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世が橙に染まりし時、見せパン生パンどうでもええし。
しおりを挟む世が橙に染まりし時、今履いてるパンツが見せパンとか生パンとかホンマどうでもええねん。
スカートめっちゃ短いのに、ウチは無我の境地で足を組む。どうせ誰もいてへん。
今、この世におるんはウチと愛犬ペキだけ。この世言うても近所の土手限定やけどな。
夕日が綺麗……。
一人と一匹、オレンジ光線浴びまくり。
ペキ……ペキ兄。
ちゃんと見てるか、この景色? ホンマ、マイペースやな。
不謹慎やけど、戦火の街もこんな色やったんやろなと思てまう。
しゃーないやん。ウチは徴兵も空襲も知らんスマホ大好きな現代っ子。
そのスマホもペキとここに来る時だけは必ず家に置いてくる。
太陽さん、今日も一日ごくろうさんやな。アンタが見えんようなったら今度はお月さんの出番。……ん、今日は朔月やったか。
朔月!
アカンアカン! 見せパン生パンどころやない! 今のウチはかぐや姫、月に代わってお仕置き真っ最中やったわ!
……て、まあええか。ロリ江さんバッチシ警備中やし。てか、どこが無我の境地やねん。
夕暮れ。
太陽さんとお月さんがバトンタッチするほんの一瞬。
ウチはこの時間が一日で一番好きやねん。
好きやからちょい調べたんや。夕暮れのことを。
夕暮れは”逢魔時”とか”大禍時”の異名がある。
どっちも字からして不吉極まりない意味を持つ。妖怪も災いも、この太陽さんとお月さんがバトンタッチする時に人間の前に現れると信じられとったらしい。あほくさ。
似たような響きで”王莽時”と呼ばれることもある。
けど、意味はちょい違う。
王莽は古代中国の政治家。漢の皇帝を毒殺して自ら新朝の皇帝になった人や。
その王莽も呆気なく死に追い込まれて、新はたった十五年で滅びてもうた。
ほんで次にできた国も漢。新を挟んで前漢・後漢の漢王朝は四百年も続いた。
前漢は太陽さん。後漢はお月さん。新は夕暮れ。
そやから夕暮れは”王莽時”。
これは納得やな。史実に基づいたうまい喩え……て、ペキ兄! アンタどこ向いてんねん。どつきまわすで。
ペキニーズやからペキ。
名づけたんウチや。まだ若かりし日々。
センスのカケラもない名前。大阪の人間やったら少しは捻らんかい。
ペキ、アンタ年取ったな。
最初は「ペキ」やったんが、だんだん「ペキ兄」て呼ぶようになった。
もうすぐ「ペキ爺」の日が来るんか?
ペキ、アンタだけやないで。
ウチも若い若い思とったら、あっという間におばはんや。
別にええけどな。見た目ウチのおかんみたいになるだけやったら、そんくらい我慢できるわ。
あのおばはんパーマだけは絶対マネせえへんけどな。
ペキ……
なあ、ペキ……
頼むからちょっとは一緒に見てや、この綺麗な夕日を。最高に贅沢な瞬間やねんで。
何も気にせんしスマホもない、パンツすらどうでもええ。
ペキ、アンタとこうやってボーッとできるの、あとどれくらいやろな?
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