上 下
195 / 436
第11章 悪魔姫の復讐・大賢者編

195話 滅びの日

しおりを挟む
「この小娘がっ!!」

 煌びやかな空間に、怒気を孕んだ怒声が鳴り響く。
 ミスリルで作られた白銀の全身鎧フルプレートに身を包んだ男が目にも止まらぬ速度で踏み込み、鎧と同じくミスリル製の剣を振り上げる。

 鉄をもバターのように容易く斬り裂くミスリル製の長剣を握るはフラン帝国が騎士団長。
 その実力は冒険者ギルドの等級に当てはまれば、Sランク冒険者にすら並び立つと称される帝国の守護神は敵の首を刎ねようと剣を振り下ろし……

「なっ!?」

 驚愕の声を漏らす。
 彼の眼前で光を反射しながら宙を舞う白銀の刃。
 たった今目の前で起きた現象に目を見開きながら、唖然と自身の剣を……砕け散り宙を舞うミスリルの刃先を見つめる。

「ふん」

 そんな騎士団長を尻目に、むすっとした如何にも機嫌が悪そうに美しい顔を歪める金色寄りのプラチナブランドに真紅の瞳をした少女。

 まるで煩わしい羽虫でも払うようにミスリルの剣を砕いた魔王ルーナは、自身の剣が砕け散り唖然と一瞬動きが止まった騎士団長を蔑むような冷たい目で見下し……

「この痴れ者が!」

「がはっ!?」

 その整った顔を苦痛に歪め、長身の騎士団が軽々吹き飛び純白の大理石で作られた巨大な柱をへし折って壁へと叩きつけられる。

「貴様……」

「がぁっ!」

 ドゴォ……っと、へし折れた柱が瓦礫となって崩壊し。
 壁に叩きつけられ吐血しながら、地面へと崩れ落ちた騎士団の頭をルーナは容赦無く踏み付ける。

「もしや今の言葉。
 このワタシに向かって小娘などと言ったわけではないだろうな?」

「ぐっ、あぁっ……!!」

 ピシッと、ルーナによって踏み付けられている騎士団の頭を中心に地面に蜘蛛の巣状の亀裂が走り、騎士団の苦痛の絶叫が静まり返った室内に反響する。

「ルーナ、そのくらいに。
 我々の目的はその者では無いハズです」

 誰もが固唾を飲み、この場にいる中で最も高い実力を誇る騎士団長が絶叫を挙げる光景を顔を青くしながらただ見つめる。
 そんな状況にて沈黙を破ったのは、ルーナと同じく魔王の一角に名を連ねるセイヴァエル。

「……ふん」

 セイヴァエルの言葉を受けて、明らかに不満だって顔をしながらスッと騎士団長の頭の上から足を退けたルーナは軽く周囲を見渡し。
 顔を青くする騎士達、唖然と地面へと座り込む貴族共。

 そして最後に周囲よりも一段高くなった場所にて、大理石の円卓を囲む3人。
 フラン帝国、グローリー王国、アウストロ皇国の君主達を見据えてその真紅の瞳を細める。

「この豚共が国王か?」

 コツ、コツーーー
 静寂が舞い降りる空間にルーナが歩く音だけが鳴り響き、その音によって唖然と呆けていた3バカの意識が引き戻されて。
 ゆっくりと歩いてくるルーナの姿を見てその顔を恐怖に染め上げる。

「ひっ、ヒィッ!」

「く、来るな!!」

「我らを誰だと思っておる!?」

 ガタっ!  っと、音を立てて椅子を倒し。
 ドカッ!  っと、恐怖で腰が抜けて無様に地面に這いつくばりながらルーナから遠ざかろうと、醜く肥え太った身体を必死に動かす3バカ達。

 さてと、醜い豚共の無様な姿も見れたし。
 ふっ、ふふふ、ふはぁっはっは!  そろそろ最強にして最凶の魔王たるこの私の登場だな!!

 まぁ、登場と言っても正確には姿が見えないようにしてただけで、ちょっと前から既にこの場所にいたんだけど……細かい事は気にし無い!

 とりあえず、この場所の天井を吹き飛ばしてっと!
 純白の翼をバサァッ!  って広げて光り輝く羽毛が舞い散る中、月夜を背にゆっくりと地に降り立つ……ふっ、我ながら完璧な演出!!

「ふふふ、こんばんわ。
 私は……」

「っ!  貴様、何者だ!?」

 チッ、今の今までルーナにビビって黙り込んでた癖に!
 今更、有象無象の近衛騎士風情がでしゃばって来んなっ!!

「〝黙れ〟」

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 よし!  これで静かになったな。
 その気になれば一瞬で全員を殺せるけど、もっと絶望させるまでは簡単に殺さずにただ黙らせる。
 ふふん!  良い仕事をしたわー。

「な、何なのだ貴様は?   
 い、いや!  貴様が誰かなどはどうでも良い」

「そうだ!  おいそこの小娘!  
 天井を壊したのは貴様であろう!?  その力で早く我らを助けぬか!!」

「何をやっておる!?  
 何処の誰とも知らぬ下賤なお前に我らを助けらと言う栄誉をくれてやると言ってあるのだぞ!?  この愚図が!!」

 この豚共はこの期に及んで何を言ってるのやら。
 まさかこの状況で、私に助けを求めてくるとか……

「ふふっ」

「な、何がおかしいっ!?」

 いやぁ、ここまでバカで愚かとか流石に予想以上だわ。
 あぁ、ウケる!  ふふふ、あはっはっは!!

「何度も言わせるな!  早く我らを……」

「黙れ」

「「「ヒィッ!?」」」

 うわぁ……ちょっと魔王覇気で威圧しただけなのに、情け無い声を上げながら失禁するとか。
 マジでキモいわー。
 まっ、現状を正しく理解できて無いみたいだし、汚らわしい豚共に現実を教えてやろう!!

「私の名はレフィー。
 その2人、ルーナとセイヴァエルと同じく魔神と呼ばれし魔王が一人」

「魔、王……」

 その通り!
 自身の汚物に塗れて、唖然と呟くのは……名前は忘れたけど、確かアウストロ皇国の皇王だったかな?
 まぁ、とにかく!  わかってもらえたようで何より!!

「ふふふ……お前達は敗北した。
 愚かにも我が悪魔王国ナイトメアに戦いを仕掛けた3カ国連合は今日、この日をもって滅ぶ」

 まぁ、滅ぶと言っても地図からその国名が消滅するだけであって何もこの国に住む人間を皆殺しにして国土を更地にしようってわけじゃない。

 グルメとかスイーツは勿論!  地球みたいにゲームとかの娯楽や新たな技術を発明して、文明を発展させるためには人間を殺し尽くすわけにはいか無い。

 それに、一部を除いて基本的に人間は嫌いだし。
 国を滅ぼす事は決定事項でも、人が一人もいなくなった更地を手に入れても意味がない。

 現に、この帝都フラーニュを陥落させるときも民間人は殺さ無いように2人に言っておいたから民間人は殺されて無いし。
 まっ!  敵対する者は容赦無く潰すけど。

「喜べ、豚共。
 お前達には自分の国が滅び行く光景を見せてやる」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

処理中です...