ティッシュが足んない ~などとサキュバスの息子のムスコが意味不明な供述をしており~

よん

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第6章  ダンジョンが足んない

ダンジョンが足んない 3

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 夕食を済ませた僕はサキュバスを待つ。当然、リップアーマーなしで。
 咲柚さんに言われたから仕方なくね。……今日と明日の間にサキュバスが出て来なきゃ、堂々と言い訳できるんだけどな。

 コンディションは最悪だった。

 この日、僕はまだ午前中のティッシュ二箱しか消費してない。
 半日でティッシュ二箱……普通の男ならまずあり得ない驚異的な数量だろう。
 ヘタしたら、白いのに混ざって途中から赤いのが出ちゃうかもしんない。
 ……よいこのみんなはマネしないように。
 僕だからできるんだ。何の自慢にもなりゃしないが。
 
 この僕には半分しか人間の血が混ざってない。
 ハーフ・インキュバス……外見も能力もほぼ人間なのに、やたら精子の生産能力だけが異常発達してる。たかがティッシュ二箱じゃ本来ならば物足りない。

 そこの部分だけ夢魔って誰得だよ?

 精子工場、じゃなくて製紙工場……何うまいこと言ってんだ! ティッシュメーカーは喜んでも僕には空しさしか残らない。同時にお小遣いも残らない。
 とはいえ、低級魔界で育ち、ハーフ・サキュバスとウハウハな毎日を過ごせていたら幸せだったのか?

 人間界で今まで生きてきた僕には、それも違うと言える。

 かすかな記憶しかないけれど、父さんと咲柚さんのラブラブぶり見て育ったからね。幼いながら、ああなりたいと思ったもんだ。
 だから、咲柚さんのピュアラブ精神がこの僕にはシッカリ受け継がれてる。
 この世にたった一人だけのために、僕の白いのをタップリとっておきたい……何かコレもまた違うな。表現の仕方がマズイだけか。
 
 そんなワケで、今の僕は超ヤバイ。
 低級魔界のコンビニのトイレで、クリェーシェルさんにほっぺつつかれた時より危険な状態だ。
 なのに、今は溜まりに溜まった白い軍団を解放する気分にはなれない。

 望海ちゃんの手紙のせいだ。

 あの”しこしこ見せろ”がいまだに重く圧し掛かる。
 あの単純な文面は何かと深いし、僕にとっては哲学書に等しい。とてもエロい気分にはなれない。
 猫助の「あたしでシコシコしてみるにゃん?」とは似て非なる恐るべき攻撃力……望海ちゃんのはまず手紙――文字として残ってること、それに八年という歳月が熟成されてこの僕を苦しめるんだ。
 それでエロい気分がなくなるならいい。むしろ大歓迎だ。
 でも、僕の精子工場(これは合ってる)は相変わらずの24時間フル稼働フル生産で回り続けてる。
 やっぱ、咲柚さんの言った通りちょん切るしかないのか? 
 それとも工場の方を強制閉鎖……ダメだ。想像しただけで痛くなってきた。

 要するに、今の僕にはサキュバスを払い除ける自信が全くない。
 エロい気分じゃなくても、さすがにサキュバスの色香には簡単に負けてしまいそうだ。
 今からでもリップアーマー塗った方がいいのかな。
 それとも、無理やり白いの出しちゃうか? 
 
 不可能だ。
 
 あれは僕の中の小さな僕が硬く大きくメタモルフォーゼして初めて成立する現象だ。
 今の朝顔の蕾のようなモノをどんだけ触っていじってこねくり回したところで、溜まりに溜まった白いのは出てくれやしない。
 
 ……こんなの考えるだけでも不愉快なんだよな。
 夕食が済んで部屋に閉じこもってから、僕はずっと精子の行く末を考えてる有様だ。

 えぇい、こんな時こそダンジョンだ!
 ダンジョンに思いを馳せよう!


 低級魔界の孤児院の地下に隠された統治の王冠クラウンは、その世界を創造した悪魔が作ったアイテムだ。
 文字通り、それを頭に戴いた者が低級魔界を支配することができるらしい。
 誰もが過ごす孤児院の地下にそれが隠されてることもあって、その存在を知らない半悪魔はいなかった。
 そのお伽話のような試練に胸をときめかせて統治の王冠クラウンを狙う者は後を絶たなかったが、今の今まで成功した者も誰一人としていない。

 各フロアに一つずつ、パーティの一人を惑わす魔法……仕掛けたのは当然ながら悪魔だ。

 この”一人に一つずつ”というのが重要なポイントで、実は攻略の鍵ともなる……と、花子さんは言ってた。
 長い間、ハーフ・インキュバス、ハーフ・サキュバスがそこをクリアできないのは、彼らの弱点が一様だということ。

 彼らを誘惑するのは悪魔にとって実に容易い。
 ハーフ・インキュバスには美女、ハーフ・サキュバスに対してはイケメンを出せばいいからだ。

 例えば七人のパーティで、五人のハーフ・インキュバスと二人のハーフ・サキュバスという編成でダンジョンに挑んだとする。
 この場合、ダンジョンは地下七階だ。
 
 まず地下一階。

 最初に”一人に一つずつ”の誘惑に絶世の美女が登場する。
 ここで”一人に一つずつ”のトラップにかかるのは一人であるはずなのに、残る四人のハーフ・インキュバスまでが絶世の美女に惑わされ、そして命を落としてしまう。

 この段階で既にパーティーはハーフ・サキュバスの二人だけ。

 残すフロアはあと六つ。

 階段を下りた二人に待ち受けるのはイケメン貴公子。……パーティはこのフロアで早くも全滅してしまう。






「……そんな恐ろしいダンジョン、花子さんは本気で攻略するつもりなんですか?」

 真夜中の秘密の地下室で初めてダンジョンの話を聞いたあの時、花子さんは自信を持って僕にこう答えた。



「私だからできるんです。あと、猫助さん……それに、もしかしたら拓海様も」



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