上 下
2 / 10

これが私の生きる道

しおりを挟む
PUFFYといえばアジアの純真かこの曲だろう。これこそ奥田民生のビートルズ愛が全面に表れた曲である。この曲にはビートルズ初期曲の要素が隠れている。その代表的な曲が「プリーズプリーズミ―」と「デイトリッパー」である。

当時、ビートルズファンの父がこの曲を聞く度に「これはデイトリッパーに似ている」と言っていた。具体的に言うと、サビの終わり~次の歌詞に行く前に入るギターが、デイトリッパーのイントロ。それから、間奏終わりに入るギターは「プリーズプリーズミー」のイントロだ。しかも、後者はビートルズがハーモニカであるのに対して、PUFFYの方はギター。間奏がハーモニカソロなのだから、そのままハーモニカで展開しても良さそうなのものをわざわざギターに変えている。確かにもしもハーモニカソロで全て展開していたら、ビートルズの丸パクリになってしまうし、音のメリハリがないのでイマイチ面白みに欠ける。だからあえて、ギターに変えたのかもしれない。奥田民生の光る音楽的センスに脱帽だ。

他にもコーラス、ハーモニカ、ハンドクラップ、タンバリンなど初期のビートルズを彩った要素がたっぷり詰まっている。そして、途中に入るギロの音が良いアクセントになっている。大人になってから聞いて思ったのだが、今の日本の音楽界に、曲の合間にギロを使うアーティストなど殆どいないのではないだろうか。今はどちらかというと純粋なバンドサウンドか、もしくは機械だけで作ったとても複雑なサウンドが主流な気がする。こういうアナログな楽器の音の温かさというのはとても大切な要素だなと私は思う。

そして、全力でビートルズに寄せたこの曲に合わせたのは「まぁ人生こんなもんか」みたいな肩の力を抜いた歌詞と、脱力感のあるPUFFYの歌声とメロディだ。これがまた絶妙でとても癖になる。もしもこの曲の歌詞がガッチガチのラブソングだったり、クソ真面目な人生ソングだったらここまで売れていないだろう。

ビートルズサウンド×脱力感というマジックは奥田民生にしか出せない魅力である。
しおりを挟む

処理中です...