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第3章 空間が足んない
空間が足んない 2
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クリェーシェルさんと二人きり……その予想に反して、何とヘンリーさんも僕がいる間はここに泊まると主張しだした。
まあ、クリェーシェルさんの情人ならば、そう言いだすのもわかる。早い話がヤキモチだ。
でも、四畳半に三人暮らすって、いくら何でも狭すぎやしないか?
「どうせなら、僕をヘンリーさんとこに泊めてくださいよ? それなら女性のクリェーシェルさんを巻き込むこともないし」
「そいつはいけねぇ」
「何で? ズボンを取りに行ける距離だからここから近いんでしょ?」
「うるせぇッ! 味噌汁で顔を洗ってとっとと出直しやがれぃ!」
「一体どっちなんですか? 『戻るな!』って命令したかと思えば『出直せ!』ってまたキレるし」
「細けぇこと気にしてんじゃねぇよ。こちとら気が短い性分なんでぇ。早ぇ話、来るなって言ってんだ。オレん家はここよりもっと小せぇからよ」
「何畳ですか?」
「畳みなんてシャレたモンねぇさ。ダンボールハウスでぇ」
……ヘンリーさん、路上生活者だったのか。確かにそこでお世話になるくらいなら野宿した方がいいかもな。
もういい。泊まる前提で考えるより、早いとこ三人の女の子を探そう。
「探す手立てはあるでしょう? だって彼女達の狙いはリップアーマーの原材料だってわかってるんだから、そこに行けばすぐ見つかりますよ?」
「あ、忘れてた!」
いきなり、クリェーシェルさんがポンと手を打った。
「アタシ、キミにソレ言いかけたところで、この人が突然来たからそのままほったらかしにしちゃった」
「ソレ?」
「うん。あのね、アタシ人間見たよ。バイト前だけど」
「えッ? ホントですか?」
クリェーシェルさんがバイト前に見たってことは、それは猫助ではない。
ついに来たか、第二のアブノーマル処女……って、さっきから偉そうに「処女処女」ってこの僕もガチガチの童貞じゃんか。
「どこで見たんですか?」
「朝さ、この窓開けたらいたの。……多分、今もそこにいるよ?」
「え、マジですか?」
「うん。だってそこがすごく気に入ってそうだったし。それにホラ、今も窓ガラスに影映ってる」
確かに何かの影がそこにある。
でも、クリェーシェルさんがそのコ見たのって何時間前だよ? いくら何でもね……。
「多分、人形とかじゃないですか?」
「そうかなぁ? ちゃんと動いてたよ。電柱にキスしてたし」
「……は?」
ヘンリーさん、まどろっこしくなったのか、
「えぇい! しのごの言ってねぇで、とっとと窓開けて見りゃいいじゃねぇか。……おい、クリ!」
ヘンリーさんに言われるまでもない。
三人同時に立ち上がり、クリェーシェルさんがガラリと窓を開ける。……いたッ!
(な、何だアレ……?)
幻覚だろうかと何度も目をこする僕、現実を受け入れられないヘンリーさんも絶句してる。
一度それを見てるクリェーシェルさんただ一人、「でしょ……?」という微妙なドヤ顔してみせる。
安アパートの二階に居を構えるクリェーシェルさん。
その窓を開けたすぐ目の前の電柱に、ピタリと張りつくセーラー服の眼鏡女子。
異様な光景だ。
しかも、恍惚そうな眼鏡さんのその表情……まるで恋してるみたい。
何に? まさか電柱?
だとしたら、彼女はオブジェクト・セクシャリティ――つまり、対物性愛者!
僕の中の小さな僕……ムスコセンサーはピクリとも反応しない。
間違いない。ターゲットだ!
僕はその姿から、眼鏡さんに”蝉女”の称号を授けることにした。
まあ、クリェーシェルさんの情人ならば、そう言いだすのもわかる。早い話がヤキモチだ。
でも、四畳半に三人暮らすって、いくら何でも狭すぎやしないか?
「どうせなら、僕をヘンリーさんとこに泊めてくださいよ? それなら女性のクリェーシェルさんを巻き込むこともないし」
「そいつはいけねぇ」
「何で? ズボンを取りに行ける距離だからここから近いんでしょ?」
「うるせぇッ! 味噌汁で顔を洗ってとっとと出直しやがれぃ!」
「一体どっちなんですか? 『戻るな!』って命令したかと思えば『出直せ!』ってまたキレるし」
「細けぇこと気にしてんじゃねぇよ。こちとら気が短い性分なんでぇ。早ぇ話、来るなって言ってんだ。オレん家はここよりもっと小せぇからよ」
「何畳ですか?」
「畳みなんてシャレたモンねぇさ。ダンボールハウスでぇ」
……ヘンリーさん、路上生活者だったのか。確かにそこでお世話になるくらいなら野宿した方がいいかもな。
もういい。泊まる前提で考えるより、早いとこ三人の女の子を探そう。
「探す手立てはあるでしょう? だって彼女達の狙いはリップアーマーの原材料だってわかってるんだから、そこに行けばすぐ見つかりますよ?」
「あ、忘れてた!」
いきなり、クリェーシェルさんがポンと手を打った。
「アタシ、キミにソレ言いかけたところで、この人が突然来たからそのままほったらかしにしちゃった」
「ソレ?」
「うん。あのね、アタシ人間見たよ。バイト前だけど」
「えッ? ホントですか?」
クリェーシェルさんがバイト前に見たってことは、それは猫助ではない。
ついに来たか、第二のアブノーマル処女……って、さっきから偉そうに「処女処女」ってこの僕もガチガチの童貞じゃんか。
「どこで見たんですか?」
「朝さ、この窓開けたらいたの。……多分、今もそこにいるよ?」
「え、マジですか?」
「うん。だってそこがすごく気に入ってそうだったし。それにホラ、今も窓ガラスに影映ってる」
確かに何かの影がそこにある。
でも、クリェーシェルさんがそのコ見たのって何時間前だよ? いくら何でもね……。
「多分、人形とかじゃないですか?」
「そうかなぁ? ちゃんと動いてたよ。電柱にキスしてたし」
「……は?」
ヘンリーさん、まどろっこしくなったのか、
「えぇい! しのごの言ってねぇで、とっとと窓開けて見りゃいいじゃねぇか。……おい、クリ!」
ヘンリーさんに言われるまでもない。
三人同時に立ち上がり、クリェーシェルさんがガラリと窓を開ける。……いたッ!
(な、何だアレ……?)
幻覚だろうかと何度も目をこする僕、現実を受け入れられないヘンリーさんも絶句してる。
一度それを見てるクリェーシェルさんただ一人、「でしょ……?」という微妙なドヤ顔してみせる。
安アパートの二階に居を構えるクリェーシェルさん。
その窓を開けたすぐ目の前の電柱に、ピタリと張りつくセーラー服の眼鏡女子。
異様な光景だ。
しかも、恍惚そうな眼鏡さんのその表情……まるで恋してるみたい。
何に? まさか電柱?
だとしたら、彼女はオブジェクト・セクシャリティ――つまり、対物性愛者!
僕の中の小さな僕……ムスコセンサーはピクリとも反応しない。
間違いない。ターゲットだ!
僕はその姿から、眼鏡さんに”蝉女”の称号を授けることにした。
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