死生観から考察するラルクアンシエルの音楽

星名雪子

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EVERLASTING

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2014年に発売されたシングル曲で、hyde作詞、ken作曲の非常にダークな作品である。この曲が発売された当時、私はファンとして出戻る前だった。なので、初めて聞いたのは発売から約3年後だった。

ラルクのダークな曲は大好きだが、この曲はあまりに重く感じてしまい一応全曲プレイリストには入れるものの「私が知ってるラルクとはちょっと違う……」と、何となく飛ばすようになってしまった。先日行われたライブに参戦する際も直前まで全曲プレイリストを聞いていたのだが、絶対に歌わないだろうとたかくくってこの曲だけすっ飛ばして聞いていたほどだ。

しかし、ライブ当日。私の予想は大きく外れる。ステージ背後の大画面に映し出される静かに降り注ぐ雨。そして、yukihiroによるとても印象的なドラムの音。

私(まさかのエバラスーー?!)

驚きのあまり心の中で叫びながら思わず「うおああ!」と変な声が出た。オーケストラとシンセの印象的な音色、hydeの憂いを帯びた切ない歌声、歌詞が画面に映し出される演出だった事もあり、詞がダイレクトに体に入り込んで来て心がとてもざわついた。気が付いたら曲の世界観に一気に引き込まれていた。聞き終えて私は思った。「なんて切なくて悲しい曲なんだろう……」この曲をしっかり聞いた事がなかったのでとても衝撃だったしショックでもあった。

曲を聞いている間中、心が絶えずざわついていた。この感覚は一体何なのだろうとライブが終わってから私はその正体についてずっと考えていた。言語化を試みようとしたが言葉では上手く表現できなかった。これはラルクのダークな曲を聞くと個人的に必ず起こる不思議な感覚だった。ライブだと感覚が研ぎ澄まされるので余計にそうなるのかもしれない。

私は今回生まれて初めて二日連続で同じライブに参戦したのだが、二日目にこの曲を聞いた時は更に曲の世界観に引き込まれ、涙を流してしまった。その後、何度か曲を聞いて私は遂にあの感覚の正体を突き止めた。それは一体何かというと「死の匂い」である。

歌詞にはそれを連想するような単語はひとつもない。「もう逢わない」という歌詞があるが、死者だったら「もう逢えない」となると思うので公式では恐らく相手は死んでいない。だが、主人公の想い人が生者だとは私にはどうしても思えないのだ。(勝手に殺すな!というツッコミが入りそうな気がする)

歌詞の内容をざっくりと説明すると……

主人公には忘れられない想い人がいる。だが、あえてその人とは似ていない人を選んで付き合っている。しかし、どうしても忘れる事が出来ない。選んだのは私なのに何故、と嘆く。雨が洗い流してくれるのを待っている。隠し切れないこの想いを。

このような感じ。以下は個人的な解釈である。

想い人(婚約者か片想いの相手)が病気か事故で突然亡くなってしまい、主人公は受け入れる事ができない。しかし、忘れて前を向く為にあえて似ていない人を選んで付き合ったもしくは結婚した。が、結局忘れられない、もう隠し切れない。だから雨が洗い流してくれるのをずっと待っている。

死を連想してしまう理由はハッキリとは分からないが、もしかしたらダークな曲調と雨の鬱々うつうつとした感じがそう思わせるのかもしれない。それからオーケストラの音色も何となく神聖な場所……例えば教会のような場所で聞いているような錯覚さっかくおちいる。hydeは雨が好きでポジティブなイメージを持っていたと思うので私の解釈は正しいとは言えないかもしれない。が、曲は聞く人によって感じ方や受け取り方が違う。だから解釈の仕方は自由、と私は思っている。

タイトルの「EVERLASTING」は「永遠」という意味で「FOREVER」とほぼ同じ。しかし、「EVERLASTING」には「永遠に続く」という意味もある。「永遠」よりも「永遠に続く」の方が時間的に長い印象を持つし、もはや無限に近いのではないだろうか。

「Everlasting rain」とサビのコーラスでも歌われているが、「永遠に降り続く雨」「永遠に続く想い」という意味が込められているに違いない。洗い流して欲しいと願っても雨は永遠に降り続く、だから主人公の想いも永遠に続く……。

この曲のジャケットには少女が赤い傘を持っているイラストが描かれているのだが、私の中では喪服を着た女性が真っ黒な傘を持っているイメージである。(だから勝手に殺すな!と再びツッコミが入りそうな気がする)

さて、この曲を聞くと心がざわつくという話をしたが、実はもうひとつ違う感覚を抱く。それは「LORELEY」を聞いている時の感覚に非常に似ている。

この曲は1998年に発売された「HEART」の一番最初に収録されており、hydeが作詞作曲を手掛け、アルトサックスに挑戦した壮大なバラードである。「ローレライ」とはドイツのライン川上流の山の中にある名所。ドイツに滞在中、hydeはライン川沿いの古城に宿泊した際にこの曲を思いついたそうで詞にはライン川とローレライを見て感じた歴史の流れや重みが表現されている。この曲の雰囲気が壮大であるのはその為だろう。

一方「EVERLASTING」は作曲したkenよると「架空かくう異国民謡いこくみんよう」のイメージだという。確かに日本のイメージはないし「LORELEY」と似たような感覚を抱くのはこの曲がドイツのある風景から着想ちゃくそうを得た曲だからだろう。ドイツは実在する国なので架空ではないが我々日本人にとっては「異国」であることに変わりはないのだ。

「異国の音楽」と「死の匂い」(これは私の感覚だが)が混ぜ合わさると独特な世界観が出来上がる。やはりラルクアンシエルというバンドは只者ではない。また、この作品をシングル曲にするところにも彼らの絶対的な自信を感じる。バンドの人気を不動のものにしたからこそ出来たことでもある。駆け出しのバンドや全く売れていないバンドには絶対に出来ないことだ。

また、この曲はkenとtetsuyaによるツインギターで構成されており、ベースは完全に省かれている。私は二日連続でライブを観たにも関わらず全く気付かなかった。その後にこの曲について調べている時に初めて知りとても驚いたのだった。何故気が付かなかったのかというと、映像に映し出される歌詞を目で追っていたことと、ボーカルは言わずもがなドラムの音が非常に印象的で自分の耳がやたらドラムの音ばかり拾っていたからだ。

しかし、思い返してみると二日目にこの曲を聞いた時、確かtetsuyaがアウトロのギターの最後の一音を余韻を残すように長く弾いていたような気がする。その時に確か「このギターっててっちゃんが弾いてたの?!」と思ったような気もするのだ。(私の勘違いでもしかしたらkenかもしれないが)今まで忘れていたのはライブで様々なものを一気に吸収して一時的に記憶が飛んでしまったからなのかもしれない。

今回、二日連続で参戦して気付いたことがある。当たり前の事だが、音楽は耳で聞くもの。しかし、ライブだと音楽を全身で聞いているような感覚になるのだ。「EVERLASTING」を聞いた時にまさにそういう状態になり、曲が終わった後も余韻が抜けなかった。そんな状態で次に披露されたのは「forbidden lover」だった。この曲に関しては別記事に詳しい事を書いたが、「EVERLASTING」に続く悲恋ソングにますます心がざわついて気づいたら涙を流していた。

つまり、ライブは物凄いエネルギーが生まれる場所であり、それをダイレクトに吸収できる場所なのである。生の音や声が持つエネルギーは計り知れない。音源とは比べ物にならないのだということが改めて分かった。ライブを観てこの曲の良さをきちんと理解できた事が何よりの証拠である。

私は「感受性が強い」「感覚過敏」「繊細過ぎる」という特性を持っている。かなりこじつけかもしれないが、ライブは普段は厄介なそれらが非常にプラスに、またポジティブに働く場所なのかもしれない。
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