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3、レス夫婦 ※

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※露骨な表現がある訳ではありませんが、性生活についての話なので苦手な方は閲覧にご注意ください。





【この春から始まったドラマ「あなたがしてくれなくても」】
これは二組のレス夫婦を巡るシリアスなドラマだ。言わなくてもお分かり頂けるとは思うが、レスとはすなわち夜の営みのことである。私は結婚してから夫婦のドロドロとした愛憎劇を好んで見るようになったのだが、このドラマの一話を見て驚いた。私と夫の関係とほぼ同じだったからである。

主人公のみち、夫の陽一はレス二年目の夫婦。そろそろ子供を作ろうかと夫婦で話しながらも妻を拒否する夫。「私があなたとしたいのは子供を作りたいからだけじゃない。愛情を感じたいからなんだよ」と涙ながらに夫に語る妻、みちの姿が印象的だった。

結婚2、3年目辺りから私と夫の関係もレス状態だった。私は子供が苦手で望んでいないことは以前にもエッセイに書いた。だから、このドラマのみちと陽一の関係とは少し異なる部分があるが、みちの「夫の愛情を感じたい」という気持ちはとても理解できる。男女の行為はお互いの気持ちが伴っていないと出来ない行為(男は相手を好きではなくてもできるという話もあるがそれはここでは一旦脇に置いておく)である。だから、拒否されること、レス状態になってしまうことはとても辛いことなのである。

ドラマの中で陽一は妻に「みちのことは好きだし、別れる気はない。大切な家族なんだ」と訴え、みちを抱き締めようとして躊躇い、部屋を去るというシーンがあった。みちは陽一が去った後「凄く嬉しい。でも陽ちゃんは私を抱き締めてくれなかった」と複雑な気持ちを抱える。私はこのシーンを見てかつて夫に言われたことを思い出した。

「子供が生まれると夫は妻のことを女として見られなくなるんだってね。うちは子供はいないけど」

「雪子のことは家族って感じ」

だから、みちの複雑な心情がとても理解できた。と、同時にレスだけじゃなく日常的なスキンシップさえも殆どなくなってしまったことをふと思い出して、切なくなってしまった。

また、誰が言ったかは忘れてしまったが「結婚したら妻は夫にしか女として見てもらえなくなる」という台詞もあり、とても心に刺さった。


【レスになった原因】
夫が生活を支えるために土日も休まずに働き続けており、常に忙しかったというのが主な原因。だが、今私が思うのは、私が自分磨きを怠ってしまったからかもしれないということだ。夫は外食が好きで私を色々な店に連れて行ってくれた。そして「美味しそうにご飯を食べる雪子の顔を見るのが好きだ」と言ってくれた。その言葉に甘えて食べまくっていたら、いつしか体重は増えて体型は崩れ、夫から「デブ」だの「ブタ」だのと言われるようになってしまっていたのだ。

私は元々肥満体型ではあったのだが、一人暮らしを始めてからは「ぽっちゃり」ぐらいまでは体型を戻すことができた。しかし、結婚してからリバウンドしてしまったのである。おまけに化粧は最低限で酷い時は眉毛を書いてハイ、終わり。肌の手入れも雑、ファッションも適当。これでは女として見てもらえなくなるのも無理はないだろうと思う。(交際中はそれなりに身なりに気を遣っていた)

私が今、ダイエットを含めた自分磨きをしている主な理由は「健康のため」「身だしなみに最低限、気を遣うことで同性の中にいても恥ずかしくないように」ということだ。最近、仕事柄オフィスカジュアルを身に着けるようになったのだが、職場はもちろん駅や電車の中で女性を見ると自分に対して劣等感を抱くようになった。それは相手を攻撃するような感情ではなくむしろ「可愛いな」「綺麗だな」という羨ましいという感情である。だから、自分もその中にいても恥ずかしくない最低限の身なりをしなくてはならない、と思うようになったのだ。

しかし、自分磨きの理由はこれだけではない。心の奥底には夫とのレス関係による反動があるような気がするのだ。あの時の自分への戒め、という意味だ。

熟年ならまだしも結婚2、3年目でもしもレス状態に陥ってしまったら、それは危険信号だと思っていい。別れる気がないのなら、どうしてそうなってしまったのか原因を突き止めて改善できることがあれば早急に改善すべきである。

何故、今回私が夫との性生活を赤裸々に打ち明けようと思ったのかというと「同じ思いをしている人達のために」という気持ちがあるからだ。レス夫婦をテーマにしたドラマを放送するようになったということは、世の中にそれだけ同じ悩みを抱えている人達がいるということだ。
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