ティッシュが足んない ~などとサキュバスの息子のムスコが意味不明な供述をしており~

よん

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第11章 敬意が足んねえ

敬意が足んねえ 4

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 油断させておいて一気に核心を突く……。
 ヨコヤ魔の死を告げておきながら、動揺させる隙も与えず、この俺に「オマエは偽物だ」と指摘しやがった。さすがだぜ!

 ……さあ、どうする?

 このままシラを切り通すか、それとも……。

 いや、一瞬でも絶句しちまったこの俺に選択肢なんてありゃしねえよ。
 どうせ殺されるなら、潔く散りてえ。

「……いつわかった? 俺が”僕ちゃん”じゃねーってことを?」
「今だよ」
「嘘つけよッ! そんな筈あるワケね……ま、まさか、テメー、鎌かけやがったなッ?」
「正解」
「畜生! 今すぐテメーをブッ殺してやりてえ!」

 俺の豹変ぶりに小園だけが驚いている。
 いいねえ、その新鮮なリアクション。白衛門や黒リータの味気ない反応だけじゃ、こっちも本性晒した甲斐ねーからな。

 俺は机上に置いた統治の王冠クラウンを慌てて手元に戻すと、勢いよく立ち上がって吼えまくる。

「ああ、確かに俺はこれまでの拓海じゃねーよ! だが、偽物でもねえ! ”僕ちゃん”と一緒にテメーの母乳を飲んでここまで育った紛れもねえ本物だ!」
「そういう意味ではな。だが、私の拓海はそのような品のない口の利き方はしない。よって、私はオマエを我が子だとは認知しない」
「知ったことか! 俺だってテメーを母親だなんて思いたくねーよ! この場でその悪趣味なドレス引き裂いてレイプしてやりたいぜ!」
「殺すかレイプかどっちだよ? できるなら何でもいいからやってみろ、このチンピラが。言っておくが、オマエは私に指一本触れることさえできない。逆に私は指一本触れることなくオマエを滅することができる。つけ加えておこう。そんな魔具など、私には何の役にも立たんぞ?」

 今まさに統治の王冠クラウンを戴こうとした俺は、咲柚のその言葉だけで動きを止められる。

「種主様、ここは某にお任せくだされ」

 白衛門が俺の前に盾となるが、咲柚は不敵な笑みを浮かべることさえしなかった。

「下がってろ。最弱サキュバスすら倒せん木偶の坊に何ができる? オマエら、もう少し落ち着け。私は貴様――偽拓海を殺すつもりはない」

「え……?」

「当然だろ? オマエの中には本物の拓海がいるんだ。偽物のオマエがどこの誰だかわからんが、どうせ誰かに転生の実を食わされたんだろう? ならば、オマエの体内にあるその転生の実がどうにかなるまで手出しはできないのだ」

 こ、これはもしかして助かる流れか?
 いや、また安心させときながら落胆させるパターンかもしれねえ。

「俺を殺さねーなら、ここに招いたテメーの真意は何だ?」
「その答えは後回しだ。オイ、偽物。オマエはその統治の王冠クラウンを使って何がしたい?」

 俺はヘッと自嘲する。

「今になって、それを語ったところで何になる? どのみち俺はテメーに殺されるかテメーの傀儡くぐつになるだけだろうが?」
「人間界と低級魔界の統一構想……オマエはこれに乗らないのだな?」
「乗るワケねーだろが! 第一、テメーの言う本物拓ちゃんだってその計画には懐疑的なんだぜ? なあ、咲柚……」
「咲柚”さん”、な?」
「うるせーよ! どこの世界に母親を”さん”付けさせる親がいる?」
「少しはいるだろう。母親に欲情する息子がいるように。……さあ、言え。オマエの目的を。場合によってはそれを認めてやってもよい」
「信憑性に欠けんだよ。俺の野望を認めたところで、テメーにはどんなメリットがあるってんだ?」

 咲柚はニヤッと笑って、この俺に近づく。
 だが、その間には俺の用心棒が大きく立ちはだかっている。……白衛門、どう出る?

「偽拓海」
「偽って言うな! 何だよ?」
「オマエの大切なこのデカブツ、目障りなんで今すぐ破壊していいか? マジでやるからな?」

 ……チッ!

「白衛門、下がってろ」
「なれど……」
「待ってろって言ってんだ。悔しいが、俺達が相手にするにはレベルが違い過ぎんだよ。俺が覚醒した暁にはオメーを今よりもっと強くチューンナップしてやっから」
「フ、フフフフフッ!」 

 咲柚め、そんなに俺の言ってることがおかしいのかよ! 
 気に入らねえ! 貴婦人みてえに手の甲で口元隠しながら笑いやがって!
 今に見てろ。
 俺を殺さなかったこと、いつか後悔させてやるからな!

 命令通り白衛門が俺の背後に回ると、咲柚はいよいよ目と鼻の先まで距離を詰め、そして俺の頬をスリスリ撫でやがる。

「私は拓海の復活を信じている。偽物が拓海を牛耳っている今のように、いつの日か本物がこの体を取り戻すとな。……これ以上は手間取らせるな。それまではオマエを見逃してやると言ってるんだ。だから言え! 何を企んでいるのかを!」

 気づけば、俺は夢魔に頬をつままれている。釘のように尖った指先で。
 咲柚の瞳は青白い光を発し、俺を恫喝する口からは肉食獣のような鋭い牙が生えていた。

 さっきまでの見目麗しい美女の面影はどこにもねえ。
 これは素直に吐くしかねえな。
 さもねーと、このイカれた女は花子みたいに頭チョンパにしねーまでも、息子のムスコの亀の頭くらい平気でチョンパしちまいそうだ。

「……と、統治したい世界がある。ここでもねえし低級魔界でもねえ。俺が元いた世界とも違う。ただのお伽話だと思ってた。だがよ、そこは間違いなく存在していたんだ。群雄割拠――多島海アーキペラゴに生きた島を軍艦に改造して覇権を争う世界だ。俺はそこで……乱世の海を統べる魔王になりたいんだよ」

「ほう」

 一瞬で元の咲柚へと戻ると、再び頬を優しく撫でながらこう言った。

「私はサタンが憎い。生まれてこの方、永遠に反抗期だ。……拓海、オマエにもその反抗期が必要だよ。多島海アーキペラゴの魔王、悪くないな。やれ」


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