イルカノスミカ

よん

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木曜日

泥濘の木曜日 2

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 案の定、体育祭の予行練習は中止になった。
 帰宅部は嬉々として家路を急ぐ。
 掃除当番も超高速でゴミをまとめて教室を後にする。
 体育祭実行委員会は一部の人間を残して帰って行った。
 部活組……雨が関係ないバスケ部やブラバンなんかは平常運転。
 サッカー部は体育館下で筋トレかな?

 柔道部?
 アイツら晴れだろうが雨だろうがどっちにしろ帰るだろ。
 ワッシーは……どうするんだろ?
 一人で朝練出るくらいだから何かしらやるとは思うけどね。
 ひたすら受け身とか?
 よくわかんないけど。てか、まずは畳掃除しとけ!

 そして我が水泳部。
 屋内でも温水でもないただの平凡な県立高校プール。
 水温が下がろうと鳥肌が立とうとそんなの関係ない。
 雨が降っても降らなくても濡れることに変わりはないし。
 むしろ日焼けしないというメリットもある。
 背泳ぎの美鈴が「雨は泳ぎづらい」ってブーブー不平言うくらいで、雷鳴轟かない限り、あたし達は当たり前のようにプールへ入る。

 生理痛? 何ソレ? あたしら普通に泳ぐし。

 それなのに、水泳肩のあたしはまともに泳げない。
 プールに入ってプル、プッシュ、リカバリーの動きをゆっくり試したり潜水したりするだけ。
 あ、今週入って整骨院行ってないや。
 いろいろあって忘れてた。
 ……何か全然回復してない気がする。
 今だって水の中で動かすとかなり痛いし。
 あたしの不安な表情に気づいたのか、ゴーグル外したノン様がすぐさま近づいて「大丈夫?」と神妙な顔で訊いてくる。よく見てるな。

「んー、こんなもんでしょ」

 何でもないように振る舞ってるけど、内心すごく焦ってる。
 だって、居場所がないんだもん。どこにもね……。
 水泳やっててこんな気持ちは初めてだ。

「ノン様」
「何?」
「あたし、選手辞めてここのマネージャーやろっか? いい仕事するよ?」

 卑屈気味にそう言ったあたしに、ノン様はいきなり首を絞めてきた。

「怒るよ?」

 本気だ。目が吊り上がってる。
 勿論、あたしだって本心で言ったわけじゃない。
 でも、ノン様にしてみたらそれは冗談に聞こえなかったみたい。

「ぐ、ぐるじいいぃぃぃぃぃ……」
「もう弱音吐かない?」

 ウンウン頷くあたし。

「ホントに?」

 ウンウンウンウン頷くあたし。

「よし!」

 ノン様、やっとあたしから手を離す。

「イルたん、もう上がっていいから。今日はこれで終わり。また明日から少しずつ頑張って一緒に治してこうよ。……ね?」
「うん、そうする」

 苦しんでるのはあたしだけじゃない。
 少なからず、ノン様も心を痛めてるんだ。
 やっぱいい。ここは最高だ。

「ごめんね。先に帰るわ」

 セームをまといながらプールサイドのみんなに声をかける。
 男子からはお約束のブーイング。
 柿谷なんて中指立ててるし……。クラブ途中で抜けるからってそこまでするか? あたしがガイジンなら、アンタ今頃プールの底に沈んでるよ。
 仕返しに、あたしはワザと「羨ましいだろ」とおどけてみせる。
 フン!
 あたしからしたら、五体満足のアンタらの方がよっぽど羨ましいんだよ。
 一年達が心配そうにワラワラ寄って来る。

「あたしは大丈夫。アンタ達もちゃんとストレッチしてキレイなフォームで泳がないとこうなるよ。馬鹿力はダメだからね?」
「はい!」

 という素直な返事。
 ホントなら、言葉じゃなくこのコ達に実技指導してあげたいんだけどね。
 でも、あたしの水泳肩の原因は単なるオーバーユースかもしれない。
 肩は消耗品て言うし。
 あたしはキレイなフォームを誰よりも心掛けてたし、馬鹿力なんかで泳いだこともない。
 だからオーバーユースなら余計に始末が悪い。……早いとこMRI検査しなきゃいけないかな。
 プールの中の眼鏡なしバージョンの景子が複雑な表情であたしを見てる。
 ホントは練習終わった後に両親の離婚のことみんなに打ち明けようと思ってたけど、今はまだ練習中だし動揺して怪我させちゃうかもしんない。
 あたしが手を振ると、景子も手を振り返した。

     *

 シャワーを浴びて濡れ髪のままプールを離れる。
 傘をさしながらみんなの練習を遠巻きで見てると、そこに自分が含まれてない事実に何とも言えない疎外感がガツンとあたしを押し潰す。

 さてと、夜までどうしよう。
 この雨だし自転車はないし、そう遠くには行けない。
 今日は銭湯いいや。
 洗濯だけしとこう。お金もないし。

「おい、入果!」

 誰かがあたしを呼ぶ。
 何だ、二等兵……じゃなかった、山ピーじゃん。
 いつも見るボロボロのジャージ姿。
 この人の海パン姿ってずいぶん見てない。名ばかり顧問だから仕方ないか。
 あたしは渡り廊下の下まで逆戻り。

「何ですか?」
「練習はもう終わったのか?」
「あたしだけっす。ノン様がもう上がっていいって言ってくれたんで」
「……そっか」

 山ピー、そんなことどうでもいいってカンジであたしをじっと見る。

「なあ、オレに何か言うことないか?」
「好きです」
「マ、マジでッ? まさかの告白ッ? ちょ、ちょっと待てよ! こ、心の準備が……教師と生徒……ストライクゾーン的にも……ア、アリなのか?」

 ないって! 単なるツンドラの仕返しだって!

「アイスの中ではカリカリ君が好きです」
「……」

 真っ赤な山ピー、からかわれてちょっとムッとしてる。
 へぇ~、あたしなんかでも赤くなるんだ。少しかわいい。

「……で、他に言うことは?」
「特にありません」
「いやいや、あるだろ。……オレさ、今日昼飯食ってる時にいきなり木津川先生に言われたんだ。『いやあ、瀬戸も大変ですなあ』って。オレ、何にも知らないから『何がです?』って訊いたんだよ。そしたら木津川先生いきなりキレちゃってさ。職員室から生徒指導室に場所を移してそっから延々とガチ説教だよ。『アンタは瀬戸の担任で水泳部の顧問だろ! それでも教育者か!』って具合にさ。そこで初めていろいろ事情を聞いたんだ」

 ああ、それは悪いことしたな。
 でも、やっぱ山ピーには相談しづらい。

「てっきり校長先生かミユキ先生が言ってくれてるものかと……」
「校長ってああ見えて激務だからな。殆ど学校にいないし。朝の職員会議の時もすごいやつれてたぞ」
「それ、半分くらいあたしのせいかも。心配かけまくってるし」
「まあ、気にするな。歳のせいだろ。禁煙でストレスたまってるみたいだしな」

 山ピー、珍しくあたしをフォローしてくれる。

「火曜日の保健室でさ、加地先生が入果を預かるって言った時、オレもっとしつこく訊くべきだったんだよな。でも、もしかしたら女性特有の問題かもって一歩引いちゃったんだ。まあ、加地先生がついてるから安心だって丸投げした部分は否めないけど」
「山ピーのせいじゃないですよ。やっぱ、あたしから相談とか報告しなきゃいけなかったです。すいませんでした」

 あたしは本心で頭を下げる。

「いいよ、別に。オレ怒ってるわけじゃないから。ただ、オレに何かできることあるかなって思ってさ。そうだ! 腹減ってないか?」

 減ってないと言おうとした時、あたしはこの日何にも口にしてないことを思い出した。
 おなか空きすぎて感覚がおかしくなってる。

「今から何か食べに行きます」
「下校中の買い食いは禁止……て、今の入果は下校しようがないもんな。……あと一時間半くらいどこかで待てるか?」
「待つって?」
「それくらいでオレ上がれるからさ。入果に晩飯御馳走してやる」
「いえ、いいです」

 あたしは本気で辞退する。

「山ピー、安月給なのに。そんなお金あるならジャージでも新調してください」
「自慢じゃないが、ジャージは教師になって一度も買ったことがない。コレも真田先生のお古だぞ」
「ホントに自慢じゃないっすよ」
「金のことなら心配するなって。日曜のセンチュールステークス当てて懐に多少の余裕もあるし」
「……何ソレ?」
「馬だよ」

 馬?

「跳ね馬のコト?」
「確かそんな歌あったな。……競馬だよ、競馬。二十歳になったら教えてやる。じゃ、一時間半経ったら職員室に来い」

 勝手にそう決めて、山ピーは行ってしまった。
 強引だな。嬉しいけど。
 一時間半……ちと微妙かな。
 水泳部が練習終わって帰る頃くらいか。もっと早いか? 真夏じゃないし。
 どっちにしろ、ノン様の計らいで早く上がらせてもらったのに、みんなと顔を会わせるのはよくないよね。
 それに、正直これ以上先生達に気をつかってもらうのって気が重い。
 特に山ピー、お金なさそうだしさ。そういう人に限ってギャンブルしちゃうのって何で?
 学校に家出するって時点で十分に非常識なのに、ギャンブラーにごはんの面倒までみてもらうってどうよ? 
 特別扱いの好待遇……こんなの家出って言えやしない。
 とりあえず、学校を出よう。
 徒歩だと整骨院までけっこう距離があるけど、ノン様の気持ちに応えるためにもあきらめずに治療を続けようかね。

     *

 患部のアイシングとマッサージ……うん、いつも通りだ。

「綜合病院でMRI検査とかしてもらった方がいいですか?」

 歯がゆさのあまり、あたしは先生にそう訊いた。ガタイのいいおじさんだ。

「まあ、その前にレントゲンだよね。整形外科に通院するのも手だと思うよ。水泳肩もピンキリだから、ウチで治ってる患者さんもいるしそうじゃない人もいる。そこは瀬戸さん本人の判断に任せるしかないですよ」

 気長にここで治療を続けるか、レントゲン撮影して医師の診断を受けるか……。
 困ったな。
 親に相談しないと勝手に治療法も変えられない。保険証のこととかあるし。
 結局、こんなとこでもあたしは親の配下にいるんだ。

 診療費を払って外に出ると、外はもう暗くなっていた。
 小雨がパラパラ降ってる。
 濡れ髪がちょっと肌寒い。
 少しずつ秋の足音が聞こえる。
 もう寝る前のクーラーはいらない。
 自分の部屋を失った人間がそんなこと考える必要もないけれどさ。
 さすがにノン様達は帰っただろう。こんなに暗いんだもん。

 山ピーの指定した時刻まであと五分くらい。
 今から戻っても間に合わない。
 あたしは山ピーのケータイに電話する。
 けれど、あたしが誘いを断る前に山ピーが「ジョーカー引いちまった」と、悲痛な声で訴えてきた。

「ジョーカー?」
「デビルミユキに捕まった。すごい嗅覚だな。オレ何も言ってないのに、入果と晩飯行くのバレちまったぞ」
「御愁傷様です」
「もうダメだ。骨の髄までしゃぶられちまう。……入果、今どこだ? 学校の外なら車で迎えに行くぞ」

 あたしは笑いを噛み殺しながら居場所を告げた。
 ミユキ先生がいるなら安心してオゴってもらおう。



 夕食時より少し早い平日のファミレス、天気がよくないせいか順番待ちもなくスッと入れた。

「ランチメニューないの?」

 山ピー、最後の悪あがき。

「申し訳ございません。当店、ランチメニューは午後三時までとなっておりますので」
「Aコースのロイヤルステーキをレア、オニオンソースで。サイドはパンとコーヒー。グリルソーセージと海藻サラダ。食後にアサイーと洋梨のパフェを二つ」

 注文早すぎ! 殆どメニュー見てないし。

「瀬戸は?」
「あたしオムライス!」
「子供かよ」
「子供だもん。好きなんだからいいでしょ?」

 それに安いしね。サイアク、自分でも払えるし。

「もっと頼め。筋力強化に赤みの肉を摂取しろ」
「加地先生、偉そうに言わないでくださいよ! 払うのオレですよ?」
「山ピーは何にするの?」
「オ、オレは……えー、パンケーキ単品で」

 顔面真っ青の山ピー、頭の中でそろばん弾いてる。

「ボロネーゼ追加」
「ミユキ! どんだけ食うんだッ!」

 ウエイトレスが去った後、涙目の山ピーは横向いたまま何やらブツブツ呟いてる。
 あたしは山ピーに同情しながらミユキ先生に話しかける。

「旦那さんの晩ごはんはいいんですか?」
「メールしといた。サバ缶とか漬物あるし、適当に何か食うだろ。……今日はすまんな」

 すぐに昼のことだとわかった。

「いえ、たいした用事じゃなかったんで。いろいろ大変ですね?」
「よくあることだ。悩んで泣いて誰かに相談すれば少しは気が晴れる。問題なのは、それを自分だけで処理してしまおうとする人間だ。あのコも瀬戸も学校を頼ってくれた。心を閉ざした者まで我々は救えんからな」

 そんなもんかな。
 あたしは悩んでる側だからそこまで楽観視できない。

 出てきたメニューでテーブルはいっぱいになった。
 ミユキ先生は最初からそんなに食べるつもりじゃなかったみたい。
 小皿を三枚頼んで「みんなでシェアしよう」と言った。

「支払いもシェアしましょう?」
「悪いな。ちょうど今、USドルしかないんだ」
「何でいつもドル札持ち歩いてるんですかッ?」

 山ピーのシェア発言も聞き入れられることなく、食事は楽しく和やかに済んだ。
 最終的にミユキ先生が山ピーに女友達を紹介するということでケリがついた。
 その女友達にも食事御馳走してバイバイってパターンが見えてしまうのは、山ピーの教え子としては少し哀しい……。喋んなきゃいいオトコなのに。
 二人とも、あたしの家出には全く触れなかった。
 精神的に追い込まないよう配慮してくれてるんだろう。
 いよいよ明後日の朝までに結論を出さなくちゃならない。
 二人の優しさが逆に怖い。



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