281 / 436
第16章 若き探求者編
281話 知らなくてはならない
しおりを挟む
私は物心ついた頃から常に天才と呼ばれてきた。
「フィル様?」
婚約者であるエリーと繋いでいた手に思わず少し力が入ってしまった。
キョトンとしてるエリーも可愛いけど、これから向かう先は魔王が住う城。
気を引き締めないと。
「ごめん。
何でもないよ」
王城に務める多くの使用人達。
社交会を華やかに飾る貴族。
家庭教師を務めている先生方。
王都ペイディオや他の街や村で生活する多くの国民達。
天才だと呼び讃える。
勉学、剣術、魔法。
父上と母上に、かつて両親とともに魔王と呼ばれる存在を打倒した父母の友である4人の英雄ですら私の才を認めて褒め称える。
そんな私でも六英雄が1人、大賢者マリアナ様が設置したこの転移魔法陣を使わないと使用できない。
未だに自力で使う事ができない程に高位かつ高難易度の転移魔法。
転移魔法を自由に使用する事ができるのは、私が知っている中では大賢者マリアナ様と父上と母上の3人のみ。
そんな転移魔法を瞬時に、何の前触れもなく発動して私とアリーの前から姿を消した銀髪の美しい少女……
「いよいよ、ですね」
転移魔法陣が眩く光り輝き、現れるは白い輝きを放つ開け放たれた両開きの扉。
「うん……」
あの銀髪の少女が去り際に言い残した、5年前のことを調べると良い、と言う言葉。
その言葉通り、私とアリーは帰国後すぐに過去に起こった事について調べた。
私達のように幼い子供でも当然のように知っている出来事。
しかし、調べるに連れて浮き上がる違和感と数々の矛盾。
父上達に話を聞こうとしたけど、結局はそれも六柱の魔王の出現によって有耶無耶になった。
私達は、いや勇者ノアールと聖女リナの子供である私は知らなくてはならない。
あの自らを悪魔だと名乗った少女のことを。
そして彼女が去り際に言い残した5年前、今からでは6年前に起こった出来事の真実を……
「フィル様……大丈夫です!
確かに事前に知らせもなく押しかけるのはマズイですけど、獣王国とは国交もあります。
きっと大丈夫です」
「……ふぅ」
全く、何が天才だ。
これから向かうのは魔王が一柱、獣魔王レオンの居城。
アリーが不安に思うのは当然だ。
そんな事も察する事ができず。
本当なら私がアリーの不安を払ってあげないとダメなのに、考え込んで黙り込んだ上に、不安でいっぱいなハズのアリーに励まされる始末。
「ふふ……」
「フィ、フィル様?」
「ありがとう、アリー」
「は、はいっ!」
「さぁ、行くよ!」
アリーをエスコートしつつ、転移門を潜り抜け……
「フィル様」
「これは……」
あの転移魔法陣に登録されていた座標は、獣魔王レオンの居城の中庭だったハズ。
なのに、ここは……
「クックック」
「「っ!」」
笑い声の先。
そこにいるのは、数段高くなった場所にある玉座に当然のように腰掛ける存在。
「我が城へようこそ」
「獣魔王レオン……」
やっぱり、ここは謁見の間。
転移魔法陣の登録座標を変えるなんて、どうやったのかは分からないけど。
流石は魔王と言う事か。
「それで?」
「「っ!?」」
何もしていないハズなのに。
獣魔王レオンが軽く目を細めただけで、一気に押し潰されそうになる程の重圧が……!
「先触れも無く、何の用だ?」
「フィル様?」
婚約者であるエリーと繋いでいた手に思わず少し力が入ってしまった。
キョトンとしてるエリーも可愛いけど、これから向かう先は魔王が住う城。
気を引き締めないと。
「ごめん。
何でもないよ」
王城に務める多くの使用人達。
社交会を華やかに飾る貴族。
家庭教師を務めている先生方。
王都ペイディオや他の街や村で生活する多くの国民達。
天才だと呼び讃える。
勉学、剣術、魔法。
父上と母上に、かつて両親とともに魔王と呼ばれる存在を打倒した父母の友である4人の英雄ですら私の才を認めて褒め称える。
そんな私でも六英雄が1人、大賢者マリアナ様が設置したこの転移魔法陣を使わないと使用できない。
未だに自力で使う事ができない程に高位かつ高難易度の転移魔法。
転移魔法を自由に使用する事ができるのは、私が知っている中では大賢者マリアナ様と父上と母上の3人のみ。
そんな転移魔法を瞬時に、何の前触れもなく発動して私とアリーの前から姿を消した銀髪の美しい少女……
「いよいよ、ですね」
転移魔法陣が眩く光り輝き、現れるは白い輝きを放つ開け放たれた両開きの扉。
「うん……」
あの銀髪の少女が去り際に言い残した、5年前のことを調べると良い、と言う言葉。
その言葉通り、私とアリーは帰国後すぐに過去に起こった事について調べた。
私達のように幼い子供でも当然のように知っている出来事。
しかし、調べるに連れて浮き上がる違和感と数々の矛盾。
父上達に話を聞こうとしたけど、結局はそれも六柱の魔王の出現によって有耶無耶になった。
私達は、いや勇者ノアールと聖女リナの子供である私は知らなくてはならない。
あの自らを悪魔だと名乗った少女のことを。
そして彼女が去り際に言い残した5年前、今からでは6年前に起こった出来事の真実を……
「フィル様……大丈夫です!
確かに事前に知らせもなく押しかけるのはマズイですけど、獣王国とは国交もあります。
きっと大丈夫です」
「……ふぅ」
全く、何が天才だ。
これから向かうのは魔王が一柱、獣魔王レオンの居城。
アリーが不安に思うのは当然だ。
そんな事も察する事ができず。
本当なら私がアリーの不安を払ってあげないとダメなのに、考え込んで黙り込んだ上に、不安でいっぱいなハズのアリーに励まされる始末。
「ふふ……」
「フィ、フィル様?」
「ありがとう、アリー」
「は、はいっ!」
「さぁ、行くよ!」
アリーをエスコートしつつ、転移門を潜り抜け……
「フィル様」
「これは……」
あの転移魔法陣に登録されていた座標は、獣魔王レオンの居城の中庭だったハズ。
なのに、ここは……
「クックック」
「「っ!」」
笑い声の先。
そこにいるのは、数段高くなった場所にある玉座に当然のように腰掛ける存在。
「我が城へようこそ」
「獣魔王レオン……」
やっぱり、ここは謁見の間。
転移魔法陣の登録座標を変えるなんて、どうやったのかは分からないけど。
流石は魔王と言う事か。
「それで?」
「「っ!?」」
何もしていないハズなのに。
獣魔王レオンが軽く目を細めただけで、一気に押し潰されそうになる程の重圧が……!
「先触れも無く、何の用だ?」
11
お気に入りに追加
757
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる