死生観から考察するラルクアンシエルの音楽

星名雪子

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forbbiden lover

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1998年10月に「snow drop」と共に二週連続発売されたシングル曲。アルバムでは1999年7月に「ray」と共に同時に発売された「ark」に収録されている。タイトルの意味は「禁断の恋人」敵国同士の恋を描いた曲だ。

yukihiroによるマーチングビートのような淡々としたドラムから始まり、憂いを帯びたhydeの静かな歌声が曲が展開するにつれ徐々に熱を帯びていく。クライマックスでは「神の名を」叫ぶように歌い、それがまるで双方の思いを爆発させたような哀愁のあるギターソロに繋がる。その間にもドラムは冷静さを保ち依然として淡々とビートを刻み、その上にtetsuyaによる流れるようなベースが絶えず乗る。

ギターのkenによるダークかつ叙情じょじょう的なメロディとhydeによる「争いの中で育まれる愛」をテーマにした歌詞。壮大で独特な世界観。これぞL'Arc~en~Cielという曲である。

実はファンになった当初、私にはこの曲の良さがよく分からなかった。当時、中学生の自分には歌詞の意味もシンプルで奥深い曲調も理解するには幼過ぎたのだろう。だから「snow drop」とほぼ同時期に発売されたと分かってもさほど興味を持てなかったのだ。しかし、大人になってから改めてこの曲を聞き鳥肌が立った。まるで物語の中に引きり込まれるかのような錯覚を覚え、主人公やその想い人が戦火の中で苦しみもがく姿が目に浮かんだのだ。

歌詞に言及する前にまずはメロディについて書いておきたい。この曲のテンポは前作である3枚同時発売の内の「花葬」アルバム「HEART」に収録されている「fate」と同じ。実はこの3曲とも作曲を手がけたのはkenで、これらは個人的にken作曲ソングで5本の指に入るぐらい好きな曲だ。

更に「fate」と「forbbiden lover 」はライブで繋げて歌われたことがあるのだが、順番といい演出といいその神パフォーマンスにファンから大絶賛されたことがある。(私もライブを実際に見たのだが感動で鳥肌が立った)何故こんなにもこの2曲を繋げてしっくり来るのか明確な理由がよく分からなかったのだが、どちらも戦争に翻弄される恋人の悲しい運命について歌っている事、またken作曲、しかも全く同じテンポだというのが最大の理由ではないだろうか。

歌詞は敵国同士の恋がテーマとなっており、想像しながら聞くと非常に切ない気持ちになる。特に2コーラス目からラストまでの歌詞は「どんなにお互いを想っていても結ばれることは決して許されない」という苦しみや辛さが、並べられた言葉の数々から溢れ出ている。

中でも「燃え盛る炎の中で怯えた目をして天を仰ぎながら、神の名を叫ぶ」というフレーズはまるで映画のワンシーンのように衝撃的でドラマチックである。主人公が天を仰いで慟哭どうこくする姿がありありと浮かぶのだ。

そしてラストのサビで主人公は「遠い地にいるあなたへこの想いよ届け」と、炎に包まれ晴れることのない曇天の空へ(これは歌詞にはなくこの曲のMVのイメージ)と必死に祈りを捧げる。この「遠い地」とは敵国のことかもしれないし、想い合っていた相手が命を落としてしまったのなら天国のことかもしれない。いずれにせよ愛する人に対する主人公の切々たる想いが溢れている。

ここでもう少し歌詞を深掘りしたいと思う。実はこの曲のテーマは「敵国同士の恋」だけではない。hydeは当時インタビューでこう語っている。(抜粋)

「歴史的な過ちとか統制とかそういう時代の不可思議なもの、戦争における時代のエゴな部分、たとえば人種の違いでなぜか殺されてしまったりとか。そういう歴史の陰の部分を感じ、国が争うことや神への疑問を歌詞にした」

つまりこの曲の根底にあるのは他でもない「反戦」なのである。今、地球の裏側では争いが絶えず起こり、私がこうして文章を打っている間にも沢山の人が命を落としている。曲のクライマックスに「叫ぶ神の名を」ラストで「新たなる国にやがて来る日にも」という強いフレーズが登場するが、hydeは更にこう語っている。

「『神』は象徴的なものとして残るとは思うけど、自分の詞の歴史の中で『国』を使ったことはたぶん無い」

それだけこの曲には「反戦」への強い思いが込められているのである。
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