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告白
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♀「山田君、私に用って何かしら?」
♂「……先生。放課後に呼び出してすみません」
♀「悩み事? だったら、遠慮なく何でも仰いなさいな」
♂「では、勇気を出して言います。先生、僕と恋人になってください」
♀「あら……。驚いたわ。山田君が私のことをそんな目で見ていたなんて」
♂「僕だって驚いています。まさか、初恋の相手が一回り年上の女性だなんて屈辱です」
♀「ちょい待ち。……山田、一応は私に告白してるんだよね? 屈辱って……自分で何言ってるのかわかってるの?」
♂「ええ、わかってますよ。でも仕方なかったんです。ここは男子校だし、異性は学食のおばちゃん軍団しかいませんからね」
♀「消去法かい」
♂「無論です」
♀「無論! ……もう一度確認するけれど、山田は私に恋人になってほしいんだよな?」
♂「渋々ね」
♀「テメー、何でさっきから上から目線なんだ? 立場考えろ」
♂「僕だって嫌ですよ。できれば、こんな年増じゃなく同年代の女の子に告ってみたかった」
♀「何で私、いきなり教え子に呼び出されて普通にディスられてる? だったら、今からでもそうすればいいじゃないか。私、帰るから」
♂「先生、待ってください」
♀「何だよ?」
♂「返事がまだですが」
♀「脳ミソお花畑アハハウフフ状態だな。この展開で『イエス』と答えると思うか? こちとら年増呼ばわりされてんだぞ」
♂「あれ、もしかして照れてる?」
♀「照れてねーし、どうして距離が縮まってんだよ! ノーに決まってるだろ。そもそも常識的に考えて”教師と教え子”が付き合えるわけないじゃないか」
♂「じゃ、先生。今すぐ辞表を提出してください」
♀「どんな思考回路してんだ! 何で私が教師を辞めなくちゃならない?」
♂「”教師と教え子”がマズイんでしょう? だったら、今すぐ”居候とドラ息子”で二人の明るい未来を築いていきましょう」
♀「最悪な関係性だな。そして私は山田家へ世話になるのか。オマエの明るくておめでたい頭の中では」
♂「ちょうど家政婦に空きができたので」
♀「普通に求人出せよ、ボンボンめ! オマエ、さっきから私をからかって楽しいのか?」
♂「とんでもない。本気で告白してるんです。ただ、初めてのことなのでどう言っていいのかわからなくて」
♀「だったら、『僕が卒業するまで待ってください』とか言えよ」
♂「それはあり得ない」
♀「何故?」
♂「だって、その頃には先生、ますますババアになってますやん」
♀「ますますって何だァッ! あと、語尾がいきなり大阪弁!」
♂「先生、妹がいますよね?」
♀「話が飛んだな。……いるけど?」
♂「右の顎に小さなホクロがある」
♀「そうだよ。よく知ってるな」
♂「あまり存じ上げてないです。先生より7つ下で音大の大学院に通っていて、来春にウィーンへ留学が決まってる一昨日ミディアムストレートに変えたばかりの妹さんのことは、あまり存じ上げてないです。スマホのストラップはキュウリを抱えた白いカッパ。非売品で一週間前にネットオークションで落札。よく存じ上げない」
♀「怖い怖い怖い怖い怖いッ!!!!! 存じ上げ過ぎて何かキモイんだけど!」
♂「怖くもキモくもないですよ。実は先生じゃなく、僕は妹さんのことが好きなんです。名前知らないけど」
♀「そこまで知ってて名前知らないのかよ!」
♂「教えてもらっていいですか?」
♀「ヤダね! 山田、マジキモイよ! 大体さ、本気で妹が好きなら最初から妹に告白しろよ。どうして私に声かけた?」
♂「”将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”の精神です」
♀「私は馬か!」
♂「その馬面と掛かってます」
♀「どこも掛かってねーよッ! 生まれてこの方、自分が馬面だなんて思ったこともねーわ!」
♂「それはまた随分と自意識過剰ですね」
♀「”自意識過剰”の使い方がおかしいって! 『私、女優の○○に似てると思うの』『先生、それは自意識過剰ですね』ならわかるよ? 馬面否定しただけなのに『自意識過剰ですね』は絶対におかしい!」
♂「先生、何だかんだ言って僕達、馬が合いますね」
♀「”馬”で括るな! もういい! 私はこれ以上、山田と喋ってる暇なんてないんだ! 金輪際、授業中以外は私に話しかけないでくれ! いいな?」
♂「……先生」
♀「何だ? 急にしおらしい素振りを見せても駄目だからな」
♂「今の命令、この僕には”馬耳東風”若しくは”馬の耳に念仏”ですよ」
♀「その”馬シリーズ”やめぃ!」
♂「わかりました。”馬シリーズ”はやめますから、その代わり……お願いがあります」
♀「”その代わり”の使い方も微妙におかしいけどな。言ってみろ」
♂「名前を教えてください」
♀「しつこいな! だから直接、本人に訊けって言ってんだろ!」
♂「訊いてます」
♀「……は?」
♂「先生の名前は何ですか?」
♂「……先生。放課後に呼び出してすみません」
♀「悩み事? だったら、遠慮なく何でも仰いなさいな」
♂「では、勇気を出して言います。先生、僕と恋人になってください」
♀「あら……。驚いたわ。山田君が私のことをそんな目で見ていたなんて」
♂「僕だって驚いています。まさか、初恋の相手が一回り年上の女性だなんて屈辱です」
♀「ちょい待ち。……山田、一応は私に告白してるんだよね? 屈辱って……自分で何言ってるのかわかってるの?」
♂「ええ、わかってますよ。でも仕方なかったんです。ここは男子校だし、異性は学食のおばちゃん軍団しかいませんからね」
♀「消去法かい」
♂「無論です」
♀「無論! ……もう一度確認するけれど、山田は私に恋人になってほしいんだよな?」
♂「渋々ね」
♀「テメー、何でさっきから上から目線なんだ? 立場考えろ」
♂「僕だって嫌ですよ。できれば、こんな年増じゃなく同年代の女の子に告ってみたかった」
♀「何で私、いきなり教え子に呼び出されて普通にディスられてる? だったら、今からでもそうすればいいじゃないか。私、帰るから」
♂「先生、待ってください」
♀「何だよ?」
♂「返事がまだですが」
♀「脳ミソお花畑アハハウフフ状態だな。この展開で『イエス』と答えると思うか? こちとら年増呼ばわりされてんだぞ」
♂「あれ、もしかして照れてる?」
♀「照れてねーし、どうして距離が縮まってんだよ! ノーに決まってるだろ。そもそも常識的に考えて”教師と教え子”が付き合えるわけないじゃないか」
♂「じゃ、先生。今すぐ辞表を提出してください」
♀「どんな思考回路してんだ! 何で私が教師を辞めなくちゃならない?」
♂「”教師と教え子”がマズイんでしょう? だったら、今すぐ”居候とドラ息子”で二人の明るい未来を築いていきましょう」
♀「最悪な関係性だな。そして私は山田家へ世話になるのか。オマエの明るくておめでたい頭の中では」
♂「ちょうど家政婦に空きができたので」
♀「普通に求人出せよ、ボンボンめ! オマエ、さっきから私をからかって楽しいのか?」
♂「とんでもない。本気で告白してるんです。ただ、初めてのことなのでどう言っていいのかわからなくて」
♀「だったら、『僕が卒業するまで待ってください』とか言えよ」
♂「それはあり得ない」
♀「何故?」
♂「だって、その頃には先生、ますますババアになってますやん」
♀「ますますって何だァッ! あと、語尾がいきなり大阪弁!」
♂「先生、妹がいますよね?」
♀「話が飛んだな。……いるけど?」
♂「右の顎に小さなホクロがある」
♀「そうだよ。よく知ってるな」
♂「あまり存じ上げてないです。先生より7つ下で音大の大学院に通っていて、来春にウィーンへ留学が決まってる一昨日ミディアムストレートに変えたばかりの妹さんのことは、あまり存じ上げてないです。スマホのストラップはキュウリを抱えた白いカッパ。非売品で一週間前にネットオークションで落札。よく存じ上げない」
♀「怖い怖い怖い怖い怖いッ!!!!! 存じ上げ過ぎて何かキモイんだけど!」
♂「怖くもキモくもないですよ。実は先生じゃなく、僕は妹さんのことが好きなんです。名前知らないけど」
♀「そこまで知ってて名前知らないのかよ!」
♂「教えてもらっていいですか?」
♀「ヤダね! 山田、マジキモイよ! 大体さ、本気で妹が好きなら最初から妹に告白しろよ。どうして私に声かけた?」
♂「”将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”の精神です」
♀「私は馬か!」
♂「その馬面と掛かってます」
♀「どこも掛かってねーよッ! 生まれてこの方、自分が馬面だなんて思ったこともねーわ!」
♂「それはまた随分と自意識過剰ですね」
♀「”自意識過剰”の使い方がおかしいって! 『私、女優の○○に似てると思うの』『先生、それは自意識過剰ですね』ならわかるよ? 馬面否定しただけなのに『自意識過剰ですね』は絶対におかしい!」
♂「先生、何だかんだ言って僕達、馬が合いますね」
♀「”馬”で括るな! もういい! 私はこれ以上、山田と喋ってる暇なんてないんだ! 金輪際、授業中以外は私に話しかけないでくれ! いいな?」
♂「……先生」
♀「何だ? 急にしおらしい素振りを見せても駄目だからな」
♂「今の命令、この僕には”馬耳東風”若しくは”馬の耳に念仏”ですよ」
♀「その”馬シリーズ”やめぃ!」
♂「わかりました。”馬シリーズ”はやめますから、その代わり……お願いがあります」
♀「”その代わり”の使い方も微妙におかしいけどな。言ってみろ」
♂「名前を教えてください」
♀「しつこいな! だから直接、本人に訊けって言ってんだろ!」
♂「訊いてます」
♀「……は?」
♂「先生の名前は何ですか?」
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