だれでも先生

文野志暢

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二時間目

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おじいさんが席を立って前に行けば、お兄さんがきっちりと号令をかけます。

「起立、礼、お願いします。着席」

「今から国語の勉強をするぞ」

先生は黒板に【説明してみよう】と書きました。

「さて、りんごについて知っていることはあるかの」

何人かの生徒が手を上げます。

男の子が元気に「くだものです!」

おばあさんは優しい声で「丸い形だわ」

おじさんは少し考えて「赤色の実だな」

ロボットがピカピカと目を光らせて「バラ科の植物デスネ」

女の子が少し恥ずかしがりながら「うさぎさんにするとかわいいです」

と言いました。

「なかなか、なかなか。さて、皆さんいろんなことを知っているのう。この箱にはいろんなお題が入っている。三つの説明で他のみんなに伝えることができるかの」

と先生は言います。

最初はおばさん。彼女は少し考えてゆっくりと話します。

「水族館にいます。飛べない鳥です。泳ぐのが得意です」

三つの説明を聞いて、腕を組んで考える人、首をかしげている人、様々です。

「わかった!!」

元気に女の子が手を上げました。

「ペンギン!」

「正解です」

正解した女の子にみんなで拍手を送ります。

次はネコです。

「うー? あぁあれニャ。人が勉強とか仕事で使っている機械。人の指がチョロチョロ動く。座ると温かいニャ」

ネコはゆっくり考えて、なにかに気がついて説明をしますが、みんなキョトン顔。

「なんだろう?」

男の子がつぶやきます。

「あー、物がわかるけど名前がわからないワン」

とイヌが悔しそうに言います。

「指をチョロチョロ動かしながら、人が使う機械って?」

おじさんは首をかしげています。

ロボットの目がピカピカし、手を上げます。

「ネコさん、ズバリ答えはパソコンですね」

「正解ニャー」

大人はあーっと納得顔。

最後は少年です。

彼は紙をみてうーん、うーんと考えます。

「えーっと、甘いお菓子で、誕生日に食べることが多いです。後は……うーん、色んな形があります?」

三つの説明を聞いて、男の子が元気に手をあげます。

「わかった!ケーキだよ!」

「よかったあ。正解」

少年はホッとしました。

「簡単なお題でも説明が難しいものがあるのう」

ちょうど二時間目終了のチャイムがなります。
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