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March
決戦は月曜日 Side 慧 02話
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待ちに待った月曜日、俺はレッスンが終わると弓弦を訪ね、弓弦の車で翠葉の住むマンションへ向かった。
「翠葉んちってどこら辺なの?」
「藤宮学園から数分のところですよ。ウィステリアヴィレッジってマンションの名前くらいは知っているでしょう?」
「へ……?」
ウィステリアヴィレッジって――
「あのっ、超高級マンションって言われてるアレっ!?」
「なんだ、知らなかったの?」
「知らなくて悪かったなっ!」
俺、まだ数えるほどしか翠葉に会ってないし、パーソナルデータだって高が知れてんだよっ!
「っていうか、ウィステリアヴィレッジって支倉にもあるけど、めっちゃハイソなマンションじゃん」
「こっちのマンションも例に漏れず、ハイソなマンションですよ。なんたって、エントランスはホテルのようだし、常時数人のコンシェルジュが常駐しているうえ、何度訪れてもミュージックルームまではコンシェルジュの案内がつくからね」
「へぇ~……確か、居住棟とは別の建物にミュージックルームがあるんだっけ?」
「そっ。まぁ、慧くんも練習環境には恵まれている部類の人間だから、そう驚きはしないだろうけれど、類稀な練習環境に間違いないね」
そんな弓弦の前置きに、俺は若干びびりながら翠葉のもとへと向かうことになった。
……不思議だ。
ただ翠葉に会いに行く。それだけで、こんなにも車窓から見える景色が煌びやかに見えるだなんて――
国道をはずれ中道に入って少し走ると、上り坂の天辺にマンションの光と思しきものが見えてきた。
暗闇に無数の光が浮いて見えるそれは、まるで星が規則正しく並んでいるようにすら見える。
「もしかして、あれ?」
「そう」
階数的にはそんな高くなさそうだが、建ってる場所が場所なだけに、妙に高い建物に見える。
でもあの立地じゃ、高層階に住んでなくても見晴らしはよさそうだ。
そんなことを考えているうちに車はマンション敷地内へと入り、弓弦はエントランス前のロータリーに車を停めた。
「さ、慧くん降りますよ」
まだエンジンすら止めていないというのに、弓弦は後部座席のかばんへ手を伸ばし、運転席のドアを開けている。
「へ? 車このままでいいの?」
「そう、すぐにコンシェルジュが出てくるから」
促されるままに車を降りると、グレーのスーツを着た男が階段を駆け下りてきた。
「お待ちしておりました。お車お預かりいたします」
「よろしくお願いします」
そう言うと、弓弦は慣れた足取りで階段を上り始め、エントランスへと吸い込まれていった。
慌ててその後ろ姿を追うと、エントランスのカウンターで別のコンシェルジュと言葉を交わしていた。
「今日はお連れ様がいらっしゃるんですね」
「えぇ、御園生さんの友人でもあります」
「さようでしたか」
そう言うと、その人は俺に向き直り、
「後ほどお飲み物をお持ちしますので、こちらからお好きなお飲み物をお選びください」
とカウンターにメニューを広げられる。
「あ……じゃ、コーラで……」
「かしこまりました。それでは、ミュージックルームへご案内いたします」
カウンターから出てきた人は俺たちの数歩先を歩き、別棟にあるミュージックルームまで先導してくれた。
一階の渡り廊下を渡り始めてすぐ、翠葉が弾いているであろうピアノの音が聞こえてきた。
防音室から漏れ聞こえるツェルニーにすら、好奇心をくすぐられる。
渡り廊下を渡りきると出入り口と思しき場所に黒服の男がふたり立っていて、そこがミュージックルームの入り口であると察する。
本当に警備員いるし、天井に防犯カメラついてるし……。
これは弓弦の言うとおり、ピアノのための警備ではなく、翠葉を守るためのものなんだろうな。
なんか一気に翠葉のお嬢感が高まった。
そして、コンシェルジュによって開けられたドア向こうに広がる空間に、度肝を抜かれる。
「なんだよこれ……。部屋っていうかホールじゃんか!」
「ですよね~」
弓弦はクスクスと笑いながらミュージックルーム、もといホールへ入った。
縦長の部屋は贅沢に横長に使われていて、でっかいコンサートグランドの近くにはグランドハープより小ぶりのフロアハープが置かれている。そして、その前にはラグジュアリー感溢れるコの字型のソファセット。そのうえ、値の張るオーディオまでが鎮座していた。
ピアノの前に座っていた翠葉が「いらっしゃい」と迎えてくれ、そのまま翠葉に近寄ろうとした俺は、喉元にひどい衝撃を受けた。
どうやらシャツの襟を弓弦に掴まれたらしい。
「なんだよっ!」
「まずは手洗いうがい」
「は……?」
弓弦は少し声のトーンを落として、
「外から風邪を持ち込んで、御園生さんにうつさないよう徹底してるんだ」
「えっ!? 俺超健康優良児だし、風邪なんかひいてないけどっ!?」
「それでもです」
弓弦の笑顔のゴリ押しに、俺は引きずられるようにして部屋の隅にある洗面台へ連れて行かた。
「こんなこと徹底しなくちゃいけないほど、あいつ身体弱いの?」
小声でたずねると、
「そのようですね。……何、僕も君と同程度の情報しか持ち合わせていませんよ」
そう言うと、弓弦は手早く手洗いうがいを済ませた。
準備が済んでようやく翠葉のもとへ行ける。そう思ってピアノの方を振り返ると、ピアノ前にいた翠葉は場所を移していた。ソファの片隅で本を読んでいる男のもとへと――
ミュージックルームに入った勢いで翠葉に話しかけ、「例のスコアは?」とかこの男にはわかんねえ話で盛り上がってやろうと思ってたのに、俺の計画丸潰れ……。
翠葉の立ち位置上、ツカサってやつと挨拶から始めるしかねぇじゃんか。
くっそ~……思い通りにはいかねーな。
まさか弓弦に邪魔されるとは思ってもみなかったぜ……。
腹を据えて翠葉たちのもとへと向かうと、背後にいた弓弦が前へ出た。
「司くん、こんばんは。こちら、倉敷芸術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻の倉敷慧くん。芸大祭に御園生さんを呼んだとき、ふたりを引き合わせたんです。どうやら、僕が紹介するまでもなく、小学生のころに出逢っていたようですが」
弓弦に促されて弓弦の隣に並ぶも、自分の名前以外の自己紹介が出てこない。
そのうえ、めっちゃ態度悪いっつーか、無愛想な顔してんだろうな、ことも自覚してるわけで……。
どうしたもんかな、と思っていると、
「慧くん、どこか具合でも悪いの?」
翠葉が心配そうな顔で俺のことを見ていた。
くっそー……今日もかわいいな、をぃ。
でも、桜を彷彿とさせるピンクのワンピースを見てしまうと、先日の振袖姿を思い出してちょっと複雑な気分。
悶々としている俺の隣で弓弦が吹き出す。
「え? 先生どうし――」
「いえ、なんでもありません。慧くん、仏頂面が過ぎますよ」
「うっせ」
んなの、どうにかできるんならしてるっつーのっ!
しかも、まじまじと翠葉を見て気づいてしまった。
以前は指にはめられていた指輪が、今日はレッスンがあるからか、大事そうにネックレスに通して首にかけられているのを。
もう一度翠葉を視界に入れようとしたそのとき、ソファにかけていた男が立ち上がった。
……でけぇ。身長、俺より高いんじゃね?
顔が良くてタッパもあって家柄もいいとか、どんだけいやみをぶら下げれば気が済むんだか。
心の中で悪態をついていると、男はにこりときれいすぎる笑みを浮かべた。そして、
「翠の婚約者の藤宮司です」
爆弾級の自己紹介が降ってきた。
しかも、俺や弓弦が驚くならともかく、当事者である翠葉までびっくりした顔で隣に立つ男を見上げてるって何っ!?
ああああああもうっっっ――
ホテルで見かけたときからそんな予感はしていて、でも認めるには至らなくて、今日翠葉に確認取ろうと思っていた矢先に男のほうから暴露されるってどんな状況っ?
いつもなら瞬発力で反応するところだけど、何も言えないくらいの爆撃食らってどうにもなんねぇ……。
「お付き合いなさってるというお話は以前うかがいましたが、本当は婚約者? それとも、婚約したのは最近の話ですか?」
弓弦の問いかけにはっとした翠葉が、
「あああああのっ、実は、ツカサの卒業を機に婚約したんですっ」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……男から聞くよりも、翠葉から聞くほうが断然ダメージでけぇ……。
うっかり頭を抱えてしゃがみこむと、
「慧くん大丈夫っ!? やっぱり具合悪いっ!? 何か飲み物持ってきてもらうっ!? それともソファに横になるっ!?」
矢継ぎ早に返答を求められるも、反応するだけの余力はなく……。
「御園生さん、大丈夫ですよ。虫の居所が悪いだけですから。ね、慧くん?」
弓弦のやつめ……。言ってくれるなあああああっっっ。
さらに追い討ちをかけるように、
「僕たちはこれからレッスンなので、おとなしく座っていられるならこの場にいてもかまいませんが、静かにできないのなら、今すぐこの部屋から出てくださいね」
いつもの調子で仕切られて、俺はコクコク頷きながら、あの男から一番遠い場所に腰を下ろした。
そうだ……この傷心を癒すためにはスペシャルアイテムが必要だ。
俺は俯いていた顔を上げ翠葉を見ると、両手を使ったジェスチャーでスコアを求めた。
それを瞬時に悟ってくれた翠葉は、すぐさまスコアを渡してくれた。
ひとまず、これを使って心を平穏に保つよう努力しよう。間違ってもあの男を視界に入れてなるものか――
「翠葉んちってどこら辺なの?」
「藤宮学園から数分のところですよ。ウィステリアヴィレッジってマンションの名前くらいは知っているでしょう?」
「へ……?」
ウィステリアヴィレッジって――
「あのっ、超高級マンションって言われてるアレっ!?」
「なんだ、知らなかったの?」
「知らなくて悪かったなっ!」
俺、まだ数えるほどしか翠葉に会ってないし、パーソナルデータだって高が知れてんだよっ!
「っていうか、ウィステリアヴィレッジって支倉にもあるけど、めっちゃハイソなマンションじゃん」
「こっちのマンションも例に漏れず、ハイソなマンションですよ。なんたって、エントランスはホテルのようだし、常時数人のコンシェルジュが常駐しているうえ、何度訪れてもミュージックルームまではコンシェルジュの案内がつくからね」
「へぇ~……確か、居住棟とは別の建物にミュージックルームがあるんだっけ?」
「そっ。まぁ、慧くんも練習環境には恵まれている部類の人間だから、そう驚きはしないだろうけれど、類稀な練習環境に間違いないね」
そんな弓弦の前置きに、俺は若干びびりながら翠葉のもとへと向かうことになった。
……不思議だ。
ただ翠葉に会いに行く。それだけで、こんなにも車窓から見える景色が煌びやかに見えるだなんて――
国道をはずれ中道に入って少し走ると、上り坂の天辺にマンションの光と思しきものが見えてきた。
暗闇に無数の光が浮いて見えるそれは、まるで星が規則正しく並んでいるようにすら見える。
「もしかして、あれ?」
「そう」
階数的にはそんな高くなさそうだが、建ってる場所が場所なだけに、妙に高い建物に見える。
でもあの立地じゃ、高層階に住んでなくても見晴らしはよさそうだ。
そんなことを考えているうちに車はマンション敷地内へと入り、弓弦はエントランス前のロータリーに車を停めた。
「さ、慧くん降りますよ」
まだエンジンすら止めていないというのに、弓弦は後部座席のかばんへ手を伸ばし、運転席のドアを開けている。
「へ? 車このままでいいの?」
「そう、すぐにコンシェルジュが出てくるから」
促されるままに車を降りると、グレーのスーツを着た男が階段を駆け下りてきた。
「お待ちしておりました。お車お預かりいたします」
「よろしくお願いします」
そう言うと、弓弦は慣れた足取りで階段を上り始め、エントランスへと吸い込まれていった。
慌ててその後ろ姿を追うと、エントランスのカウンターで別のコンシェルジュと言葉を交わしていた。
「今日はお連れ様がいらっしゃるんですね」
「えぇ、御園生さんの友人でもあります」
「さようでしたか」
そう言うと、その人は俺に向き直り、
「後ほどお飲み物をお持ちしますので、こちらからお好きなお飲み物をお選びください」
とカウンターにメニューを広げられる。
「あ……じゃ、コーラで……」
「かしこまりました。それでは、ミュージックルームへご案内いたします」
カウンターから出てきた人は俺たちの数歩先を歩き、別棟にあるミュージックルームまで先導してくれた。
一階の渡り廊下を渡り始めてすぐ、翠葉が弾いているであろうピアノの音が聞こえてきた。
防音室から漏れ聞こえるツェルニーにすら、好奇心をくすぐられる。
渡り廊下を渡りきると出入り口と思しき場所に黒服の男がふたり立っていて、そこがミュージックルームの入り口であると察する。
本当に警備員いるし、天井に防犯カメラついてるし……。
これは弓弦の言うとおり、ピアノのための警備ではなく、翠葉を守るためのものなんだろうな。
なんか一気に翠葉のお嬢感が高まった。
そして、コンシェルジュによって開けられたドア向こうに広がる空間に、度肝を抜かれる。
「なんだよこれ……。部屋っていうかホールじゃんか!」
「ですよね~」
弓弦はクスクスと笑いながらミュージックルーム、もといホールへ入った。
縦長の部屋は贅沢に横長に使われていて、でっかいコンサートグランドの近くにはグランドハープより小ぶりのフロアハープが置かれている。そして、その前にはラグジュアリー感溢れるコの字型のソファセット。そのうえ、値の張るオーディオまでが鎮座していた。
ピアノの前に座っていた翠葉が「いらっしゃい」と迎えてくれ、そのまま翠葉に近寄ろうとした俺は、喉元にひどい衝撃を受けた。
どうやらシャツの襟を弓弦に掴まれたらしい。
「なんだよっ!」
「まずは手洗いうがい」
「は……?」
弓弦は少し声のトーンを落として、
「外から風邪を持ち込んで、御園生さんにうつさないよう徹底してるんだ」
「えっ!? 俺超健康優良児だし、風邪なんかひいてないけどっ!?」
「それでもです」
弓弦の笑顔のゴリ押しに、俺は引きずられるようにして部屋の隅にある洗面台へ連れて行かた。
「こんなこと徹底しなくちゃいけないほど、あいつ身体弱いの?」
小声でたずねると、
「そのようですね。……何、僕も君と同程度の情報しか持ち合わせていませんよ」
そう言うと、弓弦は手早く手洗いうがいを済ませた。
準備が済んでようやく翠葉のもとへ行ける。そう思ってピアノの方を振り返ると、ピアノ前にいた翠葉は場所を移していた。ソファの片隅で本を読んでいる男のもとへと――
ミュージックルームに入った勢いで翠葉に話しかけ、「例のスコアは?」とかこの男にはわかんねえ話で盛り上がってやろうと思ってたのに、俺の計画丸潰れ……。
翠葉の立ち位置上、ツカサってやつと挨拶から始めるしかねぇじゃんか。
くっそ~……思い通りにはいかねーな。
まさか弓弦に邪魔されるとは思ってもみなかったぜ……。
腹を据えて翠葉たちのもとへと向かうと、背後にいた弓弦が前へ出た。
「司くん、こんばんは。こちら、倉敷芸術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻の倉敷慧くん。芸大祭に御園生さんを呼んだとき、ふたりを引き合わせたんです。どうやら、僕が紹介するまでもなく、小学生のころに出逢っていたようですが」
弓弦に促されて弓弦の隣に並ぶも、自分の名前以外の自己紹介が出てこない。
そのうえ、めっちゃ態度悪いっつーか、無愛想な顔してんだろうな、ことも自覚してるわけで……。
どうしたもんかな、と思っていると、
「慧くん、どこか具合でも悪いの?」
翠葉が心配そうな顔で俺のことを見ていた。
くっそー……今日もかわいいな、をぃ。
でも、桜を彷彿とさせるピンクのワンピースを見てしまうと、先日の振袖姿を思い出してちょっと複雑な気分。
悶々としている俺の隣で弓弦が吹き出す。
「え? 先生どうし――」
「いえ、なんでもありません。慧くん、仏頂面が過ぎますよ」
「うっせ」
んなの、どうにかできるんならしてるっつーのっ!
しかも、まじまじと翠葉を見て気づいてしまった。
以前は指にはめられていた指輪が、今日はレッスンがあるからか、大事そうにネックレスに通して首にかけられているのを。
もう一度翠葉を視界に入れようとしたそのとき、ソファにかけていた男が立ち上がった。
……でけぇ。身長、俺より高いんじゃね?
顔が良くてタッパもあって家柄もいいとか、どんだけいやみをぶら下げれば気が済むんだか。
心の中で悪態をついていると、男はにこりときれいすぎる笑みを浮かべた。そして、
「翠の婚約者の藤宮司です」
爆弾級の自己紹介が降ってきた。
しかも、俺や弓弦が驚くならともかく、当事者である翠葉までびっくりした顔で隣に立つ男を見上げてるって何っ!?
ああああああもうっっっ――
ホテルで見かけたときからそんな予感はしていて、でも認めるには至らなくて、今日翠葉に確認取ろうと思っていた矢先に男のほうから暴露されるってどんな状況っ?
いつもなら瞬発力で反応するところだけど、何も言えないくらいの爆撃食らってどうにもなんねぇ……。
「お付き合いなさってるというお話は以前うかがいましたが、本当は婚約者? それとも、婚約したのは最近の話ですか?」
弓弦の問いかけにはっとした翠葉が、
「あああああのっ、実は、ツカサの卒業を機に婚約したんですっ」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……男から聞くよりも、翠葉から聞くほうが断然ダメージでけぇ……。
うっかり頭を抱えてしゃがみこむと、
「慧くん大丈夫っ!? やっぱり具合悪いっ!? 何か飲み物持ってきてもらうっ!? それともソファに横になるっ!?」
矢継ぎ早に返答を求められるも、反応するだけの余力はなく……。
「御園生さん、大丈夫ですよ。虫の居所が悪いだけですから。ね、慧くん?」
弓弦のやつめ……。言ってくれるなあああああっっっ。
さらに追い討ちをかけるように、
「僕たちはこれからレッスンなので、おとなしく座っていられるならこの場にいてもかまいませんが、静かにできないのなら、今すぐこの部屋から出てくださいね」
いつもの調子で仕切られて、俺はコクコク頷きながら、あの男から一番遠い場所に腰を下ろした。
そうだ……この傷心を癒すためにはスペシャルアイテムが必要だ。
俺は俯いていた顔を上げ翠葉を見ると、両手を使ったジェスチャーでスコアを求めた。
それを瞬時に悟ってくれた翠葉は、すぐさまスコアを渡してくれた。
ひとまず、これを使って心を平穏に保つよう努力しよう。間違ってもあの男を視界に入れてなるものか――
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