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Side View Story 06
31~33 Side 秋斗 01話
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「さて、そろそろゲストルームへ戻ろうか」
もう五時を回っているし、そろそろ栞ちゃんも帰ってくるころだ。
彼女はベッドサイドの時計を見て、「はい」と答えた。
その彼女を抱きかかえようとすると、手で遮られる。
「あのっ……歩けるかもしれないから、だから……手を貸してもらってもいいですか?」
確かに、今日は多少身体を起こしていられたようだけど……。
「俺に抱っこされるのはそんなに嫌?」
「……そういうことじゃなくて、自分で立てるなら自分で立ちたいし、歩きたいから……」
「……了解」
翠葉ちゃん、今の言葉は信じていいのかな。他意はないと、信じてもいいかな?
でも、今日は色々しちゃったからなぁ……。
それに拍車をかけて美波さんの性教育ときたもんだ。
彼女が今、心の中で何を考えているのかはちょっと想像しがたい。
彼女が今まで受けてきた性教育がどんなものかも知らなければ、学校で行われる性教育に彼女が出席できていたのかも危うい。
本は好きだと聞いているけれど、どんな本を読むのか……。
とりあえず、濃厚なラブシーンが出てくるような本を読んでいるとは到底思えない。
よこしまなことを考えている俺の目の前で、彼女はゆっくりと上体を起こし、ベッドに腰掛けるようにして足を下ろした。そして、いつもと同じように深呼吸をいくつかしてから立ち上がる。
掴まれた手がぎゅっと握られた。
眩暈、起こしてるんだろう……?
そのまま彼女を抱きしめる。
「無理、してるんじゃないの?」
「このくらいはいつものことです。少ししたら視界がクリアになるかもしれないから、もう少しだけ待ってください」
いつもならこの程度のことでも顔を赤く染める。しかし、今はそれも見られない。
自分の身体で手一杯な状況の彼女をかわいそうだと思う反面、どこか面白くないと思う自分もいた。
自分の気持ちを持て余していると、俺にかかっていた体重が少し軽くなる。
視界がクリアになったか……。
「残念……ずっと抱きしめていたいのに」
言って彼女の頬にキスをすると、
「――もうっ、人前でキスしたら怒りますからねっ!?」
上目遣いで睨まれた。
「はいはい」
君はどんな顔をしてどんな声を出してもかわいいな。
そう思うたびに思い知らされる。こんな気持ちにさせられたことなど、今までに一度もないと。
こんな愛しい存在には、今まで一度も出逢ったことがない。
彼女をエスコートして廊下を歩くけれど、翠葉ちゃん、君の靴はないんだよ?
きっとそんなことには気づかず玄関に向かっているのだろう。
案の定、玄関まで来て彼女は呆然とした。
「やっぱり抱っこだね」
彼女に何を言う間も与えずに横抱きにすると、「きゃっ」と小さな声があがり、すぐに顔を髪の毛で隠そうとする。
「葵には腕を回していたのに、俺にはしてくれないの?」
「高崎さんは特別です……」
「……それ、面白くないな」
「……だって、蒼兄と同じ気がするから」
もうさ、俺も本音で話させてもらっていいかな?
「なら別にいい、とか言ってあげられるほど心は広くないんだよね」
口にしてすぐ、彼女の唇を奪う。まるで苺でも食むように。
「っ……秋斗さんっ」
「何? 誰も見てないよ?」
本当は誰が見てるとか見てないとか、そういう問題じゃないんだろう?
「……秋斗さんは慣れているのかもしれないけど、私は……私は、慣れていないんです」
ほらね……。
「俺だって好きな子にキスをするのは慣れていないけどね」
そう言うと、無言で靴を履き、身体を使って玄関のドアを開け家を出た。
さっきはかばんやケーキがあったから葵を呼んだけど、とくに持つものがない今は誰を呼ぶ必要もない。
九階では彼女が進んでドアを開けてくれるだろう。早く俺から離れたい一心で。
それも面白くはないけど、ここで葵を呼んでまた葵に逃げられるのを見て平常心でいられるほど大人でもないみたいだから。
……俺、どうしてこんなにも余裕がないかな。
自分で自分の欲求を抑えられる自信がまったくない。これじゃ彼女が怯えても仕方がない。
会話なくエレベーターホールでエレベーターを待っていると、一階から上がってきたエレベーターに蒼樹と若槻が乗っていた。
それに気づいた彼女は、「蒼兄っ」と俺の胸から離れる。
言葉も何も出なかった。
「危ないっ」とすぐさま彼女を受け止めたのは若槻で、その場の男はみんな肝を冷やしただろう。
「翠葉ちゃん……今のはないんじゃないかな」
こんなことが言いたいんじゃない……。
でも、怪我がなくて良かった、とそう思っても口にできない何かがあった。
彼女の目には怯えが見て取れた。
若槻に抱きとめられた彼女を蒼樹が抱き上げる。すると、彼女は蒼樹の首に両腕を回し、助けを乞うように縋りつく。
「秋斗さん、リィに何かした?」
「とくには? 恋人にすることをしたくらいじゃないかな」
いつものように笑みを浮かべてみたものの、自分がしっくりこない。
気になるのは彼女の思いのみ。
そこへ急に雨が降り出した。
夕立か……?
「緑が喜ぶね……」
彼女の小さな呟きに、蒼樹が「そうだな」と答える。
「最悪……。バケツひっくり返したような雨じゃん」
若槻がふたりの隣に並ぶと、本当の兄妹のように見えた。
なんとなしに彼女の顔を見た若槻は、
「リィ?」
「なんでしょう……」
「なんか複雑な顔してる」
「……雨は嫌いじゃないんです。でも、低気圧は好きじゃないかな」
「それ、矛盾してない?」
……痛み、だろうな。疼痛発作を恐れるから低気圧が怖いんだ。
何も答えない彼女の代わりに蒼樹が口を開いた。
「雨は好きなんだ。ただ、低気圧が来ると疼痛発作を起こしやすくなるから……。だから苦手なんだよ」
「疼痛まで持ってるのっ!?」
若槻が訊けば、彼女は苦笑を返す。
「……原因わかってなくて、あまり有効な対処法がないんです」
「そっか……」
彼女は時々こちらに視線をよこすものの、困惑した顔で視線を逸らす。
間違いなく、俺、態度にも顔にも出てるんだろうな。どこかで切り替えないと――
そんなことを考えていると、少し前に一階へ下りていったエレベーターが十階に着いた。
中から出てきたのは司。
「司、ずいぶん濡れたな」
蒼樹が声をかけると、言ってくれるな、と言わんばかりにため息をひとつついた。
そこに、思いも寄らない声が聞こえてくる。
「……水も滴るいい男?」
彼女だ。
蒼樹の肩越しに司を見て目を見開いていた。
まいったな、すごい打撃だ。
「わ……余計なこと言ったかも」
彼女は考えていること駄々漏れの口を手で押さえる。
こういう子なんだけど、正直今はきつい……。
「翠……感情駄々漏れっていうか、口から漏れてるから」
司が呆れ気味に答え、「すぐそこまで来て急に降られた」と前髪をかき上げる。
その司に釘付けになる彼女……。
「翠葉……それこそ感情駄々漏れだ」
蒼樹が苦笑しながら彼女を諭す。と、恨めしい顔をして、
「……だって、格好いいんだもの」
「リィは正直だな。彼氏に昇格した秋斗さん形無しだね」
若槻はおかしそうにくつくつと笑っていた。
今の自分は見られたくない。
そうは思っても、そんなタイミングで俺を見てくるのが彼女だったりする。
彼女は俺の顔を見てはっとしたようだった。
「どうしよう……」と文字が顔に貼り付いている。なのに、気まずそうに視線を逸らしては、また司を見て目を輝かせるのだから、どうしたらいいものか……。
その彼女の視線を察知してか、
「……見られすぎると減る」
司、それ……今の俺からは嫌みにしか聞こえないんだけど……。
「司、早くシャワー浴びないと風邪ひくぞ」
蒼樹が声をかけると、
「そうします。ここにいると、自分がどんどん減りそうなので」
と、ホールを突っ切った。
その間も彼女はずっと司を見ていた。
司と目が合ったときには、蒼樹のシャツを握る手に力が入ったほど。
「そんなに司の容姿が好き?」
訊くつもりはなかったけど、少しいじめずにはいられなかった。
しかし、彼女にそんなことが通じるわけがなく、
「……えと、すごく格好いいと思います。ど真ん中ストライクくらいには」
赤面したまま俺の目を見て答えるから、自爆したのが俺なのか彼女なのかわからなくなる。
「……ここにいるのもなんだから、ゲストルームへ行こう」
ゲストルームへ向かいながら思う。
これじゃ昼間の移動のときと何も変わらない。むしろ、今のほうがひどい気がする。
部屋に着いたら蒼樹と若槻を締め出してキス攻めだ……。
それで済めばいいけど、正直自信がない。
胸もとにキスマークでもつけようか。それとも、自分の視界に必ず入る鎖骨の上とか……。
この際、誰に見られるとかどうでも良くなってきていた。
彼女の使っている部屋で待っていると、
「秋斗先輩はあっち」
「秋斗さんしばらく立ち入り禁止」
蒼樹と若槻に追い出された。
この付け焼刃兄妹がっ――
「ほぉ……人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られるって知ってるか?」
「兄妹って馬に蹴られるほうが痛いと思うよ」
にこりと笑った若槻に一蹴された。
で、リビングに行くでもなくその場にしゃがみこんでいる俺はどうしたらいいものか。
翠葉ちゃん、俺のこと好きなんだろ? それなら全部俺に任せてよ。
警戒なんてしてほしくないんだけどな……。
……いっそ彼女のすべてを奪ってしまおうか。
いやいやいやいや、それ犯罪だし。
でも、怖いことじゃないと教えるにはどうしたらいい?
そんなことすらわからない。
女なんて飽きるほど抱いてきた。たいていの女なら快感へと誘う自信もある。
でも、初めての子を相手にレクチャーするのは俺が初めてで、楽しみだと思っていたことが今となってはどうしたらいいのかさっぱりだ。
身体でわからせたい。そう思う自分の強欲さが募るばかり。
俺、どうしたらいい? このままだと、明日には彼女を襲ってしまいそうだ――
もう五時を回っているし、そろそろ栞ちゃんも帰ってくるころだ。
彼女はベッドサイドの時計を見て、「はい」と答えた。
その彼女を抱きかかえようとすると、手で遮られる。
「あのっ……歩けるかもしれないから、だから……手を貸してもらってもいいですか?」
確かに、今日は多少身体を起こしていられたようだけど……。
「俺に抱っこされるのはそんなに嫌?」
「……そういうことじゃなくて、自分で立てるなら自分で立ちたいし、歩きたいから……」
「……了解」
翠葉ちゃん、今の言葉は信じていいのかな。他意はないと、信じてもいいかな?
でも、今日は色々しちゃったからなぁ……。
それに拍車をかけて美波さんの性教育ときたもんだ。
彼女が今、心の中で何を考えているのかはちょっと想像しがたい。
彼女が今まで受けてきた性教育がどんなものかも知らなければ、学校で行われる性教育に彼女が出席できていたのかも危うい。
本は好きだと聞いているけれど、どんな本を読むのか……。
とりあえず、濃厚なラブシーンが出てくるような本を読んでいるとは到底思えない。
よこしまなことを考えている俺の目の前で、彼女はゆっくりと上体を起こし、ベッドに腰掛けるようにして足を下ろした。そして、いつもと同じように深呼吸をいくつかしてから立ち上がる。
掴まれた手がぎゅっと握られた。
眩暈、起こしてるんだろう……?
そのまま彼女を抱きしめる。
「無理、してるんじゃないの?」
「このくらいはいつものことです。少ししたら視界がクリアになるかもしれないから、もう少しだけ待ってください」
いつもならこの程度のことでも顔を赤く染める。しかし、今はそれも見られない。
自分の身体で手一杯な状況の彼女をかわいそうだと思う反面、どこか面白くないと思う自分もいた。
自分の気持ちを持て余していると、俺にかかっていた体重が少し軽くなる。
視界がクリアになったか……。
「残念……ずっと抱きしめていたいのに」
言って彼女の頬にキスをすると、
「――もうっ、人前でキスしたら怒りますからねっ!?」
上目遣いで睨まれた。
「はいはい」
君はどんな顔をしてどんな声を出してもかわいいな。
そう思うたびに思い知らされる。こんな気持ちにさせられたことなど、今までに一度もないと。
こんな愛しい存在には、今まで一度も出逢ったことがない。
彼女をエスコートして廊下を歩くけれど、翠葉ちゃん、君の靴はないんだよ?
きっとそんなことには気づかず玄関に向かっているのだろう。
案の定、玄関まで来て彼女は呆然とした。
「やっぱり抱っこだね」
彼女に何を言う間も与えずに横抱きにすると、「きゃっ」と小さな声があがり、すぐに顔を髪の毛で隠そうとする。
「葵には腕を回していたのに、俺にはしてくれないの?」
「高崎さんは特別です……」
「……それ、面白くないな」
「……だって、蒼兄と同じ気がするから」
もうさ、俺も本音で話させてもらっていいかな?
「なら別にいい、とか言ってあげられるほど心は広くないんだよね」
口にしてすぐ、彼女の唇を奪う。まるで苺でも食むように。
「っ……秋斗さんっ」
「何? 誰も見てないよ?」
本当は誰が見てるとか見てないとか、そういう問題じゃないんだろう?
「……秋斗さんは慣れているのかもしれないけど、私は……私は、慣れていないんです」
ほらね……。
「俺だって好きな子にキスをするのは慣れていないけどね」
そう言うと、無言で靴を履き、身体を使って玄関のドアを開け家を出た。
さっきはかばんやケーキがあったから葵を呼んだけど、とくに持つものがない今は誰を呼ぶ必要もない。
九階では彼女が進んでドアを開けてくれるだろう。早く俺から離れたい一心で。
それも面白くはないけど、ここで葵を呼んでまた葵に逃げられるのを見て平常心でいられるほど大人でもないみたいだから。
……俺、どうしてこんなにも余裕がないかな。
自分で自分の欲求を抑えられる自信がまったくない。これじゃ彼女が怯えても仕方がない。
会話なくエレベーターホールでエレベーターを待っていると、一階から上がってきたエレベーターに蒼樹と若槻が乗っていた。
それに気づいた彼女は、「蒼兄っ」と俺の胸から離れる。
言葉も何も出なかった。
「危ないっ」とすぐさま彼女を受け止めたのは若槻で、その場の男はみんな肝を冷やしただろう。
「翠葉ちゃん……今のはないんじゃないかな」
こんなことが言いたいんじゃない……。
でも、怪我がなくて良かった、とそう思っても口にできない何かがあった。
彼女の目には怯えが見て取れた。
若槻に抱きとめられた彼女を蒼樹が抱き上げる。すると、彼女は蒼樹の首に両腕を回し、助けを乞うように縋りつく。
「秋斗さん、リィに何かした?」
「とくには? 恋人にすることをしたくらいじゃないかな」
いつものように笑みを浮かべてみたものの、自分がしっくりこない。
気になるのは彼女の思いのみ。
そこへ急に雨が降り出した。
夕立か……?
「緑が喜ぶね……」
彼女の小さな呟きに、蒼樹が「そうだな」と答える。
「最悪……。バケツひっくり返したような雨じゃん」
若槻がふたりの隣に並ぶと、本当の兄妹のように見えた。
なんとなしに彼女の顔を見た若槻は、
「リィ?」
「なんでしょう……」
「なんか複雑な顔してる」
「……雨は嫌いじゃないんです。でも、低気圧は好きじゃないかな」
「それ、矛盾してない?」
……痛み、だろうな。疼痛発作を恐れるから低気圧が怖いんだ。
何も答えない彼女の代わりに蒼樹が口を開いた。
「雨は好きなんだ。ただ、低気圧が来ると疼痛発作を起こしやすくなるから……。だから苦手なんだよ」
「疼痛まで持ってるのっ!?」
若槻が訊けば、彼女は苦笑を返す。
「……原因わかってなくて、あまり有効な対処法がないんです」
「そっか……」
彼女は時々こちらに視線をよこすものの、困惑した顔で視線を逸らす。
間違いなく、俺、態度にも顔にも出てるんだろうな。どこかで切り替えないと――
そんなことを考えていると、少し前に一階へ下りていったエレベーターが十階に着いた。
中から出てきたのは司。
「司、ずいぶん濡れたな」
蒼樹が声をかけると、言ってくれるな、と言わんばかりにため息をひとつついた。
そこに、思いも寄らない声が聞こえてくる。
「……水も滴るいい男?」
彼女だ。
蒼樹の肩越しに司を見て目を見開いていた。
まいったな、すごい打撃だ。
「わ……余計なこと言ったかも」
彼女は考えていること駄々漏れの口を手で押さえる。
こういう子なんだけど、正直今はきつい……。
「翠……感情駄々漏れっていうか、口から漏れてるから」
司が呆れ気味に答え、「すぐそこまで来て急に降られた」と前髪をかき上げる。
その司に釘付けになる彼女……。
「翠葉……それこそ感情駄々漏れだ」
蒼樹が苦笑しながら彼女を諭す。と、恨めしい顔をして、
「……だって、格好いいんだもの」
「リィは正直だな。彼氏に昇格した秋斗さん形無しだね」
若槻はおかしそうにくつくつと笑っていた。
今の自分は見られたくない。
そうは思っても、そんなタイミングで俺を見てくるのが彼女だったりする。
彼女は俺の顔を見てはっとしたようだった。
「どうしよう……」と文字が顔に貼り付いている。なのに、気まずそうに視線を逸らしては、また司を見て目を輝かせるのだから、どうしたらいいものか……。
その彼女の視線を察知してか、
「……見られすぎると減る」
司、それ……今の俺からは嫌みにしか聞こえないんだけど……。
「司、早くシャワー浴びないと風邪ひくぞ」
蒼樹が声をかけると、
「そうします。ここにいると、自分がどんどん減りそうなので」
と、ホールを突っ切った。
その間も彼女はずっと司を見ていた。
司と目が合ったときには、蒼樹のシャツを握る手に力が入ったほど。
「そんなに司の容姿が好き?」
訊くつもりはなかったけど、少しいじめずにはいられなかった。
しかし、彼女にそんなことが通じるわけがなく、
「……えと、すごく格好いいと思います。ど真ん中ストライクくらいには」
赤面したまま俺の目を見て答えるから、自爆したのが俺なのか彼女なのかわからなくなる。
「……ここにいるのもなんだから、ゲストルームへ行こう」
ゲストルームへ向かいながら思う。
これじゃ昼間の移動のときと何も変わらない。むしろ、今のほうがひどい気がする。
部屋に着いたら蒼樹と若槻を締め出してキス攻めだ……。
それで済めばいいけど、正直自信がない。
胸もとにキスマークでもつけようか。それとも、自分の視界に必ず入る鎖骨の上とか……。
この際、誰に見られるとかどうでも良くなってきていた。
彼女の使っている部屋で待っていると、
「秋斗先輩はあっち」
「秋斗さんしばらく立ち入り禁止」
蒼樹と若槻に追い出された。
この付け焼刃兄妹がっ――
「ほぉ……人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られるって知ってるか?」
「兄妹って馬に蹴られるほうが痛いと思うよ」
にこりと笑った若槻に一蹴された。
で、リビングに行くでもなくその場にしゃがみこんでいる俺はどうしたらいいものか。
翠葉ちゃん、俺のこと好きなんだろ? それなら全部俺に任せてよ。
警戒なんてしてほしくないんだけどな……。
……いっそ彼女のすべてを奪ってしまおうか。
いやいやいやいや、それ犯罪だし。
でも、怖いことじゃないと教えるにはどうしたらいい?
そんなことすらわからない。
女なんて飽きるほど抱いてきた。たいていの女なら快感へと誘う自信もある。
でも、初めての子を相手にレクチャーするのは俺が初めてで、楽しみだと思っていたことが今となってはどうしたらいいのかさっぱりだ。
身体でわからせたい。そう思う自分の強欲さが募るばかり。
俺、どうしたらいい? このままだと、明日には彼女を襲ってしまいそうだ――
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