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1話「迷宮メイカーの世界」
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【迷宮メイカー】
2000年代初頭、パソコンゲーム黎明期に流行ったシュミレーション系のファンタジーゲームだ。
ゲーム性としては最近流行りの物に比べれば、作り込みも甘く、ストーリーなどの密度もあまり良くは無い。
しかし、ドット風の2頭身キャラクターが侵入者である【勇者】と戦ったり、ダンジョンを建造したりする姿は非常に中毒性が高く、現在でも多くのファンが飽きずにプレイをしているゲームだ。
残念ながら製作会社の倒産により続編が製作されることはなく、現在は別会社に権利が移譲し、続編が世に流布している。
そして、俺、【野幹 殿】もまた、そんなゲームのファンの一人だった。
両親を早くに亡くし、孤児院に引き取られて暫く。
両親を失った悲しみから塞ぎ込んでいた俺は、孤児院の友人から紹介されたこのゲームにハマり、気づけばこのゲームに没頭するようになった。
残念なことにその友人はすぐに里親に引き取られて行ったため、付き合いが長かった訳では無いが、それでも俺の人生を救ってくれた恩人だと今でも感謝している。
おかげで深い悲しみから立ち上がることの出来た俺は、高校卒業後に「誰かの役に立ちたい」という想いから看護学校に進学。
バイトと奨学金で何とか生活しつつ、看護学生として様々な勉強をしている。
そんな俺の趣味は、言わずもがな迷宮メイカーをプレイすることだった。
「えーと、ここのエリアに壁配置…こっちに生産区画…よし、こんなもんかな。」
自分が作り上げたダンジョンは名前を付けてオンライン上にアップロードすることで、他のプレイヤーが【勇者】としてダンジョンを攻略することも出来る。
これにより、現在でも様々なダンジョンが毎日のように更新され続けているのだ。
「ふぁ~…」
急な眠気に目を擦る。
ふと、画面の端を見ると、随分長い間集中していたらしい。
今回のダンジョンは自分の中でも過去最高レベルのクオリティだと自負している。
ただ、それ相応に体力と集中力を消耗していたため、眠気が襲ってきたのだろう。
幸い明日は休日でバイトのシフトも無かったため、少し仮眠を取ろうかと机に上半身を預け、俺の意識はそのまま深い闇に沈んで行った。
――――――――――
―――ポタッ
何かにぶつかり反響する水音に気付き、俺は目を覚ました。
『…あれ…ここは…?』
見たことも無いような洞窟の風景が辺りに広がっている。
反射的に夢かと思い、もう一度目を閉じようとするが、目を閉じたはずなのに周りの景色が視界に飛び込んでくる。
これはおかしいと良く良く体の感覚に意識を向ければ、どうにも中に浮かぶ球体のような状態になっているらしい。
しかし、自分の体が中に浮かぶ球体だと自覚した上で、同時に違和感を感じることが無かった。
おかしいとは思いつつも、やはり夢かと確信し、夢ならば楽しんでやろうと洞窟の奥へ進んで行く。
『にしても暗いな~…お化けとか苦手だから出てこないで欲しいわ。』
洞窟の奥へ進む中、途中で錆び付いた中世の騎士鎧のような物が転がっているのを確認した。
興味を抱き周囲を漂っていると、中に白骨死体がいるのが見える。
『うっわ~なんだこれ…夢にしてはだいぶリアルだな。って…ん?』
中の白骨から引き寄せられるような感覚がする。
その感覚に身を委ねると、次の瞬間には視界が入れ替わり、洞窟の天井を見上げるような形で倒れているのを自覚した。
びっくりして起き上がる。
すると、今度は体の感覚があることに気づく。
がばっと自分の手を確認すると、先程倒れていた騎士鎧のグローブがそこにはあった。
2000年代初頭、パソコンゲーム黎明期に流行ったシュミレーション系のファンタジーゲームだ。
ゲーム性としては最近流行りの物に比べれば、作り込みも甘く、ストーリーなどの密度もあまり良くは無い。
しかし、ドット風の2頭身キャラクターが侵入者である【勇者】と戦ったり、ダンジョンを建造したりする姿は非常に中毒性が高く、現在でも多くのファンが飽きずにプレイをしているゲームだ。
残念ながら製作会社の倒産により続編が製作されることはなく、現在は別会社に権利が移譲し、続編が世に流布している。
そして、俺、【野幹 殿】もまた、そんなゲームのファンの一人だった。
両親を早くに亡くし、孤児院に引き取られて暫く。
両親を失った悲しみから塞ぎ込んでいた俺は、孤児院の友人から紹介されたこのゲームにハマり、気づけばこのゲームに没頭するようになった。
残念なことにその友人はすぐに里親に引き取られて行ったため、付き合いが長かった訳では無いが、それでも俺の人生を救ってくれた恩人だと今でも感謝している。
おかげで深い悲しみから立ち上がることの出来た俺は、高校卒業後に「誰かの役に立ちたい」という想いから看護学校に進学。
バイトと奨学金で何とか生活しつつ、看護学生として様々な勉強をしている。
そんな俺の趣味は、言わずもがな迷宮メイカーをプレイすることだった。
「えーと、ここのエリアに壁配置…こっちに生産区画…よし、こんなもんかな。」
自分が作り上げたダンジョンは名前を付けてオンライン上にアップロードすることで、他のプレイヤーが【勇者】としてダンジョンを攻略することも出来る。
これにより、現在でも様々なダンジョンが毎日のように更新され続けているのだ。
「ふぁ~…」
急な眠気に目を擦る。
ふと、画面の端を見ると、随分長い間集中していたらしい。
今回のダンジョンは自分の中でも過去最高レベルのクオリティだと自負している。
ただ、それ相応に体力と集中力を消耗していたため、眠気が襲ってきたのだろう。
幸い明日は休日でバイトのシフトも無かったため、少し仮眠を取ろうかと机に上半身を預け、俺の意識はそのまま深い闇に沈んで行った。
――――――――――
―――ポタッ
何かにぶつかり反響する水音に気付き、俺は目を覚ました。
『…あれ…ここは…?』
見たことも無いような洞窟の風景が辺りに広がっている。
反射的に夢かと思い、もう一度目を閉じようとするが、目を閉じたはずなのに周りの景色が視界に飛び込んでくる。
これはおかしいと良く良く体の感覚に意識を向ければ、どうにも中に浮かぶ球体のような状態になっているらしい。
しかし、自分の体が中に浮かぶ球体だと自覚した上で、同時に違和感を感じることが無かった。
おかしいとは思いつつも、やはり夢かと確信し、夢ならば楽しんでやろうと洞窟の奥へ進んで行く。
『にしても暗いな~…お化けとか苦手だから出てこないで欲しいわ。』
洞窟の奥へ進む中、途中で錆び付いた中世の騎士鎧のような物が転がっているのを確認した。
興味を抱き周囲を漂っていると、中に白骨死体がいるのが見える。
『うっわ~なんだこれ…夢にしてはだいぶリアルだな。って…ん?』
中の白骨から引き寄せられるような感覚がする。
その感覚に身を委ねると、次の瞬間には視界が入れ替わり、洞窟の天井を見上げるような形で倒れているのを自覚した。
びっくりして起き上がる。
すると、今度は体の感覚があることに気づく。
がばっと自分の手を確認すると、先程倒れていた騎士鎧のグローブがそこにはあった。
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