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サーキットの娘

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当時も好きな曲だったが、大人になった今の方が思い入れのある曲だ。理由はふたつある。

①ビートルズの名曲が隠れている
まず、この曲はビートルズのアイソーハースタンディングゼアという曲に似ている。似ているというよりも歌詞とメロディを除けばバックサウンドはほぼそのままである。当時から曲の終わり方がビートルズの初期曲っぽいということに気づいてはいたのだが、曲名まではっきりと浮かんだのは大人になってからだ。それは私自身、大人になってからビートルズの曲をより幅広く聞くようになったから。

アイソーハースタンディングゼアは、リンゴが強烈な8ビートを刻むロックの名曲だが、シングルではなくアルバム曲である。数あるベスト盤の中でも最高峰である通称「赤盤」にも収録されていない。つまり「隠れた名曲」なのだ。だから、ベスト盤ばかり聞いていてもこの曲を知ることはできない。当時、私はベスト盤とお気に入りのアルバムしか聞いていなかった。だからこの曲を知らなかったのだ。大人になってから初めてこの曲が入っている1stアルバムを聞いた。こんなにかっこいい曲がベスト盤に入っていない事に驚き、そして今まで知らずにいた自分を恥じた。

そんな思い入れのあるアイソーハースタンディングゼアと似ているこの曲。歌っているPUFFYの魅力はもちろんだが、何よりも作った奥田民生の「ビートルズ愛」をひしひしと感じ、何だか「分かる分かる!ビートルズ真似したくなるよね!」と思わず、奥田民生本人に賛同したくなってしまう。

因みにアイソーハースタンディングゼアのベースラインは1950年代に活躍したチャックベリーというアーティストの「アイムトーキングアバウトユー」という曲のベースラインをそのまま使っているという。ビートルズのメンバーはチャックベリーを敬愛しており、色々な曲をカバーしている。この曲はそんなチャックベリーに対してのメンバーのリスペクトが詰まった曲でもあるのだ。

チャックベリーに触発された曲をビートルズが作って歌い、そのビートルズに触発された曲を奥田民生が作って歌い、しかもPUFFYに曲提供している。(奥田民生はこの曲をセルフカバーもしている)この一本の線に気づいた時、思わず鳥肌が立った。音楽のルーツとはこうやって作られていくものなのか…と。

②ヤマハ・ビーノCM曲
子供だった為、当時は全く意識していなかったが、この曲はヤマハのビーノというスクーターとタイアップしている。このビーノというスクーター、実は現在、私が愛用しているスクーターなのだ。もちろんモデルは当時のものではなく最近の型だが、メーカーと車種は全く同じ。バイク好きの旦那に「このバイクは昔、PUFFYが乗ってたやつなんだよ!」と言われ、初めて知ったのだった。この曲のMVでPUFFYの二人がビーノに乗っている。最近、YouTubeでフル視聴したのだが(当時はネット普及前だったからMVを簡単に見られる時代ではなかった)見覚えのあるスクーターに二人が乗っている姿に思わず感動してしまった。バイク正面の顔は今ほどまだスタイリッシュではないが、横から見るとビーノの特徴そのまま。20年以上経ってからまさか自分がこのスクーターに乗る事になるとは。

自分が昔、好きだったアーティストの、しかも好きな曲と、普段乗っている愛車にまさかこのような接点があったとは驚きの事実で、とても嬉しかった。PUFFYとは不思議な縁があるのかもしれないと、思った出来事だった。
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