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Side View Story 14
14 Side 久 01話
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俺は今、ウィステリアホテル内にあるスタジオでスタンバイしている。
これから起こるのは「ドッキリカメラ」みたいなもの。
でも、これは俺が仕掛けたんじゃなくてオーナーが仕掛け人。
もっと言うなら、俺だって仕掛けられた側の人間だと思う。
「なんだ、浮かない顔して」
俺の肩を叩いたのはこの場の総責任者、佐々木繁春三十八歳。通称、シゲさん。
俺は普通にシゲさんって呼んでいるけど、ほかには「総長」なんて呼び名があったりする。
ここはホテルの中でも異質な場所だと思う。
ほかの部署で「総長」なんて呼ばれているボスはまずいないだろう。
シゲさんは営業企画部広報課と営業部宴会予約課のブライダルスタッフに籍をおき、主にはフォトグラファーである俺たちの管理とカメラ機材の管理を一手に任されている人。
因みに、俺のスケジュール管理や撮影に応じてアシスタントやスタッフを揃えてくれるのもシゲさん。
つまり、俺が久遠として活動するのに必要不可欠な存在。
「そりゃそうですよ。俺は彼女を知っているのにずっと黙ってきたんですから……。でもって、ここでご対面でしょ?」
間違いなく驚かせてしまう。
普段なら人を驚かせるのは大好きな人間だけど、今回のこれはちょっと性質が悪い。
「最初はクゥだって知らなかったんだから、全部オーナーが悪いってことにしちゃえばいいんだよ」
「ま、それが事実でそれがすべてなんですけど……」
俺はここで「クゥ」と呼ばれている。
名付け親は若槻さん。
「久遠」の「く」に母音をつけたものが呼び名となった。
思えば、俺が写真集を出すきっかけになったのは翠葉ちゃんなんだよなぁ――
三年前のある日の出来事。
「久遠、撮影スタッフと屋久島へ行ってこないか?」
月一の打ち合わせで唐突に言われた撮影旅行。
「これから夏休みだろう? 日程は久遠に合わせる」
何を突然、とは思ったけれど、オーナーが言い出したことはよほどのことがない限り、実行に移される。
出逢って数ヶ月とはいえ、そのくらいのことは身に染みるほどに理解していた。
加納が藤宮と懇意にしているのは「藤宮警備」が主体であり、次期会長のこの人と直接言葉を交わせる人間はまずいない。
俺はそんな人と仕事の契約を交わしたのだ。
「また、どうして屋久島なんですか?」
「親友の娘が行ってみたいと言っているらしくてね」
なら、親が連れて行ってあげたらいいんじゃないの?
「私も詳しくは知らないんだが、どうやら身体が丈夫ではないようだ。先日、うちの病院を紹介したんだがね」
イケメン中年が珍しくも苦い顔をする。
「自分で行けないってことですか?」
「さぁ、どうかな? なんせ、親友と言いつつ詳しいことは何も話してくれないからな」
「……その子のためだけに行ってこいと?」
「それなりの報酬は用意するし、のちのことも考えている」
のちのこと……?
「写真集を出さないか?」
「え……?」
オーナーは口端を上げ、
「悪い話ではないだろう?」
そのころ、俺は実績を作りたいと思っていたし、報酬自体も十分魅力的だった。
「道場が休みに入る期間でしたら……」
「決まりだな」
一週間の撮影期間は雨が降ったりなんだかんだと過酷なものではあったが、スタッフに支えられて納得のいくものを撮ることができた。
それこそ、朝から晩まで木に囲まれた場所でカメラを構えていたような一週間。
八月の半ばに撮影が終わり、写真のピックアップから編集までの一切を二ヶ月弱で終わらせ十月には発売。
出版なんてものが初めての俺にはそれがどのくらいすごいことなのかよくわからなかったけど、シゲさんに嫌というほど忙しかったことを訊かされれば相当大変な作業だったんだな、くらいには察する。
たかだか親友の娘のためにここまでするか……?
そうは思ったけど、オーナーを動かすだけの力を持つ人間がいるんだ、って思うと少し不思議な感じがした。
そして、オーナーの人間らしい部分を垣間見た気もしていた。
俺は撮りたいものを撮りたいだけ撮らせてもらえた、という実感しか得ないうちに初版が発売された。
初めての写真集のタイトルは「悠久」
初版にはシリアルナンバーが設けられている。
これらは実店舗の店頭にしか並ばない。
一定期間内に完売したら増刷されることが決まっていて、そうなったときにはネットショップにも流通することになっていた。
そして、初版の一冊に自分が好きなシリアルナンバーをつけていいと言われたのだ。
「……それ、自分に欲しいんですけど」
「彼女にか?」
「はい」
俺がこのバイトをしていることは茜以外誰も知らない。だから、ほかの誰に渡すことはない。
「じゃぁ、もうひとつだ。もうひとつシリアルナンバーを考えろ、桁数は問わない」
「いったいなんのために……?」
「契約どおり、初版のみメールフォームから届くメールに返信をしてもらう」
それは承知している。
「友人の娘からメールが届いたら、それに返事をしてほしい」
「……もとからそういう契約ですし」
「仕事は仕事でも、同じ目線でメールを書いてあげてほしいんだ」
シリアルナンバーは一商売戦術だと思っていたけれど、たぶん違う……。
本当は、その子からのメールに俺が気づくために用意されたものだ。
「じゃぁ、茜には〇三〇三で、その女の子には〇四二五。自分の誕生日で……」
写真集を発売してからしばらく経ったころ、オーナーの知り合いの娘、という子からメールが届いた。
ネーム欄には「Suiha」と表示されていた。
どんな字を書くのか想像もつかない名前に、俺はハンドルネームかな、と結論づけた。
久遠様
すてきな世界を見せてくださりありがとうございます。
私もカメラに興味を持ちました。
こんなすてきな世界は撮れそうにないけれど、
私の身の回りにあるものを
私が感じたままに表現できるようになりたいです。
Suiha
なんていうか、予備知識がなければなんてことのない文章だったんだ。
オーナーから身体が弱いってことを聞いていなければ、普通すぎる文章で、ありきたりのコメント。
でも、「すてきな世界」が指すそれが屋久島のことなのか、写真が見せる世界のことなのかに俺は悩むことになる。
次は、「すてきな世界は撮れそうにないけれど」。
それは、屋久島に行くことができないことを指しているのか、技術的な問題なのか。
もし前者の理由だとしたら、だから「身の回りにあるもの」を撮影対象にしようとしているのか――
考え出したらきりがなかった。
初版分、ほとんどのシリアルナンバーからアクセスがあり、それらすべてに返事をしても彼女のメールだけには返事を出せないでいた。
「まずい……。これじゃ契約違反になっちゃうよ」
シリアルナンバーごとに返信をしたかどうかがわかる一覧表が裏のウェブサイトに上がっているため、オーナーだけではなく、誰が見ても一目瞭然。
仕方がないから返信メールに悩んでいることをシゲさん経由でオーナーに伝えてもらった。
一ヶ月考えた返事がこれ――
Suiha様
初版をお手に取っていただきありがとうございます。
きっとSuihaさんにしか撮れない写真があります。
すてきなカメラライフが始まりますように。
自分もようやくスタートラインに立ちました。
久遠
今でも俺のパソコンには送信済みメールが残っている。
あれだけ悩んでこれしか書けなかった。
初版を手に取ることができたのは、オーナーがその親友とやらに直接手渡したからであり、彼女が店頭で手にしたわけではない。
が、そんなことを俺が知っているのはおかしい。
ただ、俺の写真でカメラに興味を持ってくれたのだとしたら、それは嬉しいと思うし楽しいものにしてもらいたい。
身体が弱いってどんななのかわからない。
俺は五体満足の健康優良児だし、幸い周りに身体の弱い人間はいなかった。
オーナーが動いたのは、それだけ大切な親友の娘だからなのか、それとも、その子の余命がわずかだからなのか。
そんなことだって知る由はない。
純粋に、写真を撮ることを楽しんでもらえたら、と思った。
性別はオーナーから聞いて知っていた。
年はメールフォームのアンケートから十代後半と知った。
十代後半と言えど、それが指す範囲は意外と広い。
とくに、この年頃の年令は、一歳の差がえらく大きく感じる。
けれど、オーナーの言った「同じ目線で」という言葉を加味するなら、俺と同世代という線が濃厚。
「同じ目線で」というのは、年相応、等身大の俺で、ということだと思ったからこそあの文章だった。
君は君で大変なことがあるのかもしれない。
でもさ、俺も俺で生きる道を構築中なんだよね。
君には君にしか撮れないものが絶対にある。
きっと、君が見る世界は俺が見ている世界とは異なると思うから。
うまい下手じゃなく、どう見せたいか。どう伝えたいか――
この子ならわかるんじゃないかと思った。
君はカメラライフのスタートラインに立ち、俺は自活していくためのスタートラインに立った。
ものは違ってもスタートラインに違いはない。
ここからがんばって歩いていこう?
そう思いをこめて書いたメールだったけど、あまりにも短い文章すぎてオーナーから苦情がくるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
けれども、何を言われるでもなかった。
その後、オフィシャルサイトに彼女の写真投稿が来るようになった。
寄せられるコメントやメールに返事はしない。
それは俺の学業を妨げないための対応策であり、より初版にプレミア度を増すための商売戦術でもある。
けど、いつもそのサイトには目を通していた。
彼女からの投稿がないか、と気にして。
メールの返信後はちょこちょこ投稿されていたけれど、春を迎えるころには途絶えた。
だから思ったんだ。
オーナーは何も言わないけど、もしかしたら亡くなったのかな、って……。
もしくは、すぐにカメラに飽きてしまったのかもしれない、と。
どっちにしても考え始めるとブルーになるから考えることを放棄した。
俺は知らなかったことにした。
何もなかったことにしたんだ――
これから起こるのは「ドッキリカメラ」みたいなもの。
でも、これは俺が仕掛けたんじゃなくてオーナーが仕掛け人。
もっと言うなら、俺だって仕掛けられた側の人間だと思う。
「なんだ、浮かない顔して」
俺の肩を叩いたのはこの場の総責任者、佐々木繁春三十八歳。通称、シゲさん。
俺は普通にシゲさんって呼んでいるけど、ほかには「総長」なんて呼び名があったりする。
ここはホテルの中でも異質な場所だと思う。
ほかの部署で「総長」なんて呼ばれているボスはまずいないだろう。
シゲさんは営業企画部広報課と営業部宴会予約課のブライダルスタッフに籍をおき、主にはフォトグラファーである俺たちの管理とカメラ機材の管理を一手に任されている人。
因みに、俺のスケジュール管理や撮影に応じてアシスタントやスタッフを揃えてくれるのもシゲさん。
つまり、俺が久遠として活動するのに必要不可欠な存在。
「そりゃそうですよ。俺は彼女を知っているのにずっと黙ってきたんですから……。でもって、ここでご対面でしょ?」
間違いなく驚かせてしまう。
普段なら人を驚かせるのは大好きな人間だけど、今回のこれはちょっと性質が悪い。
「最初はクゥだって知らなかったんだから、全部オーナーが悪いってことにしちゃえばいいんだよ」
「ま、それが事実でそれがすべてなんですけど……」
俺はここで「クゥ」と呼ばれている。
名付け親は若槻さん。
「久遠」の「く」に母音をつけたものが呼び名となった。
思えば、俺が写真集を出すきっかけになったのは翠葉ちゃんなんだよなぁ――
三年前のある日の出来事。
「久遠、撮影スタッフと屋久島へ行ってこないか?」
月一の打ち合わせで唐突に言われた撮影旅行。
「これから夏休みだろう? 日程は久遠に合わせる」
何を突然、とは思ったけれど、オーナーが言い出したことはよほどのことがない限り、実行に移される。
出逢って数ヶ月とはいえ、そのくらいのことは身に染みるほどに理解していた。
加納が藤宮と懇意にしているのは「藤宮警備」が主体であり、次期会長のこの人と直接言葉を交わせる人間はまずいない。
俺はそんな人と仕事の契約を交わしたのだ。
「また、どうして屋久島なんですか?」
「親友の娘が行ってみたいと言っているらしくてね」
なら、親が連れて行ってあげたらいいんじゃないの?
「私も詳しくは知らないんだが、どうやら身体が丈夫ではないようだ。先日、うちの病院を紹介したんだがね」
イケメン中年が珍しくも苦い顔をする。
「自分で行けないってことですか?」
「さぁ、どうかな? なんせ、親友と言いつつ詳しいことは何も話してくれないからな」
「……その子のためだけに行ってこいと?」
「それなりの報酬は用意するし、のちのことも考えている」
のちのこと……?
「写真集を出さないか?」
「え……?」
オーナーは口端を上げ、
「悪い話ではないだろう?」
そのころ、俺は実績を作りたいと思っていたし、報酬自体も十分魅力的だった。
「道場が休みに入る期間でしたら……」
「決まりだな」
一週間の撮影期間は雨が降ったりなんだかんだと過酷なものではあったが、スタッフに支えられて納得のいくものを撮ることができた。
それこそ、朝から晩まで木に囲まれた場所でカメラを構えていたような一週間。
八月の半ばに撮影が終わり、写真のピックアップから編集までの一切を二ヶ月弱で終わらせ十月には発売。
出版なんてものが初めての俺にはそれがどのくらいすごいことなのかよくわからなかったけど、シゲさんに嫌というほど忙しかったことを訊かされれば相当大変な作業だったんだな、くらいには察する。
たかだか親友の娘のためにここまでするか……?
そうは思ったけど、オーナーを動かすだけの力を持つ人間がいるんだ、って思うと少し不思議な感じがした。
そして、オーナーの人間らしい部分を垣間見た気もしていた。
俺は撮りたいものを撮りたいだけ撮らせてもらえた、という実感しか得ないうちに初版が発売された。
初めての写真集のタイトルは「悠久」
初版にはシリアルナンバーが設けられている。
これらは実店舗の店頭にしか並ばない。
一定期間内に完売したら増刷されることが決まっていて、そうなったときにはネットショップにも流通することになっていた。
そして、初版の一冊に自分が好きなシリアルナンバーをつけていいと言われたのだ。
「……それ、自分に欲しいんですけど」
「彼女にか?」
「はい」
俺がこのバイトをしていることは茜以外誰も知らない。だから、ほかの誰に渡すことはない。
「じゃぁ、もうひとつだ。もうひとつシリアルナンバーを考えろ、桁数は問わない」
「いったいなんのために……?」
「契約どおり、初版のみメールフォームから届くメールに返信をしてもらう」
それは承知している。
「友人の娘からメールが届いたら、それに返事をしてほしい」
「……もとからそういう契約ですし」
「仕事は仕事でも、同じ目線でメールを書いてあげてほしいんだ」
シリアルナンバーは一商売戦術だと思っていたけれど、たぶん違う……。
本当は、その子からのメールに俺が気づくために用意されたものだ。
「じゃぁ、茜には〇三〇三で、その女の子には〇四二五。自分の誕生日で……」
写真集を発売してからしばらく経ったころ、オーナーの知り合いの娘、という子からメールが届いた。
ネーム欄には「Suiha」と表示されていた。
どんな字を書くのか想像もつかない名前に、俺はハンドルネームかな、と結論づけた。
久遠様
すてきな世界を見せてくださりありがとうございます。
私もカメラに興味を持ちました。
こんなすてきな世界は撮れそうにないけれど、
私の身の回りにあるものを
私が感じたままに表現できるようになりたいです。
Suiha
なんていうか、予備知識がなければなんてことのない文章だったんだ。
オーナーから身体が弱いってことを聞いていなければ、普通すぎる文章で、ありきたりのコメント。
でも、「すてきな世界」が指すそれが屋久島のことなのか、写真が見せる世界のことなのかに俺は悩むことになる。
次は、「すてきな世界は撮れそうにないけれど」。
それは、屋久島に行くことができないことを指しているのか、技術的な問題なのか。
もし前者の理由だとしたら、だから「身の回りにあるもの」を撮影対象にしようとしているのか――
考え出したらきりがなかった。
初版分、ほとんどのシリアルナンバーからアクセスがあり、それらすべてに返事をしても彼女のメールだけには返事を出せないでいた。
「まずい……。これじゃ契約違反になっちゃうよ」
シリアルナンバーごとに返信をしたかどうかがわかる一覧表が裏のウェブサイトに上がっているため、オーナーだけではなく、誰が見ても一目瞭然。
仕方がないから返信メールに悩んでいることをシゲさん経由でオーナーに伝えてもらった。
一ヶ月考えた返事がこれ――
Suiha様
初版をお手に取っていただきありがとうございます。
きっとSuihaさんにしか撮れない写真があります。
すてきなカメラライフが始まりますように。
自分もようやくスタートラインに立ちました。
久遠
今でも俺のパソコンには送信済みメールが残っている。
あれだけ悩んでこれしか書けなかった。
初版を手に取ることができたのは、オーナーがその親友とやらに直接手渡したからであり、彼女が店頭で手にしたわけではない。
が、そんなことを俺が知っているのはおかしい。
ただ、俺の写真でカメラに興味を持ってくれたのだとしたら、それは嬉しいと思うし楽しいものにしてもらいたい。
身体が弱いってどんななのかわからない。
俺は五体満足の健康優良児だし、幸い周りに身体の弱い人間はいなかった。
オーナーが動いたのは、それだけ大切な親友の娘だからなのか、それとも、その子の余命がわずかだからなのか。
そんなことだって知る由はない。
純粋に、写真を撮ることを楽しんでもらえたら、と思った。
性別はオーナーから聞いて知っていた。
年はメールフォームのアンケートから十代後半と知った。
十代後半と言えど、それが指す範囲は意外と広い。
とくに、この年頃の年令は、一歳の差がえらく大きく感じる。
けれど、オーナーの言った「同じ目線で」という言葉を加味するなら、俺と同世代という線が濃厚。
「同じ目線で」というのは、年相応、等身大の俺で、ということだと思ったからこそあの文章だった。
君は君で大変なことがあるのかもしれない。
でもさ、俺も俺で生きる道を構築中なんだよね。
君には君にしか撮れないものが絶対にある。
きっと、君が見る世界は俺が見ている世界とは異なると思うから。
うまい下手じゃなく、どう見せたいか。どう伝えたいか――
この子ならわかるんじゃないかと思った。
君はカメラライフのスタートラインに立ち、俺は自活していくためのスタートラインに立った。
ものは違ってもスタートラインに違いはない。
ここからがんばって歩いていこう?
そう思いをこめて書いたメールだったけど、あまりにも短い文章すぎてオーナーから苦情がくるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
けれども、何を言われるでもなかった。
その後、オフィシャルサイトに彼女の写真投稿が来るようになった。
寄せられるコメントやメールに返事はしない。
それは俺の学業を妨げないための対応策であり、より初版にプレミア度を増すための商売戦術でもある。
けど、いつもそのサイトには目を通していた。
彼女からの投稿がないか、と気にして。
メールの返信後はちょこちょこ投稿されていたけれど、春を迎えるころには途絶えた。
だから思ったんだ。
オーナーは何も言わないけど、もしかしたら亡くなったのかな、って……。
もしくは、すぐにカメラに飽きてしまったのかもしれない、と。
どっちにしても考え始めるとブルーになるから考えることを放棄した。
俺は知らなかったことにした。
何もなかったことにしたんだ――
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