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December
それぞれのクリスマス Side 司 03話
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ホールを出てコミュニティータワーの二階を建物に沿って歩いていくと、
「ツカサ、もうちょっとゆっくり歩いて? それに――」
振り返ると、
「指輪……ちゃんと見たい」
翠は俺に握られた左手をじっと見ていた。
俺だって、指輪を見た翠の反応を早く得たい。でも、翠のクールダウンはまだ十分ではないし、自分をクールダウンさせる必要もある。
この棟の端まで行けばロビーがある。そこに着くころには落ち着いているだろう。
無言で歩き続けること数分。
すっかり息の整った翠をソファに座らせ、指輪が入っていたケースその他もろもろを膝の上に落とす。
翠はポカンとした顔でそれらを眺めていた。
「パーティーが終わってから、きれいにラッピングされたものを渡すつもりだったんだけど……」
翠は驚いた顔で俺を見上げては、少し気まずそうに視線を落とした。そして、小さく呟く。指輪についている宝石の名を。
「好きだって言ってたから……」
翠は脊髄反射張りに顔を上げ、
「うん、好き……大好きっ!」
満面の笑みで言われて面食らう。
勘違いするな――この「大好き」はペリドットへ向けられたものであって、俺に向けられたものじゃない。そうだこれは錯覚。
そんな分析をしていると、飛び上がる勢いで翠が抱きついてきた。
「ありがとうっ!」
その反応すべてが愛おしい。けれど、これは立ちくらみを起こす流れなんじゃ……。
腕に抱きついた翠のバランスが崩れ、やっぱり、と思う。
支えるように力をこめると、腕の中の翠は眩暈を起こしているはずなのに、危機感などまるで感じていない、安心しきった顔だった。
「あのさ……」
「わかってる。ごめんなさい」
「顔がごめんって言ってない。ちなみに、眩暈を起こしている人間の表情でもないと思う」
「だって、嬉しいんだもの……」
眩暈を起こしていることすらどうでもよくなるほどに……?
そこまで喜んでもらえるとは思ってなかったから、俺もこの反応は嬉しいけど……。
でも、やっぱり危ないことだと思う。
不意に腕に掴まる力が強まる。
「ソファに座る?」
翠は即座に首を振った。
「あのね、視界が戻ったら会場に戻りたい。戻ってチークダンス、踊りたい」
その一言に思う。「もう指輪の話は終わり?」と。だから、
「指輪はめたの左手薬指なんだけど、その意味、わかってる?」
「意味……?」
きょとんとした顔がこちらを向いた。
あぁ、これはわかってない顔だな。
そう思いながら、
「婚約指輪とかマリッジリングをはめる指は?」
翠は「あ!」って顔をして、「左手薬指」と小さく答えた。
「でも、今婚約指輪ほど高価なものを渡したところで、翠は受け取らないだろ? だから、婚約前のプレリング。正式に婚約するまではそれをつけてて。いわば、虫除け的なアイテムだから」
少しの恥ずかしさを伴いながら口にすると、
「え? 指輪って、忌避作用があるの?」
真顔で訊かれ、額を叩かずにはいられなかった。
「あるわけないだろ……男除けっ」
翠に急かされ会場に戻ると、ちょうどチークダンスが始まったところだった。
翠の手を取りホールへ向かって一歩を踏み出すと、隣の翠が立ち止まったままついてこない。
「踊らないの?」
翠は緊張しているのか、何か戸惑っているように見えた。
「翠?」
翠は小さく口を開け、
「なんだか恥ずかしくて……」
何を今さら……。
「翠が踊りたいって言うから戻ってきたのに?」
翠は苦笑を浮かべ、
「ツカサ……あとで――あとで十階に戻ってから踊ってくれる?」
「俺、この手の音源持ってないけど?」
「大丈夫。私が持ってる」
「了解」
壁際へ移動する際、そこかしこから遠慮のない視線が注がれていた。そして、行く先の壁際には女子が身を乗り出さんばかりに待機している様子がうかがえる。
そこへ翠を連れて行くか悩んだが、指輪をあまりにも簡単に流した翠に恨みがなくもなく、俺は先を歩くよう翠を促し、自分はそっとその場を離れた。
すると、翠は壁際に待機していた女子に取り囲まれ、後ずさったところで背後に俺がいないことに気づいたようだ。
あたりを見回そうとした瞬間、女子たちの質問攻めに遭い翠は固まる。
「くっ……いい気味」
俺は少し離れたところから翠の様子を眺めていた。
パーティーが終わると、翠は友達をエントランスまで送っていくと言い、俺は一足早く十階の家へ戻った。
あらかじめ用意していたボックスを持って屋上へ上がると、ボックスに入れていたキャンドルを取り出しセッティングする。
すべてのキャンドルに火を灯してから部屋へ戻ると、タイミング良くインターホンが鳴った。
ドアを開けると、息を弾ませた翠がいた。
まさか走ってきたのか……?
問い詰めようとした瞬間、
「良かった!」
は……? 何が?
「タキシード、もう着替えてたらどうしようかと思っちゃった」
なんだそんなこと……。
「そんなにこの格好にこだわる?」
「こだわる。正装してダンスなんてそうできることじゃないもの」
翠はことさら嬉しそうに口にした。
「だから、翠がドレスで踊りたいって言うなら付き合うって言ってるだろ?」
「ただドレスを着るのと、イベントでドレスを着るのは違うと思うの」
ちょっとむっとした言い方がかわいい。
「その割には会場で踊らなかったけど?」
からかい調子で突っ込むと、翠は少し頬を膨らませ「意地悪」と口にした。
やばい、かわいい……。
むくれた顔をする翠は、拗ねたハナに似ていてひどくかわいい。
こんな顔で怒られようものならなんでも言うことを聞いてしまいそうだ。
俺、将来は翠の尻に敷かれるんだろうな……。
そう思うと、別の笑いがこみ上げてきた。
ドレス姿で寒そうな翠を家へ招き入れると、翠は廊下を進み、引き寄せられるように窓辺へ向かった。
どうやら、そこから見える光景に目を奪われいてるらしい。
「翠、コート着て」
翠が持ってきた白いコートを羽織らせると、
「どうしてコート?」
翠の頭が少し右に傾く。
「これから屋上に出るから」
翠の足元に靴を用意すると、翠は促されるまま靴を履き屋上へ上がった。
先に屋上へ着いた翠は、
「ツカサ、これっ――」
待ち受けていたキャンドルを目に映し、言葉を失う。
期待していたとおりの反応に心が満たされる。
「ここから見る夕日はきれいだし、星もそれなりに見えるって話しただろ?」
「うんっ! わぁ……空もきれいだけど、キャンドルもきれいっ!」
翠は空や稜線、キャンドルと忙しなく視線をめぐらせる。
どれから見たらいいのかまるで定まらない。そんな感じ。
そんなことをしていたら、あっという間に夕日が沈んでしまうだろう。
「まずは夕日から見たら?」
そんなふうに声をかけると、「うん!」と素直に夕日を見始めた。
「きれいね……」
「あぁ」
本当は、このタイミングで指輪を渡そうと思ってたんだけど、何がどうしてあのタイミングで渡しちゃったかな……。
でも、学校の人間もいたし、体のいい牽制にはなっただろう。
もっとも、一番牽制したい人間にとっては牽制の「け」の字にすらなっていなさそうだけど……。
夕日が沈むと、翠は小さく肩を揺らした。
「寒い?」
「ちょっと……でも、まだもう少しここにいたい」
そう言って、穏やかな表情でキャンドルを眺めている。
「ダンス、部屋でにする?」
尋ねると、はじかれたように翠が首を振った。
「こんなにすてきなところで踊れるなら。ここで踊りたい!」
懇願する翠を見て、笑みが零れる。
そして、やっぱりここで指輪を渡したかったな、と思った。
「ミュージックプレーヤーは?」
「あ、バッグの中」
俺は自分の手に持っていたバッグを掲げ、
「これ?」
翠は喜んでバッグからミュージックプレーヤーを取り出した。
しかし、すぐにはっとした様子。
ここにはオーディオセットがないとかその手のことに行き着いたのだろう。
「やっぱり、ダンスは部屋に戻ってからかな?」
表情を曇らせた翠を見ながら、俺はポケットにスタンバイさせていたワイヤレスイヤホンを取り出した。
「片耳ずつだけど」
翠は目を輝かせ、「十分っ!」とイヤホンを持っていた俺の手に飛びついた。
翠が再生ボタンを押すと、弦楽器が柔らかなメロディーを奏で始める。
曲に合わせゆったりと身体を揺らす中、翠は目を閉じ俺に身を預けてくれていた。
そして、時折キャンドルを眺めては嬉しそうに微笑む。
そんな様を見ているだけでも愛おしさがこみ上げてくる。
考えてみれば、翠に出逢うまではこんな気持ちは知らなかったんだな。
きっと、翠と出逢わなければ、人を想う気持ちがこんなにもあたたかく幸せなものだと知らずに一生を終えただろう。
そう思うと、御園生さんとの出逢いも何もかもが大切なパズルのピースのように思えた。
大切にしよう。翠のことも、この想いもすべて――
曲が終わって余韻に浸っていると、間もなくして同じ曲が流れ始めた。
「……何回踊るつもり?」
翠の顔をうかがい見ると、翠は肩を震わせて笑う。
「一回で十分! この曲大好きで、いつも寝る前にリピート再生しているの」
なるほど……。
それなら問題ないかと停止ボタンを押す。
「長居すると風邪を引く」
「でも……」
翠は甘えるようにくっついてきた。
「もう少し星を見ていたいな」
翠の頬に触れるとぬくもりが感じられなくなっていた。
「それなら、一度部屋へ戻ろう。着替えて、温まってからまた来ればいい」
「じゃ、そうする」
俺は先に翠を部屋へ戻し、自分はキャンドルを片付けてから部屋へ戻ることにした。
「ツカサ、もうちょっとゆっくり歩いて? それに――」
振り返ると、
「指輪……ちゃんと見たい」
翠は俺に握られた左手をじっと見ていた。
俺だって、指輪を見た翠の反応を早く得たい。でも、翠のクールダウンはまだ十分ではないし、自分をクールダウンさせる必要もある。
この棟の端まで行けばロビーがある。そこに着くころには落ち着いているだろう。
無言で歩き続けること数分。
すっかり息の整った翠をソファに座らせ、指輪が入っていたケースその他もろもろを膝の上に落とす。
翠はポカンとした顔でそれらを眺めていた。
「パーティーが終わってから、きれいにラッピングされたものを渡すつもりだったんだけど……」
翠は驚いた顔で俺を見上げては、少し気まずそうに視線を落とした。そして、小さく呟く。指輪についている宝石の名を。
「好きだって言ってたから……」
翠は脊髄反射張りに顔を上げ、
「うん、好き……大好きっ!」
満面の笑みで言われて面食らう。
勘違いするな――この「大好き」はペリドットへ向けられたものであって、俺に向けられたものじゃない。そうだこれは錯覚。
そんな分析をしていると、飛び上がる勢いで翠が抱きついてきた。
「ありがとうっ!」
その反応すべてが愛おしい。けれど、これは立ちくらみを起こす流れなんじゃ……。
腕に抱きついた翠のバランスが崩れ、やっぱり、と思う。
支えるように力をこめると、腕の中の翠は眩暈を起こしているはずなのに、危機感などまるで感じていない、安心しきった顔だった。
「あのさ……」
「わかってる。ごめんなさい」
「顔がごめんって言ってない。ちなみに、眩暈を起こしている人間の表情でもないと思う」
「だって、嬉しいんだもの……」
眩暈を起こしていることすらどうでもよくなるほどに……?
そこまで喜んでもらえるとは思ってなかったから、俺もこの反応は嬉しいけど……。
でも、やっぱり危ないことだと思う。
不意に腕に掴まる力が強まる。
「ソファに座る?」
翠は即座に首を振った。
「あのね、視界が戻ったら会場に戻りたい。戻ってチークダンス、踊りたい」
その一言に思う。「もう指輪の話は終わり?」と。だから、
「指輪はめたの左手薬指なんだけど、その意味、わかってる?」
「意味……?」
きょとんとした顔がこちらを向いた。
あぁ、これはわかってない顔だな。
そう思いながら、
「婚約指輪とかマリッジリングをはめる指は?」
翠は「あ!」って顔をして、「左手薬指」と小さく答えた。
「でも、今婚約指輪ほど高価なものを渡したところで、翠は受け取らないだろ? だから、婚約前のプレリング。正式に婚約するまではそれをつけてて。いわば、虫除け的なアイテムだから」
少しの恥ずかしさを伴いながら口にすると、
「え? 指輪って、忌避作用があるの?」
真顔で訊かれ、額を叩かずにはいられなかった。
「あるわけないだろ……男除けっ」
翠に急かされ会場に戻ると、ちょうどチークダンスが始まったところだった。
翠の手を取りホールへ向かって一歩を踏み出すと、隣の翠が立ち止まったままついてこない。
「踊らないの?」
翠は緊張しているのか、何か戸惑っているように見えた。
「翠?」
翠は小さく口を開け、
「なんだか恥ずかしくて……」
何を今さら……。
「翠が踊りたいって言うから戻ってきたのに?」
翠は苦笑を浮かべ、
「ツカサ……あとで――あとで十階に戻ってから踊ってくれる?」
「俺、この手の音源持ってないけど?」
「大丈夫。私が持ってる」
「了解」
壁際へ移動する際、そこかしこから遠慮のない視線が注がれていた。そして、行く先の壁際には女子が身を乗り出さんばかりに待機している様子がうかがえる。
そこへ翠を連れて行くか悩んだが、指輪をあまりにも簡単に流した翠に恨みがなくもなく、俺は先を歩くよう翠を促し、自分はそっとその場を離れた。
すると、翠は壁際に待機していた女子に取り囲まれ、後ずさったところで背後に俺がいないことに気づいたようだ。
あたりを見回そうとした瞬間、女子たちの質問攻めに遭い翠は固まる。
「くっ……いい気味」
俺は少し離れたところから翠の様子を眺めていた。
パーティーが終わると、翠は友達をエントランスまで送っていくと言い、俺は一足早く十階の家へ戻った。
あらかじめ用意していたボックスを持って屋上へ上がると、ボックスに入れていたキャンドルを取り出しセッティングする。
すべてのキャンドルに火を灯してから部屋へ戻ると、タイミング良くインターホンが鳴った。
ドアを開けると、息を弾ませた翠がいた。
まさか走ってきたのか……?
問い詰めようとした瞬間、
「良かった!」
は……? 何が?
「タキシード、もう着替えてたらどうしようかと思っちゃった」
なんだそんなこと……。
「そんなにこの格好にこだわる?」
「こだわる。正装してダンスなんてそうできることじゃないもの」
翠はことさら嬉しそうに口にした。
「だから、翠がドレスで踊りたいって言うなら付き合うって言ってるだろ?」
「ただドレスを着るのと、イベントでドレスを着るのは違うと思うの」
ちょっとむっとした言い方がかわいい。
「その割には会場で踊らなかったけど?」
からかい調子で突っ込むと、翠は少し頬を膨らませ「意地悪」と口にした。
やばい、かわいい……。
むくれた顔をする翠は、拗ねたハナに似ていてひどくかわいい。
こんな顔で怒られようものならなんでも言うことを聞いてしまいそうだ。
俺、将来は翠の尻に敷かれるんだろうな……。
そう思うと、別の笑いがこみ上げてきた。
ドレス姿で寒そうな翠を家へ招き入れると、翠は廊下を進み、引き寄せられるように窓辺へ向かった。
どうやら、そこから見える光景に目を奪われいてるらしい。
「翠、コート着て」
翠が持ってきた白いコートを羽織らせると、
「どうしてコート?」
翠の頭が少し右に傾く。
「これから屋上に出るから」
翠の足元に靴を用意すると、翠は促されるまま靴を履き屋上へ上がった。
先に屋上へ着いた翠は、
「ツカサ、これっ――」
待ち受けていたキャンドルを目に映し、言葉を失う。
期待していたとおりの反応に心が満たされる。
「ここから見る夕日はきれいだし、星もそれなりに見えるって話しただろ?」
「うんっ! わぁ……空もきれいだけど、キャンドルもきれいっ!」
翠は空や稜線、キャンドルと忙しなく視線をめぐらせる。
どれから見たらいいのかまるで定まらない。そんな感じ。
そんなことをしていたら、あっという間に夕日が沈んでしまうだろう。
「まずは夕日から見たら?」
そんなふうに声をかけると、「うん!」と素直に夕日を見始めた。
「きれいね……」
「あぁ」
本当は、このタイミングで指輪を渡そうと思ってたんだけど、何がどうしてあのタイミングで渡しちゃったかな……。
でも、学校の人間もいたし、体のいい牽制にはなっただろう。
もっとも、一番牽制したい人間にとっては牽制の「け」の字にすらなっていなさそうだけど……。
夕日が沈むと、翠は小さく肩を揺らした。
「寒い?」
「ちょっと……でも、まだもう少しここにいたい」
そう言って、穏やかな表情でキャンドルを眺めている。
「ダンス、部屋でにする?」
尋ねると、はじかれたように翠が首を振った。
「こんなにすてきなところで踊れるなら。ここで踊りたい!」
懇願する翠を見て、笑みが零れる。
そして、やっぱりここで指輪を渡したかったな、と思った。
「ミュージックプレーヤーは?」
「あ、バッグの中」
俺は自分の手に持っていたバッグを掲げ、
「これ?」
翠は喜んでバッグからミュージックプレーヤーを取り出した。
しかし、すぐにはっとした様子。
ここにはオーディオセットがないとかその手のことに行き着いたのだろう。
「やっぱり、ダンスは部屋に戻ってからかな?」
表情を曇らせた翠を見ながら、俺はポケットにスタンバイさせていたワイヤレスイヤホンを取り出した。
「片耳ずつだけど」
翠は目を輝かせ、「十分っ!」とイヤホンを持っていた俺の手に飛びついた。
翠が再生ボタンを押すと、弦楽器が柔らかなメロディーを奏で始める。
曲に合わせゆったりと身体を揺らす中、翠は目を閉じ俺に身を預けてくれていた。
そして、時折キャンドルを眺めては嬉しそうに微笑む。
そんな様を見ているだけでも愛おしさがこみ上げてくる。
考えてみれば、翠に出逢うまではこんな気持ちは知らなかったんだな。
きっと、翠と出逢わなければ、人を想う気持ちがこんなにもあたたかく幸せなものだと知らずに一生を終えただろう。
そう思うと、御園生さんとの出逢いも何もかもが大切なパズルのピースのように思えた。
大切にしよう。翠のことも、この想いもすべて――
曲が終わって余韻に浸っていると、間もなくして同じ曲が流れ始めた。
「……何回踊るつもり?」
翠の顔をうかがい見ると、翠は肩を震わせて笑う。
「一回で十分! この曲大好きで、いつも寝る前にリピート再生しているの」
なるほど……。
それなら問題ないかと停止ボタンを押す。
「長居すると風邪を引く」
「でも……」
翠は甘えるようにくっついてきた。
「もう少し星を見ていたいな」
翠の頬に触れるとぬくもりが感じられなくなっていた。
「それなら、一度部屋へ戻ろう。着替えて、温まってからまた来ればいい」
「じゃ、そうする」
俺は先に翠を部屋へ戻し、自分はキャンドルを片付けてから部屋へ戻ることにした。
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