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第2章  説明が足んない

説明が足んない 7

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「ここから魔界に行けるにゃん」

 四つん這いになった猫助が床下の隠し扉を開ける。……パンツ丸見えだし。

「拓海様……」
「ん?」
「スーニペ勃起したにゃんか?」

 僕は節分豆を一掴み、それを猫助のプリプリおしりにおもいっきり投げつけた。

「イタッ! な、何するにゃんかッ?」
「ワザと見せんなッ! それに”スーニペ”やめい!」
「あたし鬼にゃないにゃん!」
「鬼みたいなモンだろ! 僕の中の小さな僕を愚弄しやがって!」

 もう一掴みすると、危険を察した猫助は慌てて床下の階段を下りてった。
 おお、節分豆いいな。武器として十分に使えるじゃん。

 僕も猫助に続いて、地下室の更なる地下へと進んで行った。
 ダンジョンみたいになってんのかな。
 イヤイヤながらも、少しだけワクワクしだしたのは否定しない。ゲームみたいに魅力的な世界が僕を待ってたら、それはそれでいいかもね。



 ダンジョンなんてなかった。短い一本道を抜けて景色が広がる。
 最初に見えたのは、あろうことかだった。
 ……これが魔界?

「おい、猫助……」
「何にゃんか?」
「コレって屋敷の外に出ただけじゃないの?」

 猫助はノンノンノンと指を振る。

「ここは正真正銘の魔界にゃ。人間は今のにょころ、あたしとリップアーマーの原材料を取りに来た二人しかいにゃいにゃんよ」

 猫助も人間ぽくないんだけど。

「その中に僕は……やっぱり含まれてないんだね?」
「にゃん。むしろ、ここは拓海様のようなハーフ・インキュバスとハーフ・サキュバスしか住んでいにゃいのにゃん。そして、拓海様はここの王子様なのにゃん」
「でも、ここ魔界だろ? 普通のインキュバスとかサキュバス、それにサタンやベルゼブブとかもいるんじゃないの?」
「そんなヒエラルキー上位の悪魔がこんにゃとこにいるワケにゃいにゃん。サタンは魔王にゃんよ?」
「でも、僕のお爺ちゃんだぜ?」
「サタンに孫なんて腐るほどいるにゃん。それに、ここは魔界の中でもキリにゃんよ」
「キリ?」
「ピンキリのキリ。つまり、悪魔に隔離された最低居住区にゃん。人間の血が混にゃった半悪魔が暮らすスカみたいな世界にゃん」
「そのスカみたいな世界の代表がこの僕なんだな?」
「にゃん! スカ代表にゃん!」
「……なるほど」

 おもむろに節分豆の袋に右手を突っ込んだところで、猫助はピューッと逃げ去った。

「コ、コラ! 僕を一人にするなッ! オイ、待てったら!」

 ガチで行ってしまいやがった……。
 信じられない。豆如きで本気で逃げるか?


 さて、どうしよう……。

 
 今来た道を戻っても人間界には戻れないなら、ここから出口を探すしかない。
 猫助を見つけるのが一番いいけど、他にまだ二人、この世界に人間がいるんだよな。人を愛せない処女が……。

 いや、考え方を変えよう。
 そのコ達よりも同族に出会う確率の方がはるかに高い。
 もしも僕が本当にここの王子ならば、ここの民はそれなりの歓迎はしてくれるだろうし。

 とりあえず、目の前のコンビニに入ろう。
 ハーフ・サキュバスの店員さん、ムチャクチャの美人だし。
 
 ティッシュ、一瞬でなくなっちゃうな。



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