小学校時代を過ごした北海道のある田舎町、そこで経験したスキーの思い出話。

星名雪子

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スキー場にあった不思議なコースの話。

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スキー場には様々なコースがあった。その中で私が好きだったのが「ファミリーコース」だ。何故この名前なのかは分からない。が、恐らくどんなレベルの人間でも一緒に滑ることができるからではないかと思う。しかし、とても簡単なコースという訳ではない。スキー場の端っこの林道を切り開いて作られた非常にひっそりとしたコースで、夜は薄暗くて少し怖かった。他のコースの殆どが真っ直ぐな斜面であることに対し、ここはアップダウンやカーブが多く、基本的に道が曲がりくねっている特殊なコースだった。

片側は崖になっていて少しでも足を滑らせたら滑落してしまうような危険もあった。今はもしかしたら柵が設置されているかもしれないが、当時は何もなかった。それが逆にスリル満点で楽しかったのかもしれない。このコースにはスキー以外にも色々な思い出がある。

我が家は父、私、妹がスキー経験者であった。しかし、母だけがスキーができなかった。そのため、家族全員でスキーに行くことは殆どなく、行ったとしても母だけが取り残されてしまう。そういう状態だった。そんな母はこのファミリーコースをなんと、そりを引いて歩いたことがある。詳しい経緯は覚えていない。が、母が「ちょっと待ってよ~!」と言いながら、一生懸命にそりを引きながらスキーを滑る私達の後を追い掛けてきたことを今でも覚えている。あのアップダウンやカーブの多い特殊なコースを冬にそりを引いて歩くなど、母以外にやった人はいないかもしれない。というか、そりを引いてコースを歩くのは禁止ではなかったのか?という疑問も湧くが、当時私は子供だったため詳細は不明である。コースを滑り(歩き)終えた母はうんざりした顔で言ったのだった。

「もう絶対に行かない!」

もう一つは夏の思い出だ。私の中学校は夏に登山のイベントがあった。その対象の山がこのスキー場だったのだ。登山にスキー場に行くなど、殆ど初めての経験だったのでとても新鮮だった。その時のコースがこのファミリーコースだった。冬はスキーであっという間に滑り降りてしまう。が、登山は逆だ。アップダウンとカーブ、片側は崖になっている山道を登って行くのだ。これが想像以上にきつかった。特に坂道はとても急でほぼ垂直だったため、それを登ることはかなり酷だった。周りの同級生達も大量の汗を流しながら登っていた。スキーで滑った時はあんなに簡単だったのに!と私は歯を食いしばりながら、何とかコースを登り終えた。そして、私は思ったのだった。

「もう二度とこのコースを夏には登らない!」

夏と冬。スキーとそり。滑り降りることと登ること。状況は違うが母の気持ちが少しだけ分かった気がしたのだった。

4に続く。
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