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番外編
get out from the shell
しおりを挟む別記事でラルクの音楽がバラエティに富んでいるのはメンバー全員が曲を作る事が出来るからだと書いたが、本編ではドラムのyukihiroによる作品についてひとつも触れる事が出来なかったので、こちらで改めて触れたいと思う。
曲の話をする前にまずyukihiroのドラムについて説明したい。彼はファンの間で「ドラム職人」と呼ばれている。ライブにおいて彼によるコーラスは一切なく、またパフォーマンス中に周りを見る事もあまりない。たまにメンバーと視線を合わせて微笑んだりするとファンから黄色い悲鳴が上がる程だ。
リハーサルでは前後に自主練もする為、誰よりも先にスタジオ入りし、誰よりも遅くスタジオを出る。とてもテクニカルで規則正しくまた坦々としたプレイスタイルという事もあり、ただひたすらドラムを叩く事に集中するその姿からこの異名がついた。
彼が手掛けた曲は他メンバーに比べると数少なく、9曲+インスト3曲の合計12曲である。yukihiroは海外アーティストの音楽に精通しており、彼が作る曲にはそれらの影響が色濃く反映されている。
ラルクの曲は大半がken、その次にtetsuyaとhydeによるものが多いので聞いていて「何か雰囲気が違うな……」と感じるものがあれば、それは大体yukihiroの曲である。そんな彼の作品の中で私が特に気に入っている曲をピックアップしたい。
この記事のタイトル「get out from the shell」は2000年に発売されたアルバム「REAL」の一番最初に収録された全英詞の曲である。元々はシングル「STAY AWAY」のカップリング曲で、英語ではなく日本語のバージョンだった。日本を除くアジア地域でトヨタ自動車のCMソングに使用された関係で英語版がアルバムに収録された。
歌詞はどちらも同じなのだが、アルバムをヘビロテしていた事や、より洋楽っぽさを感じる事もあり、個人的には英語版の方が気に入っている。彼の曲は他に「ray」に入っている「trick」も好きなのでどちらを挙げるか迷ったが、先日ライブで久しぶりに聞いてとても感激したので「get out from the shell」を挙げる事にした。
この曲とアルバムが好きな一番の理由は洋楽っぽさを感じるという点である。因みにこのアルバムは私がラルクのアルバムの中で3番目に好きな作品だ。(1はHEART、2はray)
音源自体もそうなのだが、このアルバムを引っ提げたライブハウスツアーは大きな会場と違って映像などの演出が全くなく、純粋に曲を体感するステージになっているのとMCが殆どないというのもあり、ライブは特にアメリカなど海外のロックバンドを彷彿とさせるような荒々しさや刺々しさがありとてもかっこいい。(ちょうどその時期にバンドの雰囲気が尖っていたのもあるが)
一番最初に収録されている「get out from the shell」はそうしたアルバムの象徴ともいえるし「これはこういう雰囲気のアルバムです」と説明しているような曲でもある。海外アーティストに精通しているyukihiroだからこそ出来た曲だろう。
ベースの不穏なイントロから始まり、hydeの妖しくオカルティックな歌声が聞き手をゆっくりとその世界観に引き摺り込む。そして、サビで一気に加速しそのまま最後まで突っ走るかなり異質でヘヴィなロックナンバーである。アルバムの最初にインパクトを与える事で聞き手の心をグッと掴む。実に憎い曲である。
私は2000年に行われたライブハウスツアーでこの曲を初めて生で聞いた。当時まだ中学生だった事もあり、正直記憶は曖昧なのだが……。それから長い年月を経て先日のライブで久しぶりにこの曲を生で聞いた。約25年ぶりの「再会」に感激と感動のあまり「うおおおー!」と声を上げてしまった程だった。
詞についてはyukihiroがhydeに「怖い感じで」と伝え、hydeはそれを元に「グリム童話っぽさ」をイメージして作詞したという。「眠れる森の君へキスを」というフレーズはそういう意味を表しているのかもしれない。昔「本当は恐ろしいグリム童話」というものが流行ったが、この曲はまさにそれを表現しているのではないだろうか。もしも「本当は恐ろしいグリム童話」が映画やドラマなどになったらこの曲が主題歌になっても違和感がなさそうな気がする。
タイトルは直訳すると「殻を出る」つまり「殻を突き破る」というような意味になる。
先日のライブは「hyde誕生祭」と銘打たれており、1月29日に誕生日を迎えるhydeが(偶然にもこの記事のアップが誕生日当日となった)セットリストはもちろん全ての企画や演出を手掛けるコンセプト的なライブだったのだが、hydeがこの曲を選んだのには「殻を突き破る=新しい自分に生まれ変わる」というような意味も含まれていたのではないだろうか。
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