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第3章 空間が足んない
空間が足んない 1
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いくら僕が泣いて喚いて駄々をこねようとも、出口がわからない以上、元の世界に戻ることは不可能だ。
現実を受けとめよう。
「じゃあ、この世界にいる人間を捕まえたら、出口を教えてくれるんですね?」
「あたぼうよ。こちとら嘘はつかねぇぜぃ」
そんなの雑作ない。
ここに住む住民のハーフ・インキュバスとハーフ・サキュバス、見た目は人間と変わんないとはいえ、どうせハーフ・サキュバスはクリェーシェルさんみたいにハレンチな格好してるだろう。
だから、そうじゃない女の子を捜せばいい。
ただ、ターゲットのうち、猫助以外はどんな人間なのかわからないのは厄介だな。
「でも、そんな深刻に考える必要もないと思うけどな。彼女達は目的が済んだら自分から人間界に帰ってく筈ですよ?」
「目的ってのはアレかい? 夢魔を追い払う何ちゃらアーマーの原材料をこっからちょろまかしていくってことだよな? そんなの、お天道様が許してもこのオレは許しゃしねえぜ! 盗人猛々しいとはこのことでぇ!」
リップアーマーの存在を知ってるんだ。
「それを命令してるのが咲柚さんですよ?」
「咲柚さんたぁ誰でぃ?」
ヘンリーさんに続き、それまで聞き役に徹してたクリェーシェルさんは「誰なの?」と訊いてきた。
「僕の母親です」
「ああ、レイチェフ様ね。……キミは自分の母親をそんな風に呼ぶの?」
「あの人がそう命令したんだから、僕はそれに従うまでです。……ところで、ここの住民はやっぱ人間を恨んでるんでしょうね?」
「いや、オレ達は別に恨んじゃいねぇよ。こちとら半分は人間の血が流れてんだからな。それに、人間界行って人間襲う権限なんざ元から与えられてねぇし。怒ってんのはインキュバスとサキュバスだぁね。ただ、この世界に自由に忍び込んで蜜蝋と蜂蜜とオイル盗んでく人間は忌々しいったらありゃしねぇや!」
なるほど、蜜蝋と蜂蜜とオイルがリップアーマーの原材料なのか。
そこで僕は一つの疑問にぶつかる。
「つかぬ事を伺いますが、ここの皆さんは魔法って使えないんですか?」
「魔法? 何ソレ?」
と、クリェーシェルさん。
「だって皆さんはインキュバスとサキュバスの血を継いでるんでしょう? じゃあ何か特殊能力とか持ってないと」
「だったら、キミは何か特別な事ができるの?」
白いのならいっぱい出せます、とは言わなかった。
「いえ、特に何も」
「ハーフ・インキュバスのキミがそうなら、アタシ達だってそうならない?」
「だってここ仮にも魔界でしょ? 魔界の”魔”って何です?」
「さあね? 色魔とか邪魔とか睡魔とか……そんなトコじゃない? そう言うアタシは魔性の女だし」
その程度の魔界かよ!
猫助の言った通り、確かにここはピンキリのキリだ。
「で、人間を捕まえるまでの僕の活動拠点てどこになるんです?」
「さあ? こことか?」
ここ? 四畳半で魔性の女が住むこの部屋に僕が居つくのか?
「あの……一応、僕ってこの世界の王子なんですよね? 城とまでは言いませんが、それなりの家ってないんですか?」
「ケッ! あるワケねえだろ、このスットコドッコイ!」
いきなりヘンリーさんがキレだした。
「今の今まで人間界でのうのうと暮らしてきた野郎のために家なんか用意できるか! いつ来るかもわからねぇってのによ!」
「……そうですね」
僕は当分、お色気ムンムンのクリェーシェルさんとこの狭い空間で暮らすことになる。
また白いの出しまくるぞ、こりゃ!
早急に三人の風変わりの処女を見つけなきゃ!
現実を受けとめよう。
「じゃあ、この世界にいる人間を捕まえたら、出口を教えてくれるんですね?」
「あたぼうよ。こちとら嘘はつかねぇぜぃ」
そんなの雑作ない。
ここに住む住民のハーフ・インキュバスとハーフ・サキュバス、見た目は人間と変わんないとはいえ、どうせハーフ・サキュバスはクリェーシェルさんみたいにハレンチな格好してるだろう。
だから、そうじゃない女の子を捜せばいい。
ただ、ターゲットのうち、猫助以外はどんな人間なのかわからないのは厄介だな。
「でも、そんな深刻に考える必要もないと思うけどな。彼女達は目的が済んだら自分から人間界に帰ってく筈ですよ?」
「目的ってのはアレかい? 夢魔を追い払う何ちゃらアーマーの原材料をこっからちょろまかしていくってことだよな? そんなの、お天道様が許してもこのオレは許しゃしねえぜ! 盗人猛々しいとはこのことでぇ!」
リップアーマーの存在を知ってるんだ。
「それを命令してるのが咲柚さんですよ?」
「咲柚さんたぁ誰でぃ?」
ヘンリーさんに続き、それまで聞き役に徹してたクリェーシェルさんは「誰なの?」と訊いてきた。
「僕の母親です」
「ああ、レイチェフ様ね。……キミは自分の母親をそんな風に呼ぶの?」
「あの人がそう命令したんだから、僕はそれに従うまでです。……ところで、ここの住民はやっぱ人間を恨んでるんでしょうね?」
「いや、オレ達は別に恨んじゃいねぇよ。こちとら半分は人間の血が流れてんだからな。それに、人間界行って人間襲う権限なんざ元から与えられてねぇし。怒ってんのはインキュバスとサキュバスだぁね。ただ、この世界に自由に忍び込んで蜜蝋と蜂蜜とオイル盗んでく人間は忌々しいったらありゃしねぇや!」
なるほど、蜜蝋と蜂蜜とオイルがリップアーマーの原材料なのか。
そこで僕は一つの疑問にぶつかる。
「つかぬ事を伺いますが、ここの皆さんは魔法って使えないんですか?」
「魔法? 何ソレ?」
と、クリェーシェルさん。
「だって皆さんはインキュバスとサキュバスの血を継いでるんでしょう? じゃあ何か特殊能力とか持ってないと」
「だったら、キミは何か特別な事ができるの?」
白いのならいっぱい出せます、とは言わなかった。
「いえ、特に何も」
「ハーフ・インキュバスのキミがそうなら、アタシ達だってそうならない?」
「だってここ仮にも魔界でしょ? 魔界の”魔”って何です?」
「さあね? 色魔とか邪魔とか睡魔とか……そんなトコじゃない? そう言うアタシは魔性の女だし」
その程度の魔界かよ!
猫助の言った通り、確かにここはピンキリのキリだ。
「で、人間を捕まえるまでの僕の活動拠点てどこになるんです?」
「さあ? こことか?」
ここ? 四畳半で魔性の女が住むこの部屋に僕が居つくのか?
「あの……一応、僕ってこの世界の王子なんですよね? 城とまでは言いませんが、それなりの家ってないんですか?」
「ケッ! あるワケねえだろ、このスットコドッコイ!」
いきなりヘンリーさんがキレだした。
「今の今まで人間界でのうのうと暮らしてきた野郎のために家なんか用意できるか! いつ来るかもわからねぇってのによ!」
「……そうですね」
僕は当分、お色気ムンムンのクリェーシェルさんとこの狭い空間で暮らすことになる。
また白いの出しまくるぞ、こりゃ!
早急に三人の風変わりの処女を見つけなきゃ!
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