上 下
358 / 436
第20章 聖魔大戦編

358話 衝突

しおりを挟む
「お久しぶりですね。
 師匠方」

「アーク、今の一撃は確実に大勢の命を奪うものだったわ。
 ターニャ達も貴方達一体……」

「師匠、私達がこの軍服を着て、ここにいるのなんて理由は1つでしょ?」



 むぅ、ガスター共め!
 私なんて未だにアークからすら師匠って呼ばれた事ないのにっ!  ターニャにまで!!



「まぁ、アーク達もだが……まさかアンタが出てくるとはな、リヒト」

「バカをやった弟を諌めてやるのは兄貴の役目だろ?」

「クックック、違えねぇ。
 これも魔神レフィーの仕込みか?」



 当然!  実は今日ガスター達が前線であるこの場所に出てくるように、さり気なぁ~く手を回したのは私なのだ!!
 むふふっ、多くの人間共が見守る前で自らの弟子達に、親しい間柄の者達に……圧倒されて、敗北して、無様に倒れ伏すが良いっ!!



「違いますよ」



 えっ?



「アンタは確か……」

「初めまして、冒険王ガスター。
 リーゼ・スパーダと申します」

「当然、知ってるぜ。
 現剣聖にしてヴァリエ騎士王国の守護者だろ?」

「私は私の正義と護りたいモノのために剣を振るいます。
 私達は自ら望んでレフィー様の元に降ったのです、決して強要された結果などではありません」

「リーゼ……」

「フェリシア、これが私が……私達が選んだ道です」



 おぉ~!  流石は剣聖リーゼ・スパーダ!!
 今のはめっちゃくちゃカッコ良かった!  しっかりとリーゼ達の勇姿を録画して記録しなければ!!



「ほほう、卑劣な悪魔共に与する事が貴方達の正義ですか。
 守護者にして剣聖であるリーゼ・スパーダ。
 メンバー全員がSランク冒険者であるSランクパーティー星屑の剣。
 そして、S級クラン白の騎士団を率いるリヒト・アルダール」



 アイツは……誰だろ?
 なんかゴテゴテした鎧を着て馬に乗って、背後に多くの騎馬を引き連れて偉そうに領都ヴァントの中から出て来たけど……いや、まさかね。



「英雄と呼ばれる者達が随分と堕ちたモノですなぁ?」

「ミュール卿……何故、貴方がこちらに?」

「これはこれは、大賢者マリアナ殿。
 いや何、堕ちた哀れな英雄共をこの私自ら処断してやろうと思いまして」



 うわぁ……まさかとは思ったけど、マジか。
 見たところ装備の性能に頼ってるだけで自身は大した力もない雑魚みたいだし。
 こんないかにも、ザ・無能って感じのヤツが辺境伯かよ!

 地味に衝撃の事実だわ。
 他国との国境を守る辺境伯があんな戦場に立った事も無さそうな青二才が辺境伯……ん?  でもあの顔、どっかで見たような~?



「はぁ……危険ですので今すぐに城壁の中に戻ってもらえるかしら?」

「ハッハッハ!  ご安心を。
 こう見えて、私はかつて世界を守護する聖女にして我らがアルタイル王国の王妃であらせられるリナ様の近衛も任せられ、かの悪魔をこの手で捕らえた誇り高き騎士です」



 あぁ!  コイツ、あの時私を取り押さえた騎士の1人か。
 なるほど、だから見覚えがあったわけね。
 しっかし、なんか自慢気に誇ってるけどアバズレ聖女の近衛ねぇ。

「ふむ」

 あれって確か、高位貴族の次男三男の中からアバズレ聖女の好みで選ばれた顔が良いだけの無能集団だった気がするんだけど。
 そのくせプライドど態度だけはデカくて、何故か何回も私に苦情が来た記憶があるな。



「彼らのような堕ちた英雄などに遅れは取りま……」

「チッ!」


 アーク達を見下して、得意げに話すミュール辺境伯に舌打ちしてその前にガスターが踊り出た瞬間!


 ドゴォオッ!!


 凄まじい轟音が鳴り響いてガスターが後方に弾け飛ぶ。



「えっ?  い、いま何が……」

「こんなクズを庇ったか」

「き、貴様は!」

「あ゛?」

「ヒッ!  や、やれ!  コイツを始末するのだっ!!」

「自由に好き勝手やってる冒険者とは言え、仮にも俺も騎士を名乗る者だ。
 お前みたいな最低ヤロウを見てると虫唾が走る。
 テメェみたいなヤツが騎士を名乗ってんじゃねぇよ」



 良いっ!  良いよ、リヒト!  粗暴な冒険者ながらも芯のある騎士って感じがして今のは非常に絵になってた!!
 今夜の宴会で本人にもしっかりとこの勇姿を見せてやらないと。



「アーク!  ガスター達は、ひとまずお前らに任せる。
 俺はちょっとコイツの相手をするわ」

「では、私はフェリシアを。
 冒険王と大賢者はお任せします」

「りょーかい!  任せなさいっ!!」

「あはは……わかりました」

「ガスター師匠とマリアナ師匠が相手か」

「あの地獄の特訓に比べれば天国だよね、マナ?」

「そうだね、アナ。
 確かにアレに比べればね」



 天国って……ま、まぁ、何はともあれ!  これで各々の相手も決まったみたいだし。
 戦闘開始だな!!



「話は終わったかしら?
 私達を相手に随分と余裕があるようね」

「ご安心ください。
 今の俺達は……御三方よりも強いですから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...