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45 Side 司 01話
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「翠葉、ごめんね~……私だけが勉強してて」
嵐が申し訳なさそうな顔で翠に謝る。
「今日一日くらい先に帰ってひとりで勉強すればいいものを」
俺が文句を口にすると、
「ホント、悪い……」
優太も申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。
「私が生徒会にいられるのって優太の苦労の結晶のようなものでね……」
説明を始める嵐に、
「話をする余裕があるなら先に帰れ」
俺が睨むと嵐はおとなしくなり、勉強の用意を始めた。
「翠は収支報告とリトルバンクの数字が一致しているかの確認。優太と俺はすでに分配してある金の残りそうな団体の予測。こんな作業に三日もかけるつもりはない。そのつもりで。はい、始め」
嵐を梅林館へ行かせて待たせることも可能だったが、あんなところへ放り込んだら間違いなく勉強ではなく被服関連の本を貪ることになるだろう。それで過去に一度、上位二十位から脱落しそうになったことがある。
忘れもしない去年の今ごろ、紫苑祭前のこの期間。今回と同じ中間考査での出来事。
だから今回はそんなヘマはしない。かといって、優太が教えながら作業を進められるか、というところまでは計算に入っていなかった。
間違いなく、嵐に解き方を訊かれては作業が中断し、そのたびに考え中だったものを無に帰している。それには翠も気づいているようで、さっきからチラチラとふたりを気にしていた。
「ツカサ、私、優太先輩と仕事変わってもいい?」
「あ、翠葉ちゃん、それは申し訳ないからいいよ。こっち、かなりハードだし」
「だから、です。算段しながら別のことをするの、男の人は苦手なのでしょう?」
読書好きだとは聞いていたが、そういう本も読むんだな。
思いながらディスプレイの数字に目を走らせる。
「ウェイトがかかっていいならいい」
俺が答えると、視界の端に少し首を捻った翠が入り込んだ。
翠が「代わります」と言うと、
「じゃ、お言葉に甘えて……。こことかここにある数字。これが材料調達申請時の金額よりも下回って超過申請になってるケース。それらの金額を片っ端から集めていって、どのくらいの額になるのか、それをどこに充当するのかを考える作業なんだ。エクセルのここに数値を入れていくと、勝手に計上してくれる。……大丈夫そう?」
どうせならショートカットキーの使い方くらい少し教えてやれ、とは思うものの、慣れない操作までさせてデータが狂うよりは、マウスで無駄な動きをしてもらったほうがいいのかもしれない。
「はい、大丈夫です」
「わからないことがあったら――」
「俺に訊け」
おまえ、嵐の勉強を見ていて今の状況に至ったことを忘れてないか? これで翠までおまえにわからないことを聞いていたら、今度こそ何もできなくなるだろ。
パソコンの表示される時計が三時を知らせる。
「各自進捗状況の報告を」
俺の言葉に翠と優太が顔を上げた。
「うぉー……悔しい、あと三十分もあれば終わりそうなんだけどな」
そう言った優太は嵐に進行を阻害されつつも、五分の四程度は終わらせていた。
「私はまだどこに運用するかは考えていなくて、とりあえず数字をはじきだす作業をしてました。現時点でエクセル入力必須の計上自体は七分の四か五程度」
妙に細かい数字に笑いそうになる。
「俺も先に使途不明金になりそうな金額のピックアップを進めている。嵐、今からおまえも一時会計」
「はっ!?」
問題集から顔を上げた嵐が嫌そうな顔をする。
なんでそんなに数字が嫌いなんだか……。
「別に難しいことじゃない。優太がやっていた収支報告とリトルバンクの照らし合わせ作業だ。残り少ないから、こっちのペースに流されずにやれ。ゆっくりでいいから、絶対に間違えるな。今まで作業している人間たちの目の前で二時間は勉強したんだ、そのくらいは手伝えるよな?」
嫌とは言えないだろう。
「わかったわよぅ……やるわよ」
目でわかる。「どうして勉強以外で数字を見なくちゃいけないの」と言っているのが。
「こっちの残りは三人でやれば二時間程度で終わらせられるだろう」
途中で休憩を挟んで翠には糖分を補給させる必要があるし、こっちの作業じゃ優太の集中力も途中で切れる。それでも、休憩を入れても五時前後には終わるはず……。
「ええええっ!? だってそれ、去年の体育祭のよりも大変な作業なんでしょっ!?」
テスト前のこの期間、毎日放課後に残るなんてことをしていたら、翠のテスト勉強に支障が出る。
翠の身体にこれ以上の負担をかけると、慢性疲労症候群の悪化につながりかねないし、だからといって翠だけをこの作業から外すと翠はいい思いはしないだろう。
それなら、今日明日中には片付けることが必須。
「最初に言った。こんな作業に三日もかけるつもりはない」
「……嵐子、このふたりの頭脳を甘く見ちゃいけない。方や未履修分野を異例の速さでパスした前代未聞の外部生。方や藤宮に入学してから一度もその座を譲らないという俺たちの学年首位様だ。しかも、ふたりは各学年の理系のトップ」
「あの、理系のトップってなんですか?」
翠の質問に、「あぁ、そうか」と思う。
「翠は見てないからな……。学期ごと、終業式の朝には文系と理系のランキング表がテスト後と同じ要領で昇降口入ってすぐの廊下に貼りだされる」
実際、あの状況でよくそれだけの成績を維持したものだと感心する。
当初三時までの予定だった作業は、間に二回の休憩を挟んで五時過ぎまでかかった。
図書室の外には夕焼けがきれいに広がる。
この季節の朝焼けもきれいだが、目の前の夕焼けに釘付けになっている翠は知っているだろうか。
優太と嵐はバス停へ向かい、俺と翠はマンションに向かって歩きだす。
一般道に出てすぐのところにうちの生徒がいた。
「朝霧、今は部活動禁止期間のはずだけど?」
「学校にはちゃんと許可証発行してもらってるからお咎めなしだよ。いい感じに雲がある日の夕焼けを撮りたくてさ。藤宮たちは――あ、あのマンションか。待ってるからとっとと坂上がっちゃってね」
なるほど……。
「翠、行こう」
「は、はい。……部活動?」
「あぁ、映研部の撮影らしい」
そこにいる人間を不思議そうな顔をして眺めている翠に先を促す。
この時期、俺たち会計にはそのほかの仕事が振られていないこともあり、どこの部が特別申請をしているなどの把握はしていなかった。
テスト前の部活動禁止期間に堂々と活動をしているあたり、特別申請が通ってのことなのだろう。
「体調は?」
隣を歩く翠に訊くと、
「最近、ことあるごとにそればかり訊かれてる気がする」
仕方ないだろ……。
「俺の携帯にはもうバイタルが転送されてないんだから訊くしかないだろ」
それに数値だけですべてが把握できるわけじゃない。
「微熱は続いてるけど、まだ大丈夫……」
翠は言うなり視線を足元に落とした。
バカだ……。翠はものすごくバカだと思う。
前髪が伸びて左サイドに流すようになってから、妙に叩きやすそうな額だとは思っていた。
そこを目がけて手を伸ばす。と、ペシ、といい音が鳴り翠が顔を上げた。
「まだ大丈夫なうちに対処が必要だって、いつになったら学習する?」
「……どうせ万年首位の人には敵いませんっ」
「そういう問題じゃないだろ……。翠はもっと自分の身体の扱い方を学ぶべきだし、もっと大切に扱うべきだ」
なんていうか、こんな反撃が返ってくるとは思っていなかった。しかも、ありえないほど的外れ……。
「……ツカサ」
隣を歩いていたはずの翠の声が後方から聞こえてきた。
翠は歩くことをやめ、足を止めたその場から俺を見ていた。
「たとえば自分の身体の扱い方を知っていたとして、ちゃんと大切に扱うことができるとして、それで友達と別行動することになるとしたら――ツカサはどっちを取る?」
小さな声ははっきりと言葉を紡ぐ。けれど、瞳は不安に揺らいでいた。
「……悪い、そういうつもりで言ったわけじゃない」
そういうつもりじゃない。翠がいつもその狭間で苦しんでいるのは知っているけれど、言わずにはいられない。先週の発作を見てしまうと余計に……。
「うん、わかってる。ツカサが言っている意味もわかってて、自分がどうしなくちゃいけないのかもわかってて――でもね、そこが私の最大の葛藤なの。うまく折り合いをつけられる場所が見つけられない」
翠の意思を尊重したいと思う気持ちと、体調のことを考えてセーブしようとする自分。
バイタルを知ることができたら、あとどのくらいは大丈夫、と自分の中にバロメーターをもてるのに……。
今はそういうツールがないからこそ、ことあるごとに翠に訊くしかなくて……。
もしかしたら、小姑のように思われているのかもしれない。
「もう一度、俺の携帯にバイタルの転送してもらえるように――」
最後まで言い終わらないうちに、「それはだめ」と笑顔で制された。
間違いなく作り笑顔。下手くそ――
「そんな眉間にしわを寄せてもだめ」
「なんで」
「ツカサが第二の蒼兄になっちゃうから」
今の俺ってそんなふうに見えるのか?
「……帰ろう?」
歩くのを再開した翠は、俺を追い越したところで躓いた。
「ドジ……」
手を差し出せば少し恥ずかしそうに笑い、「ありがとう」と手を重ねる。
重ねられた手を見て思う。
翠、全部を諦めろなんて言わない。ただ、もう少しゆっくりでいいんじゃないか……?
俺はもう二年だけど、翠はまだ一年なんだ。高校生活はまだ半分以上残っている。今からそんなに焦らなくてもいいと思う。
いつもなら、俺だってすぐに答えを欲しいと思う。何を考えるより先に、答えにたどり着く最短ルートを探す。けど今は――
翠に関することだけはもう少しゆっくり――色んなことを考えながら、選びながら前に進みたいと思う。
急ぎたくない。もう少しゆっくり……俺と一緒に歩かないか?
嵐が申し訳なさそうな顔で翠に謝る。
「今日一日くらい先に帰ってひとりで勉強すればいいものを」
俺が文句を口にすると、
「ホント、悪い……」
優太も申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。
「私が生徒会にいられるのって優太の苦労の結晶のようなものでね……」
説明を始める嵐に、
「話をする余裕があるなら先に帰れ」
俺が睨むと嵐はおとなしくなり、勉強の用意を始めた。
「翠は収支報告とリトルバンクの数字が一致しているかの確認。優太と俺はすでに分配してある金の残りそうな団体の予測。こんな作業に三日もかけるつもりはない。そのつもりで。はい、始め」
嵐を梅林館へ行かせて待たせることも可能だったが、あんなところへ放り込んだら間違いなく勉強ではなく被服関連の本を貪ることになるだろう。それで過去に一度、上位二十位から脱落しそうになったことがある。
忘れもしない去年の今ごろ、紫苑祭前のこの期間。今回と同じ中間考査での出来事。
だから今回はそんなヘマはしない。かといって、優太が教えながら作業を進められるか、というところまでは計算に入っていなかった。
間違いなく、嵐に解き方を訊かれては作業が中断し、そのたびに考え中だったものを無に帰している。それには翠も気づいているようで、さっきからチラチラとふたりを気にしていた。
「ツカサ、私、優太先輩と仕事変わってもいい?」
「あ、翠葉ちゃん、それは申し訳ないからいいよ。こっち、かなりハードだし」
「だから、です。算段しながら別のことをするの、男の人は苦手なのでしょう?」
読書好きだとは聞いていたが、そういう本も読むんだな。
思いながらディスプレイの数字に目を走らせる。
「ウェイトがかかっていいならいい」
俺が答えると、視界の端に少し首を捻った翠が入り込んだ。
翠が「代わります」と言うと、
「じゃ、お言葉に甘えて……。こことかここにある数字。これが材料調達申請時の金額よりも下回って超過申請になってるケース。それらの金額を片っ端から集めていって、どのくらいの額になるのか、それをどこに充当するのかを考える作業なんだ。エクセルのここに数値を入れていくと、勝手に計上してくれる。……大丈夫そう?」
どうせならショートカットキーの使い方くらい少し教えてやれ、とは思うものの、慣れない操作までさせてデータが狂うよりは、マウスで無駄な動きをしてもらったほうがいいのかもしれない。
「はい、大丈夫です」
「わからないことがあったら――」
「俺に訊け」
おまえ、嵐の勉強を見ていて今の状況に至ったことを忘れてないか? これで翠までおまえにわからないことを聞いていたら、今度こそ何もできなくなるだろ。
パソコンの表示される時計が三時を知らせる。
「各自進捗状況の報告を」
俺の言葉に翠と優太が顔を上げた。
「うぉー……悔しい、あと三十分もあれば終わりそうなんだけどな」
そう言った優太は嵐に進行を阻害されつつも、五分の四程度は終わらせていた。
「私はまだどこに運用するかは考えていなくて、とりあえず数字をはじきだす作業をしてました。現時点でエクセル入力必須の計上自体は七分の四か五程度」
妙に細かい数字に笑いそうになる。
「俺も先に使途不明金になりそうな金額のピックアップを進めている。嵐、今からおまえも一時会計」
「はっ!?」
問題集から顔を上げた嵐が嫌そうな顔をする。
なんでそんなに数字が嫌いなんだか……。
「別に難しいことじゃない。優太がやっていた収支報告とリトルバンクの照らし合わせ作業だ。残り少ないから、こっちのペースに流されずにやれ。ゆっくりでいいから、絶対に間違えるな。今まで作業している人間たちの目の前で二時間は勉強したんだ、そのくらいは手伝えるよな?」
嫌とは言えないだろう。
「わかったわよぅ……やるわよ」
目でわかる。「どうして勉強以外で数字を見なくちゃいけないの」と言っているのが。
「こっちの残りは三人でやれば二時間程度で終わらせられるだろう」
途中で休憩を挟んで翠には糖分を補給させる必要があるし、こっちの作業じゃ優太の集中力も途中で切れる。それでも、休憩を入れても五時前後には終わるはず……。
「ええええっ!? だってそれ、去年の体育祭のよりも大変な作業なんでしょっ!?」
テスト前のこの期間、毎日放課後に残るなんてことをしていたら、翠のテスト勉強に支障が出る。
翠の身体にこれ以上の負担をかけると、慢性疲労症候群の悪化につながりかねないし、だからといって翠だけをこの作業から外すと翠はいい思いはしないだろう。
それなら、今日明日中には片付けることが必須。
「最初に言った。こんな作業に三日もかけるつもりはない」
「……嵐子、このふたりの頭脳を甘く見ちゃいけない。方や未履修分野を異例の速さでパスした前代未聞の外部生。方や藤宮に入学してから一度もその座を譲らないという俺たちの学年首位様だ。しかも、ふたりは各学年の理系のトップ」
「あの、理系のトップってなんですか?」
翠の質問に、「あぁ、そうか」と思う。
「翠は見てないからな……。学期ごと、終業式の朝には文系と理系のランキング表がテスト後と同じ要領で昇降口入ってすぐの廊下に貼りだされる」
実際、あの状況でよくそれだけの成績を維持したものだと感心する。
当初三時までの予定だった作業は、間に二回の休憩を挟んで五時過ぎまでかかった。
図書室の外には夕焼けがきれいに広がる。
この季節の朝焼けもきれいだが、目の前の夕焼けに釘付けになっている翠は知っているだろうか。
優太と嵐はバス停へ向かい、俺と翠はマンションに向かって歩きだす。
一般道に出てすぐのところにうちの生徒がいた。
「朝霧、今は部活動禁止期間のはずだけど?」
「学校にはちゃんと許可証発行してもらってるからお咎めなしだよ。いい感じに雲がある日の夕焼けを撮りたくてさ。藤宮たちは――あ、あのマンションか。待ってるからとっとと坂上がっちゃってね」
なるほど……。
「翠、行こう」
「は、はい。……部活動?」
「あぁ、映研部の撮影らしい」
そこにいる人間を不思議そうな顔をして眺めている翠に先を促す。
この時期、俺たち会計にはそのほかの仕事が振られていないこともあり、どこの部が特別申請をしているなどの把握はしていなかった。
テスト前の部活動禁止期間に堂々と活動をしているあたり、特別申請が通ってのことなのだろう。
「体調は?」
隣を歩く翠に訊くと、
「最近、ことあるごとにそればかり訊かれてる気がする」
仕方ないだろ……。
「俺の携帯にはもうバイタルが転送されてないんだから訊くしかないだろ」
それに数値だけですべてが把握できるわけじゃない。
「微熱は続いてるけど、まだ大丈夫……」
翠は言うなり視線を足元に落とした。
バカだ……。翠はものすごくバカだと思う。
前髪が伸びて左サイドに流すようになってから、妙に叩きやすそうな額だとは思っていた。
そこを目がけて手を伸ばす。と、ペシ、といい音が鳴り翠が顔を上げた。
「まだ大丈夫なうちに対処が必要だって、いつになったら学習する?」
「……どうせ万年首位の人には敵いませんっ」
「そういう問題じゃないだろ……。翠はもっと自分の身体の扱い方を学ぶべきだし、もっと大切に扱うべきだ」
なんていうか、こんな反撃が返ってくるとは思っていなかった。しかも、ありえないほど的外れ……。
「……ツカサ」
隣を歩いていたはずの翠の声が後方から聞こえてきた。
翠は歩くことをやめ、足を止めたその場から俺を見ていた。
「たとえば自分の身体の扱い方を知っていたとして、ちゃんと大切に扱うことができるとして、それで友達と別行動することになるとしたら――ツカサはどっちを取る?」
小さな声ははっきりと言葉を紡ぐ。けれど、瞳は不安に揺らいでいた。
「……悪い、そういうつもりで言ったわけじゃない」
そういうつもりじゃない。翠がいつもその狭間で苦しんでいるのは知っているけれど、言わずにはいられない。先週の発作を見てしまうと余計に……。
「うん、わかってる。ツカサが言っている意味もわかってて、自分がどうしなくちゃいけないのかもわかってて――でもね、そこが私の最大の葛藤なの。うまく折り合いをつけられる場所が見つけられない」
翠の意思を尊重したいと思う気持ちと、体調のことを考えてセーブしようとする自分。
バイタルを知ることができたら、あとどのくらいは大丈夫、と自分の中にバロメーターをもてるのに……。
今はそういうツールがないからこそ、ことあるごとに翠に訊くしかなくて……。
もしかしたら、小姑のように思われているのかもしれない。
「もう一度、俺の携帯にバイタルの転送してもらえるように――」
最後まで言い終わらないうちに、「それはだめ」と笑顔で制された。
間違いなく作り笑顔。下手くそ――
「そんな眉間にしわを寄せてもだめ」
「なんで」
「ツカサが第二の蒼兄になっちゃうから」
今の俺ってそんなふうに見えるのか?
「……帰ろう?」
歩くのを再開した翠は、俺を追い越したところで躓いた。
「ドジ……」
手を差し出せば少し恥ずかしそうに笑い、「ありがとう」と手を重ねる。
重ねられた手を見て思う。
翠、全部を諦めろなんて言わない。ただ、もう少しゆっくりでいいんじゃないか……?
俺はもう二年だけど、翠はまだ一年なんだ。高校生活はまだ半分以上残っている。今からそんなに焦らなくてもいいと思う。
いつもなら、俺だってすぐに答えを欲しいと思う。何を考えるより先に、答えにたどり着く最短ルートを探す。けど今は――
翠に関することだけはもう少しゆっくり――色んなことを考えながら、選びながら前に進みたいと思う。
急ぎたくない。もう少しゆっくり……俺と一緒に歩かないか?
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