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introduction

suckling

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 それから程なくして、オレとエリスは双子として生を享ける。

 順番通り、最初に産まれたオレが兄で、次に産まれたエリスが妹となった。
 一般的に少し前ならその逆だと考えられていたが、どのみち母胎の中で絶対神が”兄と妹”を定めたので、それを覆してまで弟になりたい理由はこれっぽっちもないし、エリスはエリスで妹キャラに妙な拘りがあるらしい。

 異世界転生か。

 予定外だろうが何だろうが、人間死んでしまったらおしまい……それでいいじゃないか。
 短命でそれが不本意な死であったとしても、バーミンガムで生まれ育ったハーキュリ-ズ・ブレイクという人生をオレは間違いなく全うしたんだ。
 生まれ変わって、別の人生をやり直すことにどんな意味がある?
 まして、そこが異世界って何だよ? こっちの了承も得ず勝手に事を進めるなんて納得いかないぞ。
 そうまでしてオレとエリスの人生をやり直させるんだ。
 これが単なる太陽達の気まぐれだとしたら絶対に許さないからな!

 とまれかくまれ、15歳で終わったオレとエリスの人生は再びゼロからリスタート。
 視覚・聴覚・知能はそのまま引き継がれたようだが、さすがに言語能力までは与えられなかった。そりゃいきなり喋ったら周囲が大騒ぎになるもんな。

 あと聴覚はそのままだけど、この世界の言語を習得してないので彼らが何を言っているのかサッパリわからない。
 ヘビに咬まれても死なないという誰得スキルよりもこっちを何とかしろよ、絶対神。

 隣を見ると、エリスが赤ん坊らしくホギャーボギャー泣いている。
 不自然なくらいなりきってるな。

 そうだ! 

 アイツはアニオタであると同時に、生粋のコスプレイヤーでもあるんだった。
 今は嬉々として赤ん坊キャラを満喫してるんだろう(実際、赤ん坊だけど)。
 オレと違って、この異世界転生を謳歌している様が少しだけ腹立たしい。

 さて。

 オレ達を囲んでいる面々はおそらく、家族かその親戚だろう。
 そうでなければ、医者か産婆かご近所連中と言ったところか。
 彼らの共通点、一つ目は何故か全員がヘッドバンドで額を覆っていること。
 色は様々だが、果たしてそれは何のためだろう?

 そしてもう一つ……その表情がことごとく死んでいる。
 察するに、オレ達はどうやら望まれて誕生した命ではないらしい。

 こっちだって同じだよ。

 そう言い返せないのが悔しい。

 だけども義務感からか、彼らはオレ達を育てる意思くらいはあるようだ。
 母親とおぼしき女がオレを抱き寄せ、いきなりポロンと乳房を出す……


 え?


 ちょ、ちょっと待ってッ!

 そりゃリアルな赤ん坊の時はおっぱいを飲んでいただろうけど、事情が違う。今のオレの知能は思春期真っただ中の15歳なワケで……

 触ったこともないのにいきなり吸乳って!!!

 あ、ダメだ!
 ヘンな想像はよせ、オレの前頭葉!
 ヤバイって! オレのが次第に赤ん坊らしからぬ形状になってきた!
 それを見てどよめく周囲。
 更には、いつの間にか泣きやんでるエリスがこれ以上ないくらい軽蔑のジト目……

 だってしょうがないだろ! 
 こんなの防ぎようのない、いわゆる”ラッキースケベ”(エリスに教えられた日本語)じゃないか!
 オレだって好きでを膨らませてるんじゃないからな!

 母親と思しき女、悲鳴を上げながらオレを乱暴にベッドへ放り投げやがった。
 気持ちはわかるが痛いって!

 そのファーストコンタクトがいけなかった。
 以来、オレは一度も授乳されないまま育った。
 飲まされたのは家畜の乳だろうか。
 少なくとも、オレが知る牛乳ミルクの味とは若干異なる。
 
 一方、”妹”のエリスはまともに母乳で育てられた。
 まあ、同性だから母親のおっぱいに興奮することもないし、それにアイツには膨らませるもないしな。

 そうそう、出産直後の母親は乳が出ないらしい。
 オレをベッドに放り投げた母親と思しきあの乱暴女はご近所のママさんで、あの日は乳母として駆り出されたという事実を後に知った。
 その女が授乳時の出来事を町中に触れ回ったものだから堪らない。
 必然、幼年期以降のオレにはひどい苛めに遭う運命が待っていた。
 そこでついたニックネームは……
 やめとこう。
 オレにとってこの上ない不名誉な呼び名だから。

 だけど、それはまあしょうがないとして、だ。
 事もあろうに、事情を知るエリスまでもが何度かオレを避けたのは不愉快極まりない。

 何だよ!
 言っとくが、オレはオマエのMOSQUITO BITESペチャパイを膨らましたことなんて一度もないからな!
 

 
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