げ、シノは先ほどと同じように膝を引きずった兵士の持ち物を改めた。
 その後、残ったメンバーを囚人用車両に集め、シノはこれからのことについて話した。といってもやるべきことは変わらなかった。

「しかし、数が減りすぎたな……」

 シノはバディのローテーションに頭を悩ませた。
 デュアメル、ジョーチームと、シノ、ぐらぐら・ウィリーが交代で囚人用車両の番をするとして、周辺警戒に回せるのはレナとのっぽの兵士しかいなかった。

 当初、十六人、イーシャを出る段階で八人いた人員は今や六人にまで数を減らしていた。それもぐらぐら・ウィリーは討伐隊のメンバーですらなかった。

 先ほどのことを考えると、誰であっても一人で警戒に当たらせるわけにはいかない。
そうなると休息を取る人的余裕はない。

「俺にやらせてくれ!」
 ユーゴは檻の鉄格子を掴み、身を乗り出すようにシノを見た。
 シノが冷たい視線をユーゴに向ける。

「何を言い出すんだ」

「シノ、俺はこいつらみたいな悪人じゃないし、逃げる理由もない。辺境の町では扱いかねる事件に巻き込まれただけで、こんなふうに拘束されるいわれはないだろう。俺を檻から出して、周辺警戒を手伝わせてくれないか。そしたら、三人のうち二人で見張りに立って、後の一人が休息を取れる」

「話にならんな」

「頼む。俺だってトウセキに裁きを受けさせたいと思ってる。シノも分かるだろう? あの村に住んでいた人間ならみんな同じ気持ちだ」

「ユーゴ、立場をわきまえろ。しかるべき手続きを受けるまでは、俺はお前を囚人として扱う」

「シノ、あんたは責任を感じないのかよ。妹があんなことをしでかして、俺はあの村で吊るし首にされるところだったんだ」
 トウセキの手前、アンナのことを口にすることはできなかったが、シノはユーゴの言いたいことを正しく理解した。
「だから、あそこから連れ出して裁判を受けさせてやろうとしてるだろ。ベルナードの判事が判決を下してくれる」
「なんでそう融通がきかないんだよ。周りが見えてないのか?」
 ユーゴは鉄格子を激しく揺すった。
 納得いかなかった。
 トウセキが罰せられることを最も望んでいるのは、ユーゴとシノの二人だった。シノがそれを分かっていないはずはない。
 それならここは柔軟に対応してくれてもいいだろう。

 ユーゴだって銃の撃ち方は知っている。

 牧場ではときおり羊が野犬に襲われることがあり、そういったときには牧場主のコンラッドと一緒に野犬狩りに出掛けたものだった。ユーゴは馬上からでも正確に得物を撃ち抜くことができた。
 牧場の馬はみな扱いを心得ていたので、銃を構えて息を潜めながらでもうまく御することができた。
 戦力としては申し分ないはずだった。
 だが、シノはユーゴの反抗的な態度を許さなかった。

「黙れ、ユーゴ!! ここはあの村じゃない。家族ぐるみの近所づきあいをしてるんじゃないんだぞ?」

「そんなの分かってるさ」

「分かってるなら、大人しくしてろ。お前は檻の中にいることを忘れるな。一人だけ正義ぶってると、やられるぞ」

 ユーゴはそう言うと、ジョーとデュアメルに看守を任せ、後方車両に戻って行った。
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