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第5章 友達が足んない
友達が足んない 4
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釈然としないながらも、咲柚さんは話を続ける。
『聞いてると思うが、リップアーマーの材料は低級魔界でしか手に入らないようにしている。なので、今回の一件は単なる殺人事件では済まされない。これは人間界にとって由々しき事態なのだ』
手に入らないようにしている……?
いや、そこんとこは聞いてなかったぞ。
「咲柚さん。ちょっと今んとこのニュアンスが微妙に引っ掛かったんだけど……」
『何がだ?』
「リップアーマーの材料って、もしかして咲柚さんが設定して決めたの?」
『ああ。地下室に黒くて大きな装置があっただろう? アレに材料を覚えさせた。人間界で手に入れられん物をあえて選んだのだ。だがな、低級魔界での蜂蜜や蜜蝋、それにホホバオイルも所詮は副材でしかない。肝心なのは精油的なモノだよ』
精油――エッセンシャル・オイル。
「つまり、花子さん達のニオイ?」
『そう。むしろそれだけでもいい。だが、そのニオイをどうやって大勢の人間に振り撒ける?』
「さあ……?」
『少しは考えろ。結局、今のようにリップクリームにニオイを染み込ませて流通させる方法が一番手っ取り早いんだ。私含めて夢魔はまず唇を狙うしな。これは衆三郎のアイデアだよ』
「父さん……さすが化学者」
『言っておくが、化学はあまり関係ないからな? その視点を脱却せん限り、人間界はいつまで経っても独自の夢魔払いは作れないだろう。衆三郎はそれに気づいて学会を離れ、そしてこの私と接触したのだ』
「え、ひょっとして今から父さんとの馴れ初め語り出すの?」
『そこ! 股間を膨らませない!』
「それが母親の言うことか! 膨らませるワケないだろ!」
それにたった今、五回目済ませたばかりだし。
『よく言う。母親の私をオカズにしてるクセに』
「…………切るよ?」
『まあ、待て。じきにテレカが切れるから。それに私はまだ肝心なことをオマエに伝えてない』
「……テレカって?」
『テレホンカード』
「何でそんな古いの持ってんだよ! ソレ、昭和に流行ったヤツだろ? 僕なんか現物も知らないし!」
『いいだろ? まだ公衆電話で使えるんだし。それより、オマエと馬鹿話してる時間はない。残り度数もわずかだ。今から言うから心して聞け』
「はいはい、どうぞ」
『私がそっちへ戻る間、リップアーマーは塗るな』
え?
『聞こえたか?』
「き、聞こえたけど……」
『じゃあな』
「ま、待ってよ! そんなことしたらサキュバスに襲われるかもしれないじゃないか?」
『かもな』
「『かもな』って気軽に言わないでよッ! もし僕がサキュバスとエッチしたら、僕は魔界に引きずり込まれるじゃないか!」
『引きずり込まれるのは生殖能力のある人間だけだ。ハーフ・インキュバスであるオマエに子種はない。弄ばれて終わりだから安心しろ』
「弄ばれたくなんかないし! それにもしそのサキュバスとエッチしたら、僕はその相手と結婚しなきゃなんないんだろ?」
『当たり前だ。私と衆三郎のピュアラブ精神を息子のオマエにも受け継いでもらう。それがイヤなら誘いを拒めばいいだけのこと。要はオマエの気持ち次第だ』
そう、僕がしっかりしてれば……サキュバスの誘惑に打ち克つことができたら……できるかな?
それはともかく!
「絶対ヤだからね! リップアーマーなしで夜を過ごすなんてさ!」
『今は塗ってるのか?』
「当然だよ。夜は一番危ないし」
『じゃあ、拭え。今すぐ』
「どうして?」
『オマエ、ティッシュペーパーの用途を知ってるか? それってザーメン専用のちり紙じゃないからな?』
「そんなのわかってるよッ! リップアーマーを取り除く方法じゃなくて、その理由を訊いてるんだ!」
『それは帰ってから話す。……いいか? これは命令だ。私がそこの屋敷を離れているのにも実はちゃんとした理由があるんだ。あ、もうテレカが切れる』
「咲柚さん、スマホ持ってんじゃん! どうしてそん…………」
切れた。
『聞いてると思うが、リップアーマーの材料は低級魔界でしか手に入らないようにしている。なので、今回の一件は単なる殺人事件では済まされない。これは人間界にとって由々しき事態なのだ』
手に入らないようにしている……?
いや、そこんとこは聞いてなかったぞ。
「咲柚さん。ちょっと今んとこのニュアンスが微妙に引っ掛かったんだけど……」
『何がだ?』
「リップアーマーの材料って、もしかして咲柚さんが設定して決めたの?」
『ああ。地下室に黒くて大きな装置があっただろう? アレに材料を覚えさせた。人間界で手に入れられん物をあえて選んだのだ。だがな、低級魔界での蜂蜜や蜜蝋、それにホホバオイルも所詮は副材でしかない。肝心なのは精油的なモノだよ』
精油――エッセンシャル・オイル。
「つまり、花子さん達のニオイ?」
『そう。むしろそれだけでもいい。だが、そのニオイをどうやって大勢の人間に振り撒ける?』
「さあ……?」
『少しは考えろ。結局、今のようにリップクリームにニオイを染み込ませて流通させる方法が一番手っ取り早いんだ。私含めて夢魔はまず唇を狙うしな。これは衆三郎のアイデアだよ』
「父さん……さすが化学者」
『言っておくが、化学はあまり関係ないからな? その視点を脱却せん限り、人間界はいつまで経っても独自の夢魔払いは作れないだろう。衆三郎はそれに気づいて学会を離れ、そしてこの私と接触したのだ』
「え、ひょっとして今から父さんとの馴れ初め語り出すの?」
『そこ! 股間を膨らませない!』
「それが母親の言うことか! 膨らませるワケないだろ!」
それにたった今、五回目済ませたばかりだし。
『よく言う。母親の私をオカズにしてるクセに』
「…………切るよ?」
『まあ、待て。じきにテレカが切れるから。それに私はまだ肝心なことをオマエに伝えてない』
「……テレカって?」
『テレホンカード』
「何でそんな古いの持ってんだよ! ソレ、昭和に流行ったヤツだろ? 僕なんか現物も知らないし!」
『いいだろ? まだ公衆電話で使えるんだし。それより、オマエと馬鹿話してる時間はない。残り度数もわずかだ。今から言うから心して聞け』
「はいはい、どうぞ」
『私がそっちへ戻る間、リップアーマーは塗るな』
え?
『聞こえたか?』
「き、聞こえたけど……」
『じゃあな』
「ま、待ってよ! そんなことしたらサキュバスに襲われるかもしれないじゃないか?」
『かもな』
「『かもな』って気軽に言わないでよッ! もし僕がサキュバスとエッチしたら、僕は魔界に引きずり込まれるじゃないか!」
『引きずり込まれるのは生殖能力のある人間だけだ。ハーフ・インキュバスであるオマエに子種はない。弄ばれて終わりだから安心しろ』
「弄ばれたくなんかないし! それにもしそのサキュバスとエッチしたら、僕はその相手と結婚しなきゃなんないんだろ?」
『当たり前だ。私と衆三郎のピュアラブ精神を息子のオマエにも受け継いでもらう。それがイヤなら誘いを拒めばいいだけのこと。要はオマエの気持ち次第だ』
そう、僕がしっかりしてれば……サキュバスの誘惑に打ち克つことができたら……できるかな?
それはともかく!
「絶対ヤだからね! リップアーマーなしで夜を過ごすなんてさ!」
『今は塗ってるのか?』
「当然だよ。夜は一番危ないし」
『じゃあ、拭え。今すぐ』
「どうして?」
『オマエ、ティッシュペーパーの用途を知ってるか? それってザーメン専用のちり紙じゃないからな?』
「そんなのわかってるよッ! リップアーマーを取り除く方法じゃなくて、その理由を訊いてるんだ!」
『それは帰ってから話す。……いいか? これは命令だ。私がそこの屋敷を離れているのにも実はちゃんとした理由があるんだ。あ、もうテレカが切れる』
「咲柚さん、スマホ持ってんじゃん! どうしてそん…………」
切れた。
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