16 / 25
冷たくて濁った水
しおりを挟む
うちの母は長い間、こつこつ堅実にがんばってきて、浮ついた非現実的な事は一切、言わなかった。今思えば、それはポーズではなかったかと思う。
「見ておきな。こうやって一歩一歩、きちんと確実に踏み出して生きていくんだよ。そうじゃなかったらおかしな人と後ろ指さされる」
父親がいない娘だから、ああなったんだ可哀そうにと言われることになる。
もちろん母は、そんな言葉は口に出したことがない。ただ、黙々と生きていただけだ。母の事は大好きだったし、離れていると、これ以上ないほど懐かしい。こんなトシになってもまだ、わたしにはお母さんが必要なんだなあと心底、思う。
母は一歩ごとに厳しい様相で、油断ない目で、たった一人の子供を背後に護りつつ、前方を切り開くために、常に戦闘モードだった。
現実的に。きちんと確実に。地に足をつけて。
その圧力はすさまじかった。いつの間にかわたしは、それに押されていた。母の意図する形に自分をおさめなくては申し訳ないと思うまでになっていた。
「こうやって生きるの。わかった。あんたはわたしのように、間違ってはいけない」
そう言われているような気が常にしていた。
母は自己否定の強い人だ。「わたしみたいな人間」と、よく言った。
一体、母のなにが間違っているのかわたしには分からないけれど、母自身は自分がなにかを誤った、踏み外した、だから今こうなっているという自責の念に囚われているようだった。
恐らく母は、シングルマザーになった身の上を嘆いている。
父親がいない娘への贖罪として、堅実に現実的に「普通に」生きる姿を創り上げ、それを娘へのテキストにしようとしていた。
だけど当の娘は三十路になれど独身であり、勤め上げるはずだった編集プロの仕事も放りだして、フリーターになってしまった。
母の脱力感はいかほどだっただろう。もしかしたら母は若かりし頃、今のわたしとよく似た境遇に陥ったことがあったのかもしれない。これはただの妄想だけど。
必死になって人生の師として歩いてきた過去がガラガラと崩れ去り、遂に母は自棄を起こした。別の言葉に言い換えれば、失敗に気づいた。自分が子供に施そうとしてきたことは大失敗に終わった。
今、母は遠い東京で、何を思っているのか。
魔女になると言い放って出奔した母。
(空を飛ぶのかよ。未来を予知するのかよ。怪しげな薬を使うのかよ。またまた、黒猫を相棒に夜な夜な奇妙で楽しい集会を開くのか)
母がなにをやりたいのか。母自身がよく知っているはずだ。
遠く離れてしまった母。きっと一生懸命こつこつ働いて、子供に背中を見せて生きて来た長い間、心の中は果てしなく遠い夢を求め続けていた。最初から母は、わたしの側にはいなかった。
それでもわたしは、梟荘に残された今でも、時々母の事を夢に見る。
日曜の朝に、あたたかい味噌汁の香りがして、ことんことんと食卓にお皿が並ぶ音がする。じゃらじゃら台所の玉暖簾が音を立てて、たる子、いいかげんに起きなさいと怒鳴られる。
黄金の朝焼けに包まれるような、大事な思い出。戻りたいなあと思うことがある。
**
優菜の正月休みが終わり、沙織の冬休みも終わった。
わたしは未だ、コンビニは週に二度勤務である。
優菜は週に四度でも良いと言ってくれたが、その言葉をうのみにすることはまだできないと思っていた。
夜勤を増やしたいのはやまやまだったが、優菜の気持ちはまだ全然整理がついていないように見える。梟荘でくつろいでいる時、けらけら笑ったり、ネイルを手入れして沙織に見せていたり、楽しそうだけど、やっぱりお風呂に入ったらしくしく泣いているし、なにより深夜の危ういスマホいじりはまだ続いているようだった。
まことに忍びなかったが、わたしは時折、例の大型掲示板を開く。英会話スクールについての、あのスレッドだ。
優菜の様子がいつもにまして変だと思った時は、こっそりとネットを開いた。そうしたら思った通り、スレッドの住人たちが祭を開いている。恐ろしいことに、優菜の様子とほぼ百パーセント、リンクしていた。
「今日の優菜さん」が、どんなふうに例のイケメン妻子持ち講師にからんだか。嫉妬に狂ってどんな騒ぎを起こしたか。事務の人たちも迷惑しているとか。
スレッドの内容だけ見ていると、一方的に優菜が気ちがい扱いをされていて、なにがどうなって優菜の心が乱されて、そこまで盛り上がってしまっているのか全然わからない。
(いっそのこと、思い切ってコンビニ勤務回数を増やしてもらって、優菜を梟荘に縛り付けておくべきなのかもしれない)
沙織の事を可愛がっている優菜は、まさか沙織を放置してまで英会話スクールに繰り出しては行かないだろう。
「たるちゃん、たっだいまー」
深夜、外の冷たい空気をまとわりつかせ、元気いっぱいに帰宅する優菜。
「おいっしー。たるちゃんの煮物最高」
よく喋りよく笑い、楽しそうにふるまって、優菜は自室に行き、風呂に行き、そして、湯船の中で泣く。
こもった泣き声は、真っ暗な梟荘の廊下に静かに染み渡るのだった。
もう辞めな。もういい。
喉元まで言葉が出かかっていた。
ひっぱたいてでも、その不毛なことを辞めさせるべきだった。
あの日、梟荘に電話が入った。
奇妙な時間の電話だった。午前9時。優菜は仕事に行き、沙織も学校に行き、わたしが一人梟荘に残って、お掃除をしている最中に。
黒電話の呼び出し音を聞いて、酷い胸騒ぎがした。
一瞬、沙織が交通事故にでもあったか、それとも遠方の母になにかあったのかと心臓が止まりそうになった。変な直感が働くことがたまにあって、そんな時、やっぱりわたしは、魔女修行したがるような母の娘なんだ、変な力があるのかな、などと思う。
「はい、山崎……」
だけど、電話は知らない男性からだった。英会話スクールの何某と名乗られた瞬間、ああ、この男性だったのかと思った。落ち着いた、優しい声の、だけどどこかで何かを計算しているような雰囲気のひと。
背景のノイズからして、スクールからかけているわけではなさそうだ。黒電話だから番号は表示されない。だけど、なんとなく、これは携帯からでもないなあと感じる。カロンカロンと純喫茶の扉が開くような音がするので、ああもしかしたらどこかの店の公衆電話かなと思った。
(梟荘に電話をかけたことを、誰にも知られたくないと思っている……)
「松本優菜さんのことで、ご相談があります。お忙しいところ大変申し訳ないのですが、市中の喫茶……まで、おいでいただけないでしょうか」
その喫茶店は、とても大きくて、誰でもよく使う場所だった。一見、秘密の待ち合わせには不適切かと思うけれど、人の出入りが多く、店員もやる気のないアルバイトさんだから、顔を覚えられにくいと判断したのかもしれない。
正月中に優菜につきあって、ミステリーのDVDを見すぎたからかもしれない。いらないことまで考えた。
「わかりました、一時間ほど時間をください、行きますから」
わたしはそう答えると、急いで掃除を終わらせた。
**
思った通り、そのフランチャイズの喫茶は混んでいて、騒々しかった。
テーブル席ごとに軽い間仕切りが施されていて、通路を行く客に顔を見られずに済む造りになっている。
雪がちらついていた。梟荘までここまで来るのに、わたしは相当の苦労をした。歩いてバス停まで行き、暖房が効きすぎたバスの座席でお尻がほかほかになったけれど、降車したとたん、足元が溶けた雪のせいでべちゃべちゃになった。
ばちばちと、車が通るたびに雪が溶けてできた冷たくて汚い水が跳ね上がった。何度もその飛沫がかかりそうになりながら、やっとのことで、その人気店に到着したのである。
かろんかろん。
扉を開いた時、電話でお話している最中に聞こえた、ベルの音が鳴った。ああ、やっぱりここから掛けていたんだと判る。出入り口の側に、赤い電話が設置されていた。今時誰が使うのだろうと思うような公衆電話である。
混んでいてむわっとするお店の通路を行くと、一人の小柄な男性が立ち上がって頭を下げた。ラフな格好をしているところを見ると、今日は休みなのかもしれない。
わたしは黙って間仕切りの中に入り、向かいに腰を下ろした。その講師氏はコーヒーを飲んでいるところだった。
態度の悪い店員がやってきて、見下ろすようにしてご注文はと言った。
「ブラックコーヒーで」
と、とりあえず頼んで追い払うと、改めてその男性を眺めた。
きゅっと締まった小柄な体つき。スポーツマンなのだろうと思う。顔立ちは整っていて彫が深い。
柔らかく、きびきびした雰囲気は、見る人に好感を抱かせるだろう。
だけどわたしは、彼のよく動く目や、腕時計のきらきらした感じや、クラッチバッグに着いた可愛らしいキーホルダーが気になった。
「これは、優菜さんから僕のメールに届いたメール文を印刷したものです」
コーヒーが届いてから、彼はそう言ってバッグからB5版のコピー用紙に印字された分厚い束を差し出した。
わたしは受け取ると目を通した。読んでいるわたしに、彼は意識してそうしているかのような、落ち着いた淡々とした声音で語った。
本当はもう、校長にそれを見せて警察沙汰にするべきところまできているのだが、できれば穏便に済ませたい。ただ事実として、自分だけではなく、スクールの生徒や、スクールを見学しに来た人たちに奇異の目で見られ始めており、非常に迷惑している。
「こんなふうに山崎さんを呼び出して、こういうものをお見せして相談しているのは、ある意味、僕のできる最後の誠意なのです」
と、彼は言った。
わたしは無言でそれを読み続けた。手が震えて来た。気持ちが悪くなってきた。
テーブルにその紙束を置くと、じっと相手を見つめた。彼は目をそらそうとしたが、すぐに気を取り直して、真っすぐに見つめ返してきた。
軽いノリの人気曲が喫茶では流れている。どこかのテーブルではじけるような馬鹿笑いが起こった。
「優菜とこんなふうに、正面からお話されましたか」
と、わたしは質問した。一瞬、彼の表情が変わった。そしてわたしは確信した――この男性は、自分に非は全くないと思っている――彼が一瞬、僅かな隙に出した表情は、戸惑いではなく、苛立ちだった。
答えはなく、無言で数秒が流れたので、わたしはちょっと考えてから別の事を言った。
「優菜に気はないんですね。優菜が迷惑なんですね。優菜に辞めてもらいたいんですね。メールも電話も一切しないで、関りたくないんですね」
そのスクールにこれ以上優菜が通っても、本来優菜の目的であった、コンテストに出て優秀な成績をおさめたりする夢は、叶わないんですね。
言い終わったとき、わたしは軽く息が切れていた。
そうなのだ。優菜がここまで必死に頑張っていたのは、英語を頑張りたい、たくさんいる生徒の中から抜擢されて、全国的に知名度の高いコンテストに出て成績をおさめたいという野望があったから。
そのコンテストに出るというだけで、一般のスクール生には名誉なのだと聞いている。
そうだ、優菜は言っていた。英語を専門に勉強している学生でも難しい、幼い頃から英才教育を受けたり、留学したり、あるいはハーフで片親が英語を母国語としているような人が、そのコンテストに出ることができるのだと。
講師氏はもう、冷たい視線を隠そうとはしなかった。完全に敵を見るような目でわたしを眺めている。こいつも分からないやつか、と、腹の中で思っているのが聞こえてきそうだ。
世の中の全ての人から見て、松本優菜と言う女は頭がおかしくて、ストーカーで、やばいやつなので、彼にとっては、親でもないのにそんな女の肩を持つ人間がいることが納得できないのかもしれない。
「優菜さんが一生懸命な生徒さんであることは認めます。優秀です、社会人になってから英語を勉強し始めた方にしてみれば。けれど、コンテストにエントリーできるのは、うちのスクールの中でも特待生です。もっと若くて、小さい時から教育を受けていて、それなりにスクールに貢献してくれているひとなんですよ」
つまり、優菜さんの頑張りは最初から無駄、叶わない夢でしかないんです、あの人は勘違いして頑張っていただけです。
彼の言うことは、分かりやすく言えば、そういうことだった。
(いやしかし、優菜は梟荘では、嬉しそうに、今日は褒められた、このまま頑張ればコンテストにエントリーできるかもしれないって言われた、とか、何度も報告していたな)
凄く嬉しそうに、頬をつやつやと赤くして、涙までにじませて、優菜は言っていたものだ。
(ああまあ、英会話スクールもビジネスだからなー。生徒はみんな、金を払ってくれてるからなー)
先生にしてみれば、あんたがいくら頑張ってもエントリーは無理だから。もう枠は埋まってるし、まあ諦めて、せいぜい趣味と教養の範囲でお願いしますよー、とは、言いにくいわけだ。
前にそのスクールのサイトを開いてみたことがあったけれど、たしかにそこには、その有名コンテストにエントリーできるかもしれないチャンス、という言葉があった。
優菜はその言葉を信じて入会したのかもしれない。してみれば、優菜はどこからどこまでが悪くて、この男性はどこからどこまでが被害者なのだろう。わたしには分からなかった。
わたしは冷めたコーヒーを飲んだ。
向かいの男性はいらいらと腕時計を見始めている。
きらきらと、チャラい腕時計。バッグのキーホルダー。なるほど、女生徒に人気でいらっしゃるのだ。
わたしには見えるような気がした。スクールの、まだ中学生か高校生だかの女の子が、おこづかいで買ったプレゼントを、先生に渡す。実はそのお金を出したのは、女の子の親であり、親は自分の娘が特待生に選ばれて、今回もコンテストに無事エントリーできることを祈っている。
ふっと思った。彼はどうして優菜の両親ではなく、わたしを呼んだのか。
今回の呼び出しは、なにからなにまで、彼の計算のような気がした。どうやったら効果的に、しかも、どこにも波風を立たせずに、終わらせることができるのか、彼はよく考えたのだと思う。
「わたしから優菜に伝えても良いですが、あなたからも手紙を書いて下さい」
テーブルの隅にあったボールペンと、店についてのアンケート用紙の裏側を出して、わたしは差し出した。彼はいらっと眉を上げた。険しい顔である。わたしは無視をした。
「それから、これで優菜が英会話スクールを辞めるために、手続きをするために学校に出入りしないで済むよう、手配してください。もし忘れ物等あるようなら、梟荘か、優菜の実家まで郵送してください」
はいこれ、郵送代として。
わたしは千円札を出してやった。
講師氏は無言でお金を受け取った。受け取らないかと思ったけれど、しっかりと千円札は彼の手に渡った。
さらさらと彼は、几帳面そうな字で紙に書きつけてから、わたしに出した。これでいいですか、僕忙しいんですと、呼びつけた本人が言ってのけた。
そろそろわたしも、腹が立ってきた。
手紙を見ると、メールと電話が不快だったこと、他のひとも迷惑していることを箇条書きで書いてある。最後に、今度優菜から連絡があったら、今までの履歴とメールの内容を校長に見せると書いてあった。
わたしは立ち上がった。
テーブルに置かれた伝票は、きっちり、わたしの分と、講師氏の分が分かれていた。
わたしは苛々しながら支払いを済ませて店を出た。
ふわっと、細かい雪が顔に降りかかってくる。
(優菜よ)
小さいお社に初詣して、今年こそ良い年にしたい、と言っていた優菜。
暗い空からどんどん降ってくる粉雪を睨みあげながら、わたしは息を吹き上げた。喫茶店で吸い込んだ、色々な汚いものを吐き出すように。
幸せになれるよ。これで切れたんだから。
そう思った。
ばちゃばちゃと車が水を蹴立てて走り抜けてゆく。
汚い水。冷たい濁った水。
**
優菜にこの嫌な紙切れを渡さなくてはならない。
今夜はわたしのコンビニ夜勤だから、優菜は早く帰宅してくれるはずだ。仮眠を早めに切りあげて、優菜に話をしよう。
すごく、辛い仕事だけど。
(楽になりな……)
コンテストで優秀な成績をおさめたいという必死さも、そこから派生するように生まれた粘着質な片思いも、もう完全に希望を絶たれた。
実は最初から望みなんかなかったのに、誰もはっきりとそう告げてくれなかったために、優菜は頑張りすぎた。スクールの売り文句のひとつに、コンテストに出場できるチャンス、というのがあった。スクールや世間一般から言わせたら、そんなの大人なら分かるだろ、空気を読めと一笑されるかもしれない。
迷惑なひとという、最悪な立ち位置に転落して、ついに優菜はスクールから追い出された。
しばらくは苦しむかもしれないけれど、やがて春が来るように、少しずつ濃い涙も薄れて行くに違いない。
とぼとぼと梟荘に帰り着いた時、もう午後の二時になっていた。
急いで晩御飯の支度をしなくてはならない。夜勤に向けて少しでも体を休めておかなくては。
心を切り替えつつ、玄関に入ろうとして、あれっと思う。
門の横の郵便受けに、何かが入っているのが見えた。
ダイレクトメールだろうか。
取り出してみて、心臓がぱっと凍り付いた。
久々に見た。
赤文字の奇妙なハガキである。山崎たる子宛、おまえを憎む、おまえは見張られている、社会的に抹殺してやる、怨、怨!
消印を見て、最後のピースが当てはまったように思った。
ああ、やっぱりそうか。やっぱりそうなんだ、そうだと思っていたけれど、間違いなくやっぱりそうなんだ。
それは、沙織の母親がいる……県の、小さい町の名前だった。
一度、沙織の母から沙織宛てにものが贈られてきて、かわった地名だね、なんて読むんだろうと優菜と言い合っていたことがあったから、覚えていたのだ。
もちろん、沙織のママが、わたし宛てに、そんなおかしなハガキを出すはずはない。
ハガキの差出人は十中八九、間違いなく、やっぱり、早川芽衣なのだろう。そして早川芽衣は、沙織の母親に何らかの用事があって、出稼ぎ先のその町にまで出向いたのだ。
そして、そこからわたし宛の、この悪意に満ちた呪いのハガキを出した。
出向いた先で投函すれば差出人は分かるまい。そう思って芽衣さんはやっているんだろうけれど、バレバレだ。やっぱり、甘ちゃん、お嬢さんなのだ。
(馬鹿だなー。頭悪いんじゃねーの。くっだらねー。どんな面して作ったんだよ、このアホなハガキを)
もうわたしは、赤文字なんか見てもちっとも怖くなかった。逆に腹の中で、さんざん芽衣さんを馬鹿にして憂さを晴らしてやった。もっと送ってこればいいのに。そうしたらもっと笑えるネタが増える。そんなふうに、荒んだ心で考えた。
それにしても。
芽衣さんが、動いている。
(何を考えているんだろう……)
「見ておきな。こうやって一歩一歩、きちんと確実に踏み出して生きていくんだよ。そうじゃなかったらおかしな人と後ろ指さされる」
父親がいない娘だから、ああなったんだ可哀そうにと言われることになる。
もちろん母は、そんな言葉は口に出したことがない。ただ、黙々と生きていただけだ。母の事は大好きだったし、離れていると、これ以上ないほど懐かしい。こんなトシになってもまだ、わたしにはお母さんが必要なんだなあと心底、思う。
母は一歩ごとに厳しい様相で、油断ない目で、たった一人の子供を背後に護りつつ、前方を切り開くために、常に戦闘モードだった。
現実的に。きちんと確実に。地に足をつけて。
その圧力はすさまじかった。いつの間にかわたしは、それに押されていた。母の意図する形に自分をおさめなくては申し訳ないと思うまでになっていた。
「こうやって生きるの。わかった。あんたはわたしのように、間違ってはいけない」
そう言われているような気が常にしていた。
母は自己否定の強い人だ。「わたしみたいな人間」と、よく言った。
一体、母のなにが間違っているのかわたしには分からないけれど、母自身は自分がなにかを誤った、踏み外した、だから今こうなっているという自責の念に囚われているようだった。
恐らく母は、シングルマザーになった身の上を嘆いている。
父親がいない娘への贖罪として、堅実に現実的に「普通に」生きる姿を創り上げ、それを娘へのテキストにしようとしていた。
だけど当の娘は三十路になれど独身であり、勤め上げるはずだった編集プロの仕事も放りだして、フリーターになってしまった。
母の脱力感はいかほどだっただろう。もしかしたら母は若かりし頃、今のわたしとよく似た境遇に陥ったことがあったのかもしれない。これはただの妄想だけど。
必死になって人生の師として歩いてきた過去がガラガラと崩れ去り、遂に母は自棄を起こした。別の言葉に言い換えれば、失敗に気づいた。自分が子供に施そうとしてきたことは大失敗に終わった。
今、母は遠い東京で、何を思っているのか。
魔女になると言い放って出奔した母。
(空を飛ぶのかよ。未来を予知するのかよ。怪しげな薬を使うのかよ。またまた、黒猫を相棒に夜な夜な奇妙で楽しい集会を開くのか)
母がなにをやりたいのか。母自身がよく知っているはずだ。
遠く離れてしまった母。きっと一生懸命こつこつ働いて、子供に背中を見せて生きて来た長い間、心の中は果てしなく遠い夢を求め続けていた。最初から母は、わたしの側にはいなかった。
それでもわたしは、梟荘に残された今でも、時々母の事を夢に見る。
日曜の朝に、あたたかい味噌汁の香りがして、ことんことんと食卓にお皿が並ぶ音がする。じゃらじゃら台所の玉暖簾が音を立てて、たる子、いいかげんに起きなさいと怒鳴られる。
黄金の朝焼けに包まれるような、大事な思い出。戻りたいなあと思うことがある。
**
優菜の正月休みが終わり、沙織の冬休みも終わった。
わたしは未だ、コンビニは週に二度勤務である。
優菜は週に四度でも良いと言ってくれたが、その言葉をうのみにすることはまだできないと思っていた。
夜勤を増やしたいのはやまやまだったが、優菜の気持ちはまだ全然整理がついていないように見える。梟荘でくつろいでいる時、けらけら笑ったり、ネイルを手入れして沙織に見せていたり、楽しそうだけど、やっぱりお風呂に入ったらしくしく泣いているし、なにより深夜の危ういスマホいじりはまだ続いているようだった。
まことに忍びなかったが、わたしは時折、例の大型掲示板を開く。英会話スクールについての、あのスレッドだ。
優菜の様子がいつもにまして変だと思った時は、こっそりとネットを開いた。そうしたら思った通り、スレッドの住人たちが祭を開いている。恐ろしいことに、優菜の様子とほぼ百パーセント、リンクしていた。
「今日の優菜さん」が、どんなふうに例のイケメン妻子持ち講師にからんだか。嫉妬に狂ってどんな騒ぎを起こしたか。事務の人たちも迷惑しているとか。
スレッドの内容だけ見ていると、一方的に優菜が気ちがい扱いをされていて、なにがどうなって優菜の心が乱されて、そこまで盛り上がってしまっているのか全然わからない。
(いっそのこと、思い切ってコンビニ勤務回数を増やしてもらって、優菜を梟荘に縛り付けておくべきなのかもしれない)
沙織の事を可愛がっている優菜は、まさか沙織を放置してまで英会話スクールに繰り出しては行かないだろう。
「たるちゃん、たっだいまー」
深夜、外の冷たい空気をまとわりつかせ、元気いっぱいに帰宅する優菜。
「おいっしー。たるちゃんの煮物最高」
よく喋りよく笑い、楽しそうにふるまって、優菜は自室に行き、風呂に行き、そして、湯船の中で泣く。
こもった泣き声は、真っ暗な梟荘の廊下に静かに染み渡るのだった。
もう辞めな。もういい。
喉元まで言葉が出かかっていた。
ひっぱたいてでも、その不毛なことを辞めさせるべきだった。
あの日、梟荘に電話が入った。
奇妙な時間の電話だった。午前9時。優菜は仕事に行き、沙織も学校に行き、わたしが一人梟荘に残って、お掃除をしている最中に。
黒電話の呼び出し音を聞いて、酷い胸騒ぎがした。
一瞬、沙織が交通事故にでもあったか、それとも遠方の母になにかあったのかと心臓が止まりそうになった。変な直感が働くことがたまにあって、そんな時、やっぱりわたしは、魔女修行したがるような母の娘なんだ、変な力があるのかな、などと思う。
「はい、山崎……」
だけど、電話は知らない男性からだった。英会話スクールの何某と名乗られた瞬間、ああ、この男性だったのかと思った。落ち着いた、優しい声の、だけどどこかで何かを計算しているような雰囲気のひと。
背景のノイズからして、スクールからかけているわけではなさそうだ。黒電話だから番号は表示されない。だけど、なんとなく、これは携帯からでもないなあと感じる。カロンカロンと純喫茶の扉が開くような音がするので、ああもしかしたらどこかの店の公衆電話かなと思った。
(梟荘に電話をかけたことを、誰にも知られたくないと思っている……)
「松本優菜さんのことで、ご相談があります。お忙しいところ大変申し訳ないのですが、市中の喫茶……まで、おいでいただけないでしょうか」
その喫茶店は、とても大きくて、誰でもよく使う場所だった。一見、秘密の待ち合わせには不適切かと思うけれど、人の出入りが多く、店員もやる気のないアルバイトさんだから、顔を覚えられにくいと判断したのかもしれない。
正月中に優菜につきあって、ミステリーのDVDを見すぎたからかもしれない。いらないことまで考えた。
「わかりました、一時間ほど時間をください、行きますから」
わたしはそう答えると、急いで掃除を終わらせた。
**
思った通り、そのフランチャイズの喫茶は混んでいて、騒々しかった。
テーブル席ごとに軽い間仕切りが施されていて、通路を行く客に顔を見られずに済む造りになっている。
雪がちらついていた。梟荘までここまで来るのに、わたしは相当の苦労をした。歩いてバス停まで行き、暖房が効きすぎたバスの座席でお尻がほかほかになったけれど、降車したとたん、足元が溶けた雪のせいでべちゃべちゃになった。
ばちばちと、車が通るたびに雪が溶けてできた冷たくて汚い水が跳ね上がった。何度もその飛沫がかかりそうになりながら、やっとのことで、その人気店に到着したのである。
かろんかろん。
扉を開いた時、電話でお話している最中に聞こえた、ベルの音が鳴った。ああ、やっぱりここから掛けていたんだと判る。出入り口の側に、赤い電話が設置されていた。今時誰が使うのだろうと思うような公衆電話である。
混んでいてむわっとするお店の通路を行くと、一人の小柄な男性が立ち上がって頭を下げた。ラフな格好をしているところを見ると、今日は休みなのかもしれない。
わたしは黙って間仕切りの中に入り、向かいに腰を下ろした。その講師氏はコーヒーを飲んでいるところだった。
態度の悪い店員がやってきて、見下ろすようにしてご注文はと言った。
「ブラックコーヒーで」
と、とりあえず頼んで追い払うと、改めてその男性を眺めた。
きゅっと締まった小柄な体つき。スポーツマンなのだろうと思う。顔立ちは整っていて彫が深い。
柔らかく、きびきびした雰囲気は、見る人に好感を抱かせるだろう。
だけどわたしは、彼のよく動く目や、腕時計のきらきらした感じや、クラッチバッグに着いた可愛らしいキーホルダーが気になった。
「これは、優菜さんから僕のメールに届いたメール文を印刷したものです」
コーヒーが届いてから、彼はそう言ってバッグからB5版のコピー用紙に印字された分厚い束を差し出した。
わたしは受け取ると目を通した。読んでいるわたしに、彼は意識してそうしているかのような、落ち着いた淡々とした声音で語った。
本当はもう、校長にそれを見せて警察沙汰にするべきところまできているのだが、できれば穏便に済ませたい。ただ事実として、自分だけではなく、スクールの生徒や、スクールを見学しに来た人たちに奇異の目で見られ始めており、非常に迷惑している。
「こんなふうに山崎さんを呼び出して、こういうものをお見せして相談しているのは、ある意味、僕のできる最後の誠意なのです」
と、彼は言った。
わたしは無言でそれを読み続けた。手が震えて来た。気持ちが悪くなってきた。
テーブルにその紙束を置くと、じっと相手を見つめた。彼は目をそらそうとしたが、すぐに気を取り直して、真っすぐに見つめ返してきた。
軽いノリの人気曲が喫茶では流れている。どこかのテーブルではじけるような馬鹿笑いが起こった。
「優菜とこんなふうに、正面からお話されましたか」
と、わたしは質問した。一瞬、彼の表情が変わった。そしてわたしは確信した――この男性は、自分に非は全くないと思っている――彼が一瞬、僅かな隙に出した表情は、戸惑いではなく、苛立ちだった。
答えはなく、無言で数秒が流れたので、わたしはちょっと考えてから別の事を言った。
「優菜に気はないんですね。優菜が迷惑なんですね。優菜に辞めてもらいたいんですね。メールも電話も一切しないで、関りたくないんですね」
そのスクールにこれ以上優菜が通っても、本来優菜の目的であった、コンテストに出て優秀な成績をおさめたりする夢は、叶わないんですね。
言い終わったとき、わたしは軽く息が切れていた。
そうなのだ。優菜がここまで必死に頑張っていたのは、英語を頑張りたい、たくさんいる生徒の中から抜擢されて、全国的に知名度の高いコンテストに出て成績をおさめたいという野望があったから。
そのコンテストに出るというだけで、一般のスクール生には名誉なのだと聞いている。
そうだ、優菜は言っていた。英語を専門に勉強している学生でも難しい、幼い頃から英才教育を受けたり、留学したり、あるいはハーフで片親が英語を母国語としているような人が、そのコンテストに出ることができるのだと。
講師氏はもう、冷たい視線を隠そうとはしなかった。完全に敵を見るような目でわたしを眺めている。こいつも分からないやつか、と、腹の中で思っているのが聞こえてきそうだ。
世の中の全ての人から見て、松本優菜と言う女は頭がおかしくて、ストーカーで、やばいやつなので、彼にとっては、親でもないのにそんな女の肩を持つ人間がいることが納得できないのかもしれない。
「優菜さんが一生懸命な生徒さんであることは認めます。優秀です、社会人になってから英語を勉強し始めた方にしてみれば。けれど、コンテストにエントリーできるのは、うちのスクールの中でも特待生です。もっと若くて、小さい時から教育を受けていて、それなりにスクールに貢献してくれているひとなんですよ」
つまり、優菜さんの頑張りは最初から無駄、叶わない夢でしかないんです、あの人は勘違いして頑張っていただけです。
彼の言うことは、分かりやすく言えば、そういうことだった。
(いやしかし、優菜は梟荘では、嬉しそうに、今日は褒められた、このまま頑張ればコンテストにエントリーできるかもしれないって言われた、とか、何度も報告していたな)
凄く嬉しそうに、頬をつやつやと赤くして、涙までにじませて、優菜は言っていたものだ。
(ああまあ、英会話スクールもビジネスだからなー。生徒はみんな、金を払ってくれてるからなー)
先生にしてみれば、あんたがいくら頑張ってもエントリーは無理だから。もう枠は埋まってるし、まあ諦めて、せいぜい趣味と教養の範囲でお願いしますよー、とは、言いにくいわけだ。
前にそのスクールのサイトを開いてみたことがあったけれど、たしかにそこには、その有名コンテストにエントリーできるかもしれないチャンス、という言葉があった。
優菜はその言葉を信じて入会したのかもしれない。してみれば、優菜はどこからどこまでが悪くて、この男性はどこからどこまでが被害者なのだろう。わたしには分からなかった。
わたしは冷めたコーヒーを飲んだ。
向かいの男性はいらいらと腕時計を見始めている。
きらきらと、チャラい腕時計。バッグのキーホルダー。なるほど、女生徒に人気でいらっしゃるのだ。
わたしには見えるような気がした。スクールの、まだ中学生か高校生だかの女の子が、おこづかいで買ったプレゼントを、先生に渡す。実はそのお金を出したのは、女の子の親であり、親は自分の娘が特待生に選ばれて、今回もコンテストに無事エントリーできることを祈っている。
ふっと思った。彼はどうして優菜の両親ではなく、わたしを呼んだのか。
今回の呼び出しは、なにからなにまで、彼の計算のような気がした。どうやったら効果的に、しかも、どこにも波風を立たせずに、終わらせることができるのか、彼はよく考えたのだと思う。
「わたしから優菜に伝えても良いですが、あなたからも手紙を書いて下さい」
テーブルの隅にあったボールペンと、店についてのアンケート用紙の裏側を出して、わたしは差し出した。彼はいらっと眉を上げた。険しい顔である。わたしは無視をした。
「それから、これで優菜が英会話スクールを辞めるために、手続きをするために学校に出入りしないで済むよう、手配してください。もし忘れ物等あるようなら、梟荘か、優菜の実家まで郵送してください」
はいこれ、郵送代として。
わたしは千円札を出してやった。
講師氏は無言でお金を受け取った。受け取らないかと思ったけれど、しっかりと千円札は彼の手に渡った。
さらさらと彼は、几帳面そうな字で紙に書きつけてから、わたしに出した。これでいいですか、僕忙しいんですと、呼びつけた本人が言ってのけた。
そろそろわたしも、腹が立ってきた。
手紙を見ると、メールと電話が不快だったこと、他のひとも迷惑していることを箇条書きで書いてある。最後に、今度優菜から連絡があったら、今までの履歴とメールの内容を校長に見せると書いてあった。
わたしは立ち上がった。
テーブルに置かれた伝票は、きっちり、わたしの分と、講師氏の分が分かれていた。
わたしは苛々しながら支払いを済ませて店を出た。
ふわっと、細かい雪が顔に降りかかってくる。
(優菜よ)
小さいお社に初詣して、今年こそ良い年にしたい、と言っていた優菜。
暗い空からどんどん降ってくる粉雪を睨みあげながら、わたしは息を吹き上げた。喫茶店で吸い込んだ、色々な汚いものを吐き出すように。
幸せになれるよ。これで切れたんだから。
そう思った。
ばちゃばちゃと車が水を蹴立てて走り抜けてゆく。
汚い水。冷たい濁った水。
**
優菜にこの嫌な紙切れを渡さなくてはならない。
今夜はわたしのコンビニ夜勤だから、優菜は早く帰宅してくれるはずだ。仮眠を早めに切りあげて、優菜に話をしよう。
すごく、辛い仕事だけど。
(楽になりな……)
コンテストで優秀な成績をおさめたいという必死さも、そこから派生するように生まれた粘着質な片思いも、もう完全に希望を絶たれた。
実は最初から望みなんかなかったのに、誰もはっきりとそう告げてくれなかったために、優菜は頑張りすぎた。スクールの売り文句のひとつに、コンテストに出場できるチャンス、というのがあった。スクールや世間一般から言わせたら、そんなの大人なら分かるだろ、空気を読めと一笑されるかもしれない。
迷惑なひとという、最悪な立ち位置に転落して、ついに優菜はスクールから追い出された。
しばらくは苦しむかもしれないけれど、やがて春が来るように、少しずつ濃い涙も薄れて行くに違いない。
とぼとぼと梟荘に帰り着いた時、もう午後の二時になっていた。
急いで晩御飯の支度をしなくてはならない。夜勤に向けて少しでも体を休めておかなくては。
心を切り替えつつ、玄関に入ろうとして、あれっと思う。
門の横の郵便受けに、何かが入っているのが見えた。
ダイレクトメールだろうか。
取り出してみて、心臓がぱっと凍り付いた。
久々に見た。
赤文字の奇妙なハガキである。山崎たる子宛、おまえを憎む、おまえは見張られている、社会的に抹殺してやる、怨、怨!
消印を見て、最後のピースが当てはまったように思った。
ああ、やっぱりそうか。やっぱりそうなんだ、そうだと思っていたけれど、間違いなくやっぱりそうなんだ。
それは、沙織の母親がいる……県の、小さい町の名前だった。
一度、沙織の母から沙織宛てにものが贈られてきて、かわった地名だね、なんて読むんだろうと優菜と言い合っていたことがあったから、覚えていたのだ。
もちろん、沙織のママが、わたし宛てに、そんなおかしなハガキを出すはずはない。
ハガキの差出人は十中八九、間違いなく、やっぱり、早川芽衣なのだろう。そして早川芽衣は、沙織の母親に何らかの用事があって、出稼ぎ先のその町にまで出向いたのだ。
そして、そこからわたし宛の、この悪意に満ちた呪いのハガキを出した。
出向いた先で投函すれば差出人は分かるまい。そう思って芽衣さんはやっているんだろうけれど、バレバレだ。やっぱり、甘ちゃん、お嬢さんなのだ。
(馬鹿だなー。頭悪いんじゃねーの。くっだらねー。どんな面して作ったんだよ、このアホなハガキを)
もうわたしは、赤文字なんか見てもちっとも怖くなかった。逆に腹の中で、さんざん芽衣さんを馬鹿にして憂さを晴らしてやった。もっと送ってこればいいのに。そうしたらもっと笑えるネタが増える。そんなふうに、荒んだ心で考えた。
それにしても。
芽衣さんが、動いている。
(何を考えているんだろう……)
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
一か月ちょっとの願い
full moon
ライト文芸
【第8位獲得】心温まる、涙の物語。
大切な人が居なくなる前に、ちゃんと愛してください。
〈あらすじ〉
今まで、かかあ天下そのものだった妻との関係がある時を境に変わった。家具や食器の場所を夫に教えて、いかにも、もう家を出ますと言わんばかり。夫を捨てて新しい良い人のもとへと行ってしまうのか。
人の温かさを感じるミステリー小説です。
これはバッドエンドか、ハッピーエンドか。皆さんはどう思いますか。
<一言>
世にも奇妙な物語の脚本を書きたい。
たとえ世界に誰もいなくなっても、きみの音は忘れない
夕月
ライト文芸
初夏のある日、蓮は詩音という少女と出会う。
人の記憶を思い出ごと失っていくという難病を抱えた彼女は、それでも明るく生きていた。
いつか詩音が蓮のことを忘れる日が来ることを知りながら、蓮は彼女とささやかな日常を過ごす。
だけど、日々失われていく彼女の記憶は、もう数えるほどしか残っていない。
病を抱えながらもいつも明るく振る舞う詩音と、ピアノ男子 蓮との、忘れられない――忘れたくない夏の話。
作中に出てくる病気/病名は、創作です。現実の病気等とは全く異なります。
第6回ライト文芸大賞にて、奨励賞をいただきました。ありがとうございます!
よくできた"妻"でして
真鳥カノ
ライト文芸
ある日突然、妻が亡くなった。
単身赴任先で妻の訃報を聞いた主人公は、帰り着いた我が家で、妻の重大な秘密と遭遇する。
久しぶりに我が家に戻った主人公を待ち受けていたものとは……!?
※こちらの作品はエブリスタにも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
十年目の結婚記念日
あさの紅茶
ライト文芸
結婚して十年目。
特別なことはなにもしない。
だけどふと思い立った妻は手紙をしたためることに……。
妻と夫の愛する気持ち。
短編です。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
もう一度『初めまして』から始めよう
シェリンカ
ライト文芸
『黄昏刻の夢うてな』ep.0 WAKANA
母の再婚を機に、長年会っていなかった父と暮らすと決めた和奏(わかな)
しかし芸術家で田舎暮らしの父は、かなり変わった人物で……
新しい生活に不安を覚えていたところ、とある『不思議な場所』の話を聞く
興味本位に向かった場所で、『椿(つばき)』という同い年の少女と出会い、ようやくその土地での暮らしに慣れ始めるが、実は彼女は……
ごく平凡を自負する少女――和奏が、自分自身と家族を見つめ直す、少し不思議な成長物語
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる