上 下
1 / 1

当時、小学5年生の私が買った初めてのCDは河村隆一だったという話。

しおりを挟む
最近、90年代のJ POPを聞いている。当時は数々のミリオンヒットが生まれたJ POP全盛期だった。当時私は小学生だったのだが、ちょうどJ POPの良さに目覚めた頃。我が家は当時、北海道でペンションを営んでいたのだが、有線でJ POPチャンネルをカセットに録音して楽しんでいた思い出がある。

好きなアーティストは色々いたが、たぶん一番最初に「私はこの人のファンだ」というのを自覚した日本人アーティストはPUFFYだったと思う。(因みに海外勢ではビートルズ)しかし、それよりも前に私が繰り返し聞いていたのが河村隆一だった。彼の「BEAT」という曲のCDは私が人生で初めて買ったCDであった。

今では12センチCDが当たり前のようになっているが(それでもネットの波に押されて消えつつある)

当時はまだ8センチCDが主流。シングルは8センチの長方形、アルバムは12センチの正方形、がCDの基本だった。歌詞カードと呼ばれるものはなく、長方形のパッケージに直接歌詞が印字されている。元からケースに入っている12センチCDと違い、8センチCDは専用のケースを別途購入する必要があった。別に無くても構わないのだが、パッケージはただのペラッペラな紙なので汚れや破損防止に購入した。今となっては懐かしい。

その頃の私はまだ日本人アーティストの中で「誰かのファンだ」と公言するような人は特にいなかった。河村隆一も特に大ファンという訳ではなかった。

しかし、音楽好きな自分が初めてCDを買ったアーティストということで特別な思い入れがあった。BEATを気に入った私は彼の1stアルバム「LOVE」も手に入れた。多彩な曲の数々に魅了され、当時小学5年生ながらリピートしたアルバムだ。まだ恋の何たるかも分からない年頃だったが、例え恋を知らなくてもポップなメロディと伸びのある心地良い歌声を聞いているだけで楽しめたのだ。

当時はネットがまだ主流ではなかった為、大人になってから背景を知った曲も沢山あった。今回はそんな懐かしいアルバムの曲について感想を綴っていこうと思う。

【BEAT】
私が人生で初めて買ったCDである。何故買おうと思ったのか、キッカケはもう覚えていない。が、恐らく明るくてメロディアスな曲調が気に入ったからだろうと思う。

小学5年生だった当時の私には歌詞の意味などよく分からなかった。が、実は失恋ソングだということに大人になってから初めて気がついた。明るい曲調からまさか別れの歌だとは思わず驚いてしまった。しかし、失恋ソングとは言っても前向きな失恋ソングである。

主人公は「君」とよく行った海辺を訪れて、懐かしい思い出に耽る。そして最後には「君を知ったこの場所から」新たな気持ちで再び歩き出すのである。

これほど爽やかで前向きな失恋ソングを書ける人はなかなかいないだろう。私はLUNA SEA時代の河村隆一をあまり知らないので、よく分からないがLUNA SEAのファンにとっては彼がこのような路線の曲を書いて歌っていることにかなりの衝撃を受けていたようである。

【蝶々】
酒井法子に提供した曲のセルフカバー。酒井法子といえばまぁ色々なトラブルがあったことが印象的だが、それはここでは関係ないので割愛する。

これこそ小学生だった当時の私には良さが分からなかった曲である。むしろ飛ばしてたような気もする。

3拍子のリズムに乗せて幼き日の初恋をゆったりと歌っているのだが、歌詞と歌声共に情景や哀愁などがとても美しい名曲である。

大人になった女性が、かつて一目惚れをした相手を探しにある地にやってくるが、そこには当時の美しい自然の姿はなくビルが立ち並ぶ都会。彼を探してビルの合間を彷徨う様を「蝶々」に例えている。蝶々=主人公という表現、そして女性目線の歌詞を艶やかで哀愁たっぷりに歌う声に大人になった私は一瞬で魅了されたのだった。

彼のバラード曲ではやはりglassなどが有名だが、この曲も匹敵するのではないかと私は思っている。

【小さな星】
Say a Little Prayer という3人組アイドルに提供した曲だ。このことを私は今になって知った。てっきり河村隆一本人の曲だと思っていたのだ。当時はネットが普及していなかったから、得る情報も限られていたように思う。

BEATとはまた違う明るい曲調。BEATよりもアップテンポである。ある小さな星に向かって二人だけの宇宙の旅を続けるカップルの曲。大人になってから歌詞を読むと、彼と彼女の二人称で書かれているのが印象的だった。

私はラルクファンなのだが、この曲は個人的にtrueやHEARTの頃のラルクに似てるなという印象がある。特にベースのてっちゃん(tetsuya)が作る明るくてアップテンポな曲に似ている。パクリとかそういうことを言いたいのではなく、むしろ私の好きな路線の曲だということを言いたいのである。

【glass】
河村隆一といえばこの曲ではないだろうか。ピアノが印象的な極上のバラードだ。今になって気づいたのは、レミオロメンの「粉雪」とサビの入り方が似ているということだ。どちらの曲も始まりは低音で淡々としているが、サビで一気にキーが上がる。

「こなあああゆきいいい」
「きーみーのこえはあああ」

いきなりキーが上がるのでカラオケで歌う人泣かせの曲かもしれない。

それにしてもこの曲におけるコロッケのモノマネは秀逸である。変顔に加えて椅子からずり落ちるというネタは「完全に馬鹿にしているだろww」と思わざるを得ないパフォーマンスだが、本人やファンにも認められているほどである。今見ても涙が出るほど笑えるのだ。(もし気分を害したファンの方いたらすみません)

【Love is…】
glassに続いて代表的な一曲。こちらも極上のバラード。個人的に私はglassよりもこちらが好み。

今となっては出だしの英詞もそんなに難しいとは思わないが、当時小学生の私には難易度が高かった。カラオケで歌ったことがあるような気がするのだが、よく覚えていない。もしかしたら出だしの英詞で撃沈したのかもしれない。今なら歌えそうな気がする。

【Christmas】
猿岩石に提供したクリスマスバラードソングである。猿岩石は有吉弘行が昔組んでいたお笑いコンビだ。今となっては驚きの事実かもしれないが、リアルタイムで知っている世代にとっては彼らが曲を出して歌うことは当たり前だったのだ。それだけ当時の猿岩石の人気は凄まじいものだった。

しかし私は猿岩石といえば「白い雲のように」や「コンビニ」ぐらいしか知らず、小さな星と同様にこの曲は河村隆一本人の曲だと思っていた。ネットで解説を読んで驚き、猿岩石バージョンを見てみると有吉が優しい声でこの曲を歌っているではないか。思わず吹き出してしまった(有吉さんごめんなさい)しかし、芸人にしては森脇も有吉も歌が上手いのでこの曲も普通に良い曲だなぁという感じで自然に聞けたのだった。


以上、抜粋ではあるが感想を綴ってみた。全体的に歌詞がストレートで聞きやすい印象だ。難しい考察はあまり必要がないように思う。

色々な音楽を聞いてきて、今改めて河村隆一の曲を聞いて思うのは、やはりその特徴的な歌声ではないだろうか。苦手だという人もいるが、男性であれだけの音域が出せるのは凄い。おまけに滑舌が良いから歌詞を見なくても聞き取れる。

それから、ラルクファンとしての感想だが河村隆一とhydeは声質が似ている。もちろん嫌な意味ではなく良い意味である。音域が広いこと、情緒のある歌い方、発声量、ビブラートなど。人を一発で魅了することのできる歌声だ。因みに私はこの時、まだラルクファンではない。(ラルクについてはまた後日書くとする)

大人になってから聞くと、当時小学5年生の女子がこのアルバムをリピートしていたという事実に衝撃を受ける。その女子とは他ではない自分自身なのだが…

一体どんな気持ちで聞いていたのか、ぜひ当時の自分に聞いてみたいものである。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

小学校時代を過ごした北海道のある田舎町、そこで経験したスキーの思い出話。

星名雪子
エッセイ・ノンフィクション
現在、北京オリンピックが開幕中。私の大好きなモーグルとアルペンスキー競技を見て思い出した当時の色々な話を綴ってみました。 1、育ったのは北海道の田舎町 2、スキーの色々な話 3、スキー場にあった不思議なコースの話 4、苦手だったクロスカントリーの話 5、ペンションに来た居候たちの話 6、大人になった今、思うこと 6本立てです。

PUFFYは脱力感×ビートルズサウンドという奥田民生マジックによって人気になったという話。

星名雪子
エッセイ・ノンフィクション
私が日本人アーティストで初めてファンになったのはPUFFYでした。その前にビートルズにハマっていたからこそ、私は彼女達の魅力にハマったのだと思います。当時ヘビロテした「JET CD」というアルバムの曲(抜粋)に沿って曲の解説や感想を綴っています。 1、私が日本人アーティストで初めてファンになったのはPUFFY 2、これが私の生きる道 3、CAKE IS LOVE 4、愛のしるし 5、春の朝 6、小美人 7、ネホリーナハホリーナ 8、サーキットの娘 9、渚にまつわるエトセトラ 10、これから先もPUFFYの魅力は尽きない 全部で10本立てです。

「新解釈・三國志」は確かにクソ映画だが、他人の評価は当てにならない。

星名雪子
エッセイ・ノンフィクション
新解釈・三國志を観て思ったこと。

発達障害の長男と母としての私

遥彼方
エッセイ・ノンフィクション
発達障害の長男と母としての私の関わり方の記録というか、私なりの子育てについて、語ろうと思います。 ただし、私は専門家でもなんでもありません。 私は私の息子の専門家なだけです。心理学とか、医学の知識もありません。きっと正しくないことも語るでしょう。 うちの子とは症状が違うから、参考になんてならない方も沢山いらっしゃるでしょう。というよりも、症状は一人一人違うのだから、違うのは当たり前です。 ですからあなたは、あなたのお子さんなり、ご家族の方の専門家になって下さい。 願わくば、その切っ掛けになりますよう。 ※私の実際の経験と、私の主観をつらつらと書くので、あまり纏まりがないエッセイかもしれません。 2018年現在、長男は中学3年、次男小6年、三男小4年です。 発達障害だと発覚した頃は、長男3歳、次男6カ月、三男はまだ産まれていません。 本作は2017年に、小説家になろうに掲載していたものを転記しました。 こちらでは、2018年10月10日に完結。

2024年のトレンド 新生児に付けられた最新の名前とその背景

ログ
エッセイ・ノンフィクション
この本は、2024年に日本で人気を博した子供の名前とその選択背景を深く探究するものです。現代社会の急速な変化とグローバリゼーションの影響下で、名前のトレンドは文化的、社会的動向を映し出す鏡のような存在になっています。本書では、名前の選択が親の価値観、希望、夢をどのように反映しているかを詳細に分析し、名前が持つ意味や影響について洞察を提供します。 まず、男の子と女の子の人気名前トップ10を紹介し、それぞれの名前がどのような文化的、社会的背景を持っているのかを解説します。名前の選択に影響を与える主な要因、例えば文化的トレンド、社会的動向、芸術とメディアの影響などを掘り下げ、名前が持つ深い意味と親のそれぞれの名前に対する期待に焦点を当てます。 さらに、国際的な視点から名前のトレンドを考察し、グローバル化が進む中で異文化間の名前交流がどのように進展しているかを探ります。また、名前変更の傾向とその理由を分析し、個人のアイデンティティの変化や社会的・文化的適応が名前にどのように影響しているかを調査します。 本書は、名前が単なる個人の識別符号ではなく、その人のアイデンティティの一部であり、親が子供に対して持つ深い愛情、願い、期待を象徴していることを示しています。2024年の日本における名前の選択は、グローバル化、文化的多様性、社会的変化の中で、個人としてのアイデンティティをどのように形成し、表現するかに関する深い洞察を提供しており、名前が持つ意味の深さと、それが個人と社会に与える影響の理解を深めるための一助となることでしょう。

小説家になろう、読者に問いたい

こつぶ
エッセイ・ノンフィクション
小説家になろうで投稿した過去作(不人気)を読んで、感想までいただいた。 ありがたいが、ランキングに一作も載っていない現状で、どうやって拙作まで辿り着いたのか? 気になってしょうがなくて呟いた。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

その希死念慮、減らせます!【精神科通院は怖くない】

月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
49歳腐女子、希死念慮と小学生時代から戦う猛者です。精神科に通院して15年。最近、希死念慮がかなり減ったので、その経緯をエッセイにします。精神科通院を躊躇っている方に読んでいただけると嬉しいです。 どなたかのお役に立てたなら幸いです。 ☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆ 『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#) その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。 ☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです

処理中です...