イルカノスミカ

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エピローグ

エピローグも金曜日

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 ああ、おなか空いたと、腹を押さえながら潮田玲が天を仰ぐ。
 もうちょっとの辛抱だよと、山崎美智子が玲の頭を撫でて慰める。
 二人とも紫色の鉢巻を外して、ダルそうに仰け反って座っている。
 背後の巨大パネルには、薄気味悪いマスクマンが紫団の守護神的に腕を組んで
どっしり構えている。体育祭実行委員会の力作だ。

 絶好の秋晴れの最中、小田原東高校の体育祭は着々と進行していく。

「前半のプログラム、あと幾つだっけ?」
「知んない。あ~あ、いつもこの時間になったら朝食ちゃんと摂らなきゃなあって後悔すんだよね。……朝になったらいつも忘れるんだけど」

 そんな二人を「コラ」と、紫色のポンポンで叩く長身の深田佳織。

「あ、カオリン。チアコスだあ! ポニーテール激カワ!」
「ホントだ! パープルのシュシュも超キュート!」

 振り返った玲と美智子があからさまに褒めまくるも、佳織はふくれっ面のままで「アンタら、そろそろ鉢巻つけときなよ」と注意する。

「もうすぐ応援合戦が始まるんだからさ」

 佳織のその言葉に「あッ!」っと、美智子は感嘆の声を上げる。

「玲ちゃん! 確か応援合戦が済んだらお昼の時間だよ!」
「マジでぇッ?」

 お気楽な二人とは対照的にとことん不機嫌な佳織。
 自分が応援団に選ばれたことをいまだに納得していない様子だ。

「全く、二人とも呑気でいいよね……。集団の中でテキトーに声出してりゃいいんだからさ。午後の応援なんて、あたしソロのダンスあるんだよ? あ~、今から気が重いって」

 けれども、二人の頭は既にお昼ごはんでいっぱいだった。

「イルのお弁当、超楽しみだね? 本場のスペイン人シェフが作るスパニッシュオムレツが食べられるんだよ!」
「ソレは大体想像つくけどさ。ボカディージョって何だろね? 玲ちゃん、聞いてる?」
「サンドイッチって言ってたよ。……他にもいろいろあるって」
「おシャレだなあ。ママの握った鮭おにぎりが何だか不憫に思えてきたよ」
「おい、鉢巻……」

 盛り上がる二人に呆れる佳織。こっちはお昼どころじゃないってのに……。
 今は何を言っても無駄だとあきらめる。
 もういいや。やるしかない!
 イルたんにもらった誕プレ――お守り代わりのシュシュ、あたしがあげたのと色違いのやつ……これさえあれば何とか乗り切れるって!

「あれ、そう言えばさ……イルたんどこよ?」
「え?」

 佳織のその発言に、玲と美智子が我に返る。

「ああ……。多分だけど、この後やる部対抗リレーに出るんじゃないの? 去年も出てたし。ほらほら、あそこに水着のコが控えてんじゃん?」
「どれどれ……」

 佳織に続いて、玲と美智子がトラック内にいる様々な格好をした運動部の男女に目を移す。
 確かに、その一群の中に水着の女子がいたが、どう考えてもそれはイル――瀬戸入果ではなかった。

「全然違うじゃん。背ぇ低いし、眼鏡だって掛けてるもん」
「あれ、七組の斎藤さんだよ。……背は低いけど胸けっこうあるよね? 制服じゃわかんなかったけど」

「ホントだ。イルとは似ても似つか……ん? あ、あああああああああああああああああぁ――ッ!」

 思わず大声を出してしまった玲。
 美智子と佳織がその指先を辿る。
 二人揃って大声を出したと同時に、スターターの鳴らした号砲でそれは打ち消されてしまった。




 赤団の応援席の群れに、緑色の鉢巻をしたミディアム・ボブの緒川美鈴が人を押し分けて入ってくる。
 周囲の冷ややかな視線も何のその。
 美鈴は水泳部キャプテンの近藤紀子の姿を見つけると、大きな声で「ノン様!」と叫ぶ。

「え?」

 振り返った紀子は美鈴を見るや瞬時に真っ赤になって「ちょっ……こ、こんなとこに来ちゃダメだよ!」と注意する。

 けれども、興奮状態の美鈴は紀子の両肩を掴んで揺すりながら「イル、どうしちゃったの?」と鬼の形相で訊く。

「は? イルたん……? な、何かあったの?」
「それをあたしが訊いてるの! ほら、見てみなよッ!」

 すごい剣幕で美鈴が部対抗リレーで沸き立つグラウンドを指さす。

「イルたん? え、出てるの?」

 紀子には何の事だかサッパリわからない。
 今年の部対抗リレー、水泳部は男子の柿谷と斎藤景子の二人が出場することになっている。
 入果は去年出てるし、それに右肩が万全ではないので無理はさせられない。

「いるワケないじゃん。紫団の応援席に……い…………う、嘘だぁ……?」

 いた。
 紀子は我が目を疑ったが、そこには間違いなく入果が一競技者としてグラウンドの中に存在していた。

 しかもダントツの最下位だ。
 無理もない。
 バトン代わりに畳一畳持って走っているのだから。

 しかも見慣れぬ柔道着姿で。

「み、美鈴……どうしてイルたん、柔道着なんて着て走ってるの?」
「だ・か・らぁ! それ訊きにわざわざここまで来たんだってば! て……まさか、ノン様も知らなかったってオチ?」
「し、知らない知らないッ! 全然知らないよ!」

 まさかと思う。
 あたしがイルたんの首絞めたりしたから?
 だから水泳部辞めちゃった?
 でも、あれから何日経った?
 そんなこと、いつまでも根に持つコじゃない。

 それに、どうして柔道部なの……?

 イルたんは変わった。
 土日の練習は家庭の事情で休んだけども、今週からイルたんはあらゆる迷いをふっ切ったように明るくなった。
……全然知らなかった。両親の離婚でずっと悩んでたなんて。

 イルたんの右腕はまだ治ってない。
 でも左腕だけのクロールであのコは今週、とても幸せそうに泳ぎ続けてた。
 何かを掴んだんだ。
 だから、あたし達にあんないい笑顔を見せてくれてたんだね。
 だから水泳部を辞めるはずがない。
 柔道部が危機的状態なのは知ってる。
 部対抗リレーに出るメンバーさえままならないことも……。
 だからイルたんが柔道部を助けた?

 助けただけなの……?

 どうして柔道着?
 どうして水着じゃないの?

 まさか……イルたん、あたし達の元から離れたりしないよね?
 大好きな水泳を辞めたりしないよね?
 一緒に肩を治そうって約束したもんね……。

 大丈夫だ。きっと……。

 紀子は唇を噛みしめ、奮闘する入果の姿を食い入るように見守った。



 部対抗リレーはこの日一番の盛り上がりを見せている。
 アトラクション競技なので各団に得点こそ入らないものの、それでいて応援には激しい熱がこもっている。
 特に畳を持ってシンガリを走る女生徒には、笑いと歓声が集中している。
 けれども、入果と同じ水泳部の紀子や美鈴にとって、その姿は信じられないし到底認めたくない光景だった。

「イルたん……畳なんか持って右肩大丈夫なの?」

 思わず呟く紀子。
 その彼女の肩にゆっくり触れる人物。


「イルなら大丈夫だよ、ノン様」


「え……?」

 驚いて振り返った紀子と美鈴。

「け、景子ッ?」

 赤団内がどよめく。
 突如現れた水着に赤縁眼鏡の女の子。背が低いわりになかなかの巨乳である。
 その姿に萌え死にする男達を無視して、眼鏡のブリッジに触れた景子はすかさず二人の仲間を後ろからギュッと抱きしめる。

「ねえねえ、どうして美鈴が赤団にいるの?」
「そ、それはあたしのセリフッ! アンタだって白団じゃ……てか、景子! アンタ、水泳部のアンカーじゃん! カッキーのビート板もらって走んないとダメなのにどうしてここにいんのさ?」

 美鈴の言う通りだった。
 既にトラックを一周走り終わった水泳部男子の柿谷が、バトンのビート板を渡すべき相手が急にいなくなってオドオド慌てふためいている。
 せっかく三番手の好位置につけていた水泳部だったが、次々と後続に追い抜かれてしまう。

「ほら、カッキー、景子のコト探してんじゃん! 早く戻んないとヤバイって!」
「柿谷はいいの。……まあ見ててよ。今から面白いコトが始まるからさ」
「え、面白いコト……?」
「そ」

 景子の含み笑いに半信半疑の紀子と美鈴は、再びグラウンドへと視線を戻した。




 各部は既にゴールしている。
 周回遅れ、ダントツで最下位の入果はようやく第四コーナーにさしかかる。

 ゴール前には入果の畳を待つ、柔道部主将の鷲尾。
 それに、ビート板を渡す相手を失ってしまった水泳部の柿谷。

 ここで何があったか、二人はいきなり小競り合いを始めた。
 
 柿谷vs鷲尾
 
 軟派と硬派の両極端な二人がこうして絡むのも珍しい。
 不穏な雰囲気に観衆はざわつき始める。
 そこに畳を持った入果がようやく走り終える。

 途端に鷲尾と柿谷は小競り合いをやめて、何と入果の前に同時に跪き、そして右手をゆっくり差し出した。
 まるで姫からのプロポーズの返事を待つ二人の王子のように……。

 観衆はようやく気づいた。
 これらは巧みに仕組まれた劇だということに。

 姫は果たしてどちらの王子を選ぶだろうか。

 拍手と笑いと歓声が、入果の次なる行動に注視している。

 入果は頭を抱えて悩んでいる。
 なかなかどちらも選ばない。
 放送部のマイクが迷える入果を焚きつける。

「さあ、瀬戸さん! 早くどちらかを選んであげてください!」

 入果は放送席に向かって、どっちも無理という肩をすくめるジェスチャー。
 すると、焦らされた観衆からは一斉に大ブーイング。
 入果はわかったわかったと手で制す。
 鷲尾と柿谷は手を出したまま、ひたすら入果の返事を待っている。


 緊張の一瞬……。


 柔道着姿の入果は、柔道部主将の鷲尾の手を握った。
 
 おおぉッというどよめき。
 しかし事もあろうに、入果は持っていた畳で喜ぶ鷲尾の後頭部に強烈な一撃をお見舞いした。まさかのどんでん返しだ。

 ここで爆笑、そして裏切った入果に対してまたも容赦ない強烈なブーイングが起こる。
 
 固唾を呑んで見守るのは紀子と美鈴。
 景子だけが薄らと笑みを浮かべている。

 一方、紫団の玲、美智子、佳織の三人は入果にブーイングをかますクラスメートに対して本気になって怒ってる。この三人に口で勝てる男子は一人もいない。

 友人達をヤキモキさせている渦中の入果。

 けれども、当人に怯む様子は全くない。
 それどころか大胆にも、何といきなり柔道着の白帯を解き、豪快にそれを脱ぎ始めたではないか。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ――ッ!

 この日一番の大歓声。特に男子。

 けれども、それはすぐに落胆へと変わる。
 煩悩丸出しの男達の期待も空しく、入果は柔道着の中にちゃんと競泳用の水着を着用していた。

 ここからは水泳部の入果に戻る。
 入果は柿谷からビート板を受け取って、二人は手を繋ぎながらラブラブぶりを見せつけるようにして、一緒にトラックを走り始める。

 できたてほやほやのカップルに、観衆からは冷やかしの声と盛大な拍手が送られた。

 けれども、ピクリとも動かない哀れ柔道部鷲尾にはそれ以上の激励の言葉が投げ掛けられる。

 どこからか「鷲尾」コールが起きる。
 放送部が更なるコールを要求する。
 よろめきながらも鷲尾はゆっくり起き上がった。
 そのいたいけな姿がグラウンドを囲む観衆の心をガッツリと掴んだ。
 今や、体育祭の主役は完全に鷲尾征二郎である。
 大鷲尾コールが巻き起こる中、ふらつきながらも蘇生した鷲尾は畳を持ってゆっくりトラックを走り出した。

 観衆は気づく。
 いつの間にか畳に貼られた布……そこに書かれたメッセージに、彼らは惜しみない拍手を送った。


『来たれ! 柔道部! 打倒! 水泳部!』


 気がつけば、紀子と景子と美鈴は赤団の応援席を飛び出して、グラウンドに向かって走っていた。


「みんなッ!」


 想定外の展開に、それまで鷲尾を持ち上げるためヒールに徹していた入果は驚きながらも三人に抱きついた。
 そして入果を含む四人は、何故か仲間であるはずの水泳部柿谷を蹴散らして一緒になってゴールした。

 爪弾きにされた柿谷は一人で畳を運ぶ鷲尾と合流し、何とその場の勢いで熱い抱擁のサービス……校内の一部腐女子を喜ばせている。
 入果のクラスメート、佳織もその一人だ。周囲を気にせずキャーキャー萌えまくっている。
 友達の急変にドン引きの玲と美智子、紫の鉢巻きを額に巻いて静かに席を離れていく。

 

 入果は満面の笑みで、このアトラクションの幕引きの瞬間をじっくりと噛みしめていた。


(何コレ? みんな最高のアドリブじゃん! ノン様、景子、美鈴……ついでに柿谷も友情出演ありがとう! あたし、水泳やっててよかった! どんなメダルや賞状よりも、みんなとワイワイやってる今の方がずっと輝いてるしずっと大事! 心の底からそう思えるよ!)

 右肩はまだ癒えない。
 相変わらず、大好きなバタフライは封印中。
 季節は完全に夏から秋へと移ってしまっている。

 やはり間に合わなかった。
 それでも、入果の心は一点の濁りなく澄み切っている。
 水ようかんの儀式で、彼女は苦しんだ家出部での葛藤を全て克服していた。
 失った自信を自分の手によって取り戻したのだ。

 そして、瀬戸入果は次なる段階へと足を運ぼうとしている。

 初めての経験……

(今夜、ワッシーに電話したら言うべきかな……)

 言おうよ! 

 ちょうど一週間前の金曜日、あの時みたいに勇気出してさ。
 もうね……言ったら負けとかそんなのどうでもいいじゃん。
 自分の気持ちを隠すより正直でありたい。

 
 だって、あたしはワッシーのことが大好きなんだから。



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