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発達障害の特性と捉え方についての話。

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前回からだいぶ時間が経っているので現在はかなり色々な事が進んでいるのだが、とりあえず先にまだ紹介し切れていない特性等について書いていきたいと思う。

~体調について~ 
①仕事や予定を済ました後にまた違う予定をこなしたり、家事をすることができない。

これはASDというよりHSPの特性かと思うのだが、よくあるパターンは仕事の後に遊びや食事、飲みに行くことができないということ。何故かというと仕事に全ての労力を使い果たしてしまうから。ゲームに例えると、仕事が終わった後のhpが黄色もしくは赤ゲージになっている状態。だから、その後に何か予定を入れるとすぐにhpはゼロになってしまう。ゲームであれば回復アイテムを使うが、現実ではそうはいかない。

回復アイテムではないがひとつの方法としては翌日に一日休みを入れること。そうすれば「明日休みだから頑張れる」と、何とか気力を振り絞って乗り切る事ができる。相手が理解のある人であれば分かってもらえるのが、社会に出るとそう簡単にはいかない。

前の記事に書いた女性ばかりの部署にいた頃はハードな残業の後に飲み会が頻繁にあった。もちろん翌日休みを入れることも欠席することも許されない。おまけに満員電車を避けて早朝に通勤していたので毎朝4時過ぎ起床。前日に深夜まで飲み会に参加し、ろくに睡眠も取れずに出勤する。私にとってはまさに地獄だった。今思い出すだけでも憂鬱になるぐらいだ。

②体調が天気に左右される
これは発達障害そのものではなく二次障害の自律神経失調症の影響だと思うのだが、雨の日は基本的に体調が悪い。具体的にどう悪いかというと、体が常に怠い、眠気、やる気の喪失が主な症状。夏場は更に湿気で息苦しさ、冬場は寒さによる冷え性が加わる。こうなると何もできなくなるのでとりあえず横になって過ごすしかない。

③緊張すると体調が悪くなる
人は色々な場面で緊張する。私の場合は主に人前に出て何か発表したり、初めての事……例えばどこかに相談しに行ったり、病院の初診や仕事の面接の時に極度の緊張感に襲われる。つまりかなりのあがり症なのだ。緊張すると動悸が激しくなるが、私はそれに加えて吐き気や腹痛など体に異変が起きる。

なので、人前で何かをする事や初めてやる事、面接がとても苦手というか大嫌いだ。しかし人前で何かをやる時は訓練だと思ってこなしているし、病院の初診や面接は生きている以上避けては通れない道なので割り切って挑むようにしている。因みに何故、初めてやる事に対して緊張するのかというと勝手が分からなくて不安だからだ。その為、初めてこなして要領を掴んだりすると自信がついたり安心したりして、2回目以降は緊張しなくなるのである。

④人混み、電車、バスが苦手
これもHSPの特性が関係しているが、感覚過敏なの見知らぬ人が至近距離に沢山いるような場所がとても苦手だ。具体的にどういう事かというと、自分のテリトリー(肩や肘がぶつかるぐらいの範囲)に知らない人が入り込んで来る事や聴覚、嗅覚、視覚など感覚を刺激されると不快感を覚えるということ。酷いと苛々したり、動悸がしたり、吐き気や腹痛など体に異変が起こる。

精神疾患のひとつにパニック障害という病気があるのだが、これは主に人混みで体調を崩して息が出来なくなったり発作が起きてしまう恐ろしい病気だ。私はパニック障害ではない。しかし、人混みに出たり電車、バスに乗る時はその疾患を抱えている人達の辛さが何となく分かるような気がする。まぁ、私が思っているよりも彼、彼女らは遥かに苦しく辛い思いをしているのだと思うが……。

~薬について~
精神疾患を患っている人は薬物治療を行なっている人が多い。あと、発達障害のADHDの人(過度な物忘れなどが特徴)も薬物で症状が改善する事が証明されている。しかし、ASDは今のところ薬物による改善方法はない。

私は自律神経失調症を患った時、漢方薬による治療を行なっていた。漢方薬は即効性はなく継続して飲むことによって効果が現れるのだが、正直なところ効果はあまり感じられなかったように思う。なのでその内飲むのをやめてしまった。仕事を辞めたことで症状が改善されたということもある。

不安障害を患った時は精神疾患の薬を処方されたので先生に「最初は大変だけど慣れるまで継続して飲むこと」と言われた。早速飲んでみたところ夜中に凄まじい吐き気に襲われ、トイレと洗面台の前でしばらくうずくまる程だった。精神疾患の薬は副作用が強い事は聞いていたが、これ程までとは思わなかった。思わず救急車を呼ぼうかと思うぐらいの苦しさと恐怖に襲われ、それ以来、精神疾患の薬に恐怖を感じるようになった。こちらも仕事を辞めたことで症状が改善されたので飲む必要がなくなった。

次に同じ病院を受診した時、先生にその副作用の件を正直に言えば良かったのに「治ったから飲んでません」と言ったら「勝手にやめるな」と怒られ、次の分を処方された。処方箋は薬局に持ち込む事なく密かに家のゴミ箱に捨てたのだった。

調べたところ、精神疾患の薬は効果が現れ始めると、離脱反応といってやめるまでにかなり苦労するらしい。具体的に言うと、薬の効果が現れ始めてから一度でも薬を飲み忘れてしまうと様々な副作用に襲われるということ。つまり嫌でも薬に依存しなければ生活していけない状態になってしまうのである。

薬の怖さを経験した身としては、薬に頼りたくないと思うのであれば様々な治療方法の中から「薬物療法」という選択肢を除外するべきであると私は思う。因みに私が飲んだ薬はおそらくサインバルタというものなので、参考にして頂けたらと思う。(他にも色々な薬があるので服用する場合は主治医の話をよく聞くことが重要)

現在、私はカウンセリング治療を選択している。(不安障害で受診した所とは違う病院)もちろん薬に頼りたくないからだ。病院にもよるが、大体20分~30分間で心理士さんに悩みなどを話し、聞いてもらっている。まだ始まったばかりで効果は不明なので分かり次第、また報告したいと思う。

~その他~
①匂いに敏感、猫舌
音の刺激に弱いことは前回書いたが、匂いや味の刺激にもかなり弱い。一番苦手なのは汗の匂いと香水。夏の満員電車は地獄である。あと、飲食店でキツい香水をつけている人に遭遇すると匂いに妨害されて味が分からなくなる。マスクをしながら食べることは不可能なのでこればかりは我慢する以外に方法がない。

それからこれは障害者というか感覚過敏な人ではなくてもよくあることだが、かなりの猫舌である。旦那が平気で食べている料理でも熱くて食べられない時が結構ある。あと、辛い物は刺激が強過ぎて食べるとすぐにお腹を壊してしまう。

②ダメ出しや失敗を恐れる
HSPの最も大きな特性は繊細なことだ。私の場合、とても打たれ弱いので少しの失敗やダメ出しでかなり凹んでしまう。そして、しばらくその事ばかりを考え込み頭の中がグルグルしてしまうのだ。

シナリオ執筆の仕事をしていても、構成担当さんからダメ出しを受けただけで凹む。一度、怒られるのが怖くてトラウマみたいになり作業ができなくなった事がある。その時は小説を書けなくなった程だった。

これが酷くなると、吐き気や腹痛など体に異変が起きる。実際その所為で仕事を辞めた事が何度もある。かなり厄介な体質なのである。

③慣れた環境や習慣にこだわる
臨機応変な対応ができないので、自分のやりやすい方法を見つけたらその方法でやらないと気が済まない。

例えば、最近までやっていたメール便の配達は必ず同じ時間帯でないと駄目だった。人付き合いが苦手なので、なるべく人に合わないような時間帯……早朝に行く事が多かった。つまりパターンを決めてその通りにやらないと気が済まないのである。

では、予定がいきなり変わるとどうなるかと言うと、パニックに陥る。例えば翌日の早朝に配達を予定していたのに急な悪天候で配達ができないとなると動揺してストレスが溜まり、酷いと動悸がしたり泣いてしまったりする。

④自己肯定感が超絶低い
昔から人と自分を比べては「私は何もできない駄目人間」と自分を卑下して落ち込んでいた。自分を好きだと思った事は恐らく数える程しかないし、常に自信を持てずにいた。発達障害を持っていると分かってからは「自分の所為じゃない」と思えるようになったので以前よりは前向きになったが、正直言ってやはり自分の事はいまだにあまり好きではない。

⑤分析力、観察力に優れている
これは数少ない長所である。HSPの「他人の感情や言動に敏感」な特性の応用なのかもしれない。周りの人が気づかないような他人の変化に気づく事ができるということだ。具体的にどういう事かというと、例えば舞台やライブでの観察力が鋭い。

以前「バックビート」というビートルズの舞台を観に行った事があった。その感想や分析、解説などを綴ったブログがありがたいことに大好評で、なんと関係者の目にまで留まってメッセージを頂いた程だった。また、好きな音楽を分析したブログも大好評で沢山の感想を頂いたりもした。(現在は休止中)

先程も書いたように私は基本的に自己肯定感が低い。しかし「文章力」「想像力」そして「分析力」「観察力」は一般人より優れていると自負している。何かひとつでもいいから自分の特技や譲れないものを持っておく事はとても大切な事である。

以上が私の大まかな特性である。もしかしたら気づいていない、もしくは忘れているだけでまだまだあるかもしれない。その時はまた改めてご紹介させて頂けたらと思う。

このように「発達障害」といっても特性は人によって様々だ。最近では特性が細かく分類され、名前が付けられている。昔では考えられなかった事だ。恐らく、こうした特性はかなり昔から人々の中に存在していたもの。しかし、大して問題にはならなかった。何故かというと、人々はそれを「障害」とは思っていなかったからだ。

発達障害にはこういう考え方がある。自分が持っている様々な特性を「個性」と捉えて健康的に生きている人は健常者と同じ。しかし、自分が持っている様々な特性を「障害」と捉え、その障害によって生きづらさを感じたり、心身の調子を崩してしまう人が障害者として認定される。

だから、こうした特性は発達障害者だけではなく誰もが大なり小なり持っているものなのだ。それが心身にどのように影響するかによって変わってくる。

ひとつ例を挙げてみる。現在、毎週金曜日にテレビ東京で「嫌われ監察官 音無一六」というドラマが放送されている。主人公は小日向文世さん演じる監察官(警察の不正等を調査する仕事)なのだが、彼は空気を読まない発言や強過ぎるこだわり、また情にほだされない冷酷な仕事ぶりの所為で周囲の警察官から多くの反感を買い、嫌われている。

しかし、その並外れた観察力や洞察力で数々の難事件を解決する。基本的に周りの人間からは嫌われているが、彼の才能や意外な一面を知る一部の人間からは厚い信頼を得ている。

彼のこだわりはかなり強く、調査中に曲がっている紙やバラバラに並べられている本を見つけると直さずにはいられないし、昆虫が大嫌いで名前を聞いただけで飛び跳ねるぐらい怯えてしまう。仲間の1人に溝呂木(こうろぎ)さんという女性がいるが、名前を口にするのも怖い為にわざわざ下の名前で呼んでいる。

その強すぎる個性……特にこだわりの強さや空気を読まない発言は発達障害の特性に似ているところがある。しかし、彼はごく普通の一般人だ。何故かというと、その個性を否定せず、受け入れて上手く付き合っているから。彼の姿を見ていると、個性に困っている様子はどこにも感じられない。だから、自分を「障害者」だと思うかどうかは自分自身の捉え方にもよるのだろう。

前向きに捉えた方が生きづらさを感じないし、一般人として生きていける。しかし、頭では分かっていてもそれができないのが障害者だ。嫌でも身体に影響が出てしまうし、普通の人と違ってできない事が沢山ある。

つまり、自分が「発達障害者」だと思っている人はいかに障害と上手く付き合っていくかが大事なのだ。「人とは違うけど、私は自分にできることをすればいい」そう考え方を変えるだけでもかなり気持ちが楽になるのではないかと私は思う。
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