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第四章 友情

第三十三話

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航を見送った良順が裁きの間に戻ると、近藤が出迎え、声を掛けて来た。

「良順殿。たかむらから聞いたぞ。おぬしが医者を目指していた理由がまさか友を助ける為だとはな。友を救いたいと行動を起こす。思うことは簡単だが、行動に移すことはなかなか出来ん。それに悪を絶対に許さないという高須に対する毅然きぜんとした態度もな。わしは少々おぬしのことを誤解していたようだ。その純粋な心と大胆な行動力。わしもぜひ見習いたいものだ」

微笑みを浮かべ力強い眼差しで自分を見つめる近藤に良順は驚きを隠せなかった。

(えっ?近藤局長ってこんな人だっけ?オレの名前にテンション上がって新選組の話で盛り上がった時は話やすい人だなとは思ったけど……)

「まさか近藤局長に仕事のことで褒められるとは思わなくてびっくりなんすけど」

はと豆鉄砲まめでっぽうを食らったかのような顔をしている良順を見て近藤は愉快ゆかいそうにワハハと笑い、彼の肩を優しく叩いた。

「おぬしはあの松本良順殿の名をぐ者。必ず良きものを持っている。花開く時が必ず来る。そうわしは信じておったのだぞ」

強い期待が込められた近藤の熱い眼差しに胸が熱くなった良順は、力強く言った。

「近藤局長……。ありがとうございます。オレ、補佐隊員頑張ります!」

その直後、うたじろうが数人を連れて入って来た。勇美はその時たかむらと仕事の話をしていたが、見慣れたその人物達を見て嬉しそうに声を上げた。

「あっ!元春くん、ハナちゃん、千代さん!」

勇美が彼らの元に駆け寄る様子を見て、良順は躊躇ためらった。

(オレ全然会ってないからビミョーな顔されるかも……千代さんなんか『どこ行ってたのさ!サボってんじゃないよ!』とか怒鳴どなって来そうだし……)

うつむいてしばらく迷っていた良順は顔を上げた。

(……いや、こういう時こそオレの人懐こさを発揮はっきするべきじゃん!)

自分に言い聞かせると、良順はいつもの笑顔を浮かべて彼らの元へ駆け寄った。

「チーッス!千代さん!久々っすね⭐︎」

すると、千代はとても嬉しそうに微笑みを浮かべてこう言った。

「良順が戻って来たってうたじろうから聞いて、急いで書庫から出たんだよ。本当はもっと早く戻るつもりだったんだが、調べものが予想以上に長引いてね。久しく会わなかったからあんたの顔忘れるとこだったよ!」

先程、近藤に声を掛けられた時以上に良順は驚いた。

(あれ?千代さん全然怒ってない……ってかめっちゃ嬉しそうに笑ってね?こんな人だっけ?)

「マ、マジっすか!忘れられてなくて良かったー!っつーか千代さん、なんかキャラ違くないっすか?」

「……きゃらって何だい?」

「えーっと……人柄とか性格のことっすよ!オレてっきり『どこ行ってた?!なまけてんじゃないよ!』って怒られるかと思ってもうめっちゃドキドキしてたんすよー!」

千代は目を丸くした後、楽しそうにケラケラと笑いながら言った。

「私はあんたの中でそんな鬼みたいな人間になってんのかい。確かにどこ行ったのかとは思ってたけどね、無事に戻って来てきちんと任務を遂行すいこうしたんだからいいじゃないのさ。任務についてはうたじろうからちょっと聞いたよ。後で詳しく聞かせておくれよ」

「りょーかいっす!って、うたじろう。オレのことわざわざみんなに知らせてくれたの?」

「はい。皆さんも良順殿にお会いしたいのではないかと思いまして」

「うたじろう!めちゃくちゃ気がキク~!」

良順はホッと胸を撫で下ろすと隣にいる元春(この日は男装中)に目を向けた。

(やっぱ元春はかわいいな。オレの癒し系アイドルだわ。ってか表情がちょっと頼もしくなってるような……)

不思議に思いながら良順は声を掛けた。

「元春!ひっさしぶり~♪」

「良順くん、ひさしぶりですね!」

良順は自分の胸ぐらいまでしかない元春の頭を優しく撫でると、その隣にいるハナに気付いて言った。

「そのワンコは?」

「私はハナ。現世で元春に飼われていたの。この間、霊界に来たばかりよ。今は元春と一緒に補佐の仕事をしてるの」

「えっ?!言葉喋れんの?!すっげー!うたじろう、良い仲間出来たじゃん!」

「は、はい、そうですね」

「オレは森久保良順!よろしくね☆やっべ~超もふもふじゃ~ん!」

良順はハナの顔を思い切り両手で撫で回した。ハナは思い切り顔面を歪めるとワン!と鳴いて威嚇いかくした。

「ちょっと何するのよ!気やすく触らないでちょうだい!」

「うっわ、こえ~!ごめんね!」

良順は慌てて両手を引っ込めると苦笑いをしながら言った。

「良順くん、ごめんなさい。ハナちゃんは気が強くてとてもしっかり者だから……」

元春が申し訳なさそうにそう言いかけたが、勇美は素早くツッコミを入れた。

「良順。今のあんた、年上のお姉さんに気やすく声かけて怒鳴どなられた年下のチャラ男みたいだったからね!」

千代とうたじろうが吹き出した。良順は苦笑いをして頭をいた。

「ハハハッ!ホント勇美ちゃんにはかなわないや~!」

(そっか。元春は相棒が出来たから顔つきが変わったんだな)

その時、良順はハッとした。

(みんなが変わったのってもしかして勇美ちゃんが来たから?まぁオレも勇美ちゃんのおかげで色々気づけたしな……)

仲良く笑い合う勇美と補佐隊員達の様子を眺めながら、良順は静かに微笑みを浮かべたのだった。
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