6 / 9
第六話
しおりを挟む
少女は考え込むようにして黙る。
やがて、ゆっくりとその口を開けた。
「わたくし、は…」
(どうしましょうか)
少女は焦っていた。必死にこの状況の打開策を思考している。
「クレアツィオーネ様……」
ふと、少女の口からでた名前。
(あ、もしかしてやらかしてしまったのでは…)
少女がそう思ったときにはもう、遅かった。
「どうして、その名前で呼んでいるの?」
律紀は訊く。優しく、けれど鋭さが垣間見える。
「大抵…人…恐れ多い…から……名前…呼ばない…」
詩音が口を開く。無口な彼が口を開くほど、この疑問は全員にとって重要なことだった。
(どうしましょう…!)
少女の焦りは大きくなっていく。
「わたくしは……クレアツィオーネ様が、大切で…とても…大好きで…」
少女の口は止まらない。自制できない。
それほどに感情がとめどなく溢れていた。
「私の支えだったのに……なんで、どうして、」
涙もとめどなく流れゆく。
やがて少女は泣きつかれて眠ってしまった。光樹は小声で話し出す。
「なぁ、みんなはどう思う?」
悠真、凱亜、詩音、由弦が話を聞こうと光樹に近づく。
律紀はただ一人、少女のそばから動かなかった。じっと少女を見つめている。慈しむように。悲しむように。
「小律?」
凱亜の声にハッとしたように律紀は振り向く。
「だいじょぶ?どしたよ?」
心配そうな凱亜達に、安心させるように律紀は笑みを浮かべる。
「ごめん、大丈夫。」
律紀も光樹の方へと向かう。
そして、話し合いは始まった。
「改めて言うね、みんなはどう思う?」
光樹の問いに由弦が答える。
「虐待痕は見当たらなかった。それらしい荷物も見当たらなかったし家出の可能性は低いと思う。」
その言葉に思い出したように詩音が呟く。
「傷跡……消えてた…?」
「オレが手当した跡は残っていたのにな。」
光樹は不思議そうに呟く。
「ねぇ」
律紀が顔を上げ、声を出す。
「あの子、聖職者だったりしない?」
シーンとなる。誰もが納得したからだ。
「I see.そうなると創造神様の名前を知ってるのも納得できるし、傷が治ったのも"祝福"のおかげだということで納得できるね。」
悠真が言う。
「なんで……記憶…ない?」
詩音が心底わからないといったように首をかしげる。
「神殿内で揉め事があったのか…一応警察で探っておく」
由弦が言ったのと同時に少女は目を覚ます。
見慣れない部屋に疑問を持ったのか首をかしげるが、光樹たちを見て思い出したように慌てる。
「皆様、先程は取り乱してしまい申し訳ございませんでした。」
そんな少女に光樹は近づいていく。
「君に名前をつけるよ。君の名前は凛雪だ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小律→律君
I see→なるほど
やがて、ゆっくりとその口を開けた。
「わたくし、は…」
(どうしましょうか)
少女は焦っていた。必死にこの状況の打開策を思考している。
「クレアツィオーネ様……」
ふと、少女の口からでた名前。
(あ、もしかしてやらかしてしまったのでは…)
少女がそう思ったときにはもう、遅かった。
「どうして、その名前で呼んでいるの?」
律紀は訊く。優しく、けれど鋭さが垣間見える。
「大抵…人…恐れ多い…から……名前…呼ばない…」
詩音が口を開く。無口な彼が口を開くほど、この疑問は全員にとって重要なことだった。
(どうしましょう…!)
少女の焦りは大きくなっていく。
「わたくしは……クレアツィオーネ様が、大切で…とても…大好きで…」
少女の口は止まらない。自制できない。
それほどに感情がとめどなく溢れていた。
「私の支えだったのに……なんで、どうして、」
涙もとめどなく流れゆく。
やがて少女は泣きつかれて眠ってしまった。光樹は小声で話し出す。
「なぁ、みんなはどう思う?」
悠真、凱亜、詩音、由弦が話を聞こうと光樹に近づく。
律紀はただ一人、少女のそばから動かなかった。じっと少女を見つめている。慈しむように。悲しむように。
「小律?」
凱亜の声にハッとしたように律紀は振り向く。
「だいじょぶ?どしたよ?」
心配そうな凱亜達に、安心させるように律紀は笑みを浮かべる。
「ごめん、大丈夫。」
律紀も光樹の方へと向かう。
そして、話し合いは始まった。
「改めて言うね、みんなはどう思う?」
光樹の問いに由弦が答える。
「虐待痕は見当たらなかった。それらしい荷物も見当たらなかったし家出の可能性は低いと思う。」
その言葉に思い出したように詩音が呟く。
「傷跡……消えてた…?」
「オレが手当した跡は残っていたのにな。」
光樹は不思議そうに呟く。
「ねぇ」
律紀が顔を上げ、声を出す。
「あの子、聖職者だったりしない?」
シーンとなる。誰もが納得したからだ。
「I see.そうなると創造神様の名前を知ってるのも納得できるし、傷が治ったのも"祝福"のおかげだということで納得できるね。」
悠真が言う。
「なんで……記憶…ない?」
詩音が心底わからないといったように首をかしげる。
「神殿内で揉め事があったのか…一応警察で探っておく」
由弦が言ったのと同時に少女は目を覚ます。
見慣れない部屋に疑問を持ったのか首をかしげるが、光樹たちを見て思い出したように慌てる。
「皆様、先程は取り乱してしまい申し訳ございませんでした。」
そんな少女に光樹は近づいていく。
「君に名前をつけるよ。君の名前は凛雪だ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小律→律君
I see→なるほど
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
解放
かひけつ
ファンタジー
ある少年は、抗った。
謎の施設。謎の検査。謎の生活。
頭が狂いそうになりながらも施設から出る方法を模索する。
使えるものを活かした反抗計画とその結末は……。
ある科学者は悩んだ。
時折、無力感や後悔の念が身を焦がす。
利口が故に、自己嫌悪に陥ってしまう。
悩みぬいた末に出した結論は……。
ある貴族は覚悟を決めた。
貴ばれる血族であるが故のプライド、
それ相応とは言い難い重しをつけさせられる。
一家を背負い込む覚悟を、世界を調和させることを……。
あるモノは、嘆いた。
自由にはなれない……。
そう思わせる程、管理されてしまった世界。
ここには情すら……ないのかもしれない……。
諦めかけていた、でも、希望が見えた気がした……。
その希望は現状を打開し、解放してくれるのだろうか?
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる