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第11章 悪魔姫の復讐・大賢者編

186話 最重要緊急伝達

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「何だって……それは本当なのか?」

 超大国アルタイル王国が王都ペイディオ。
 人族ヒューマン獣人族ライカンスロープ、エルフにドワーフ、多種多様な種族が行き交い、多くの人々で賑わう王都の中央に聳え立つ美しき城の一角。

 国王にして魔王を討ち、世界を救った勇者。
 英雄王ノアール・エル・アルタイルの執務室にて、この部屋の主人であるノアールの……

 執務室に集結せし6人の英雄達。
 救世の六英雄全員の視線を一身に受けて緊張に身を強張らせ、固唾を呑み込みながらも騎士は最敬礼を保ったままに口を開く。

「はっ!  冒険者ギルドより各国へと最重要緊急伝達が通達なされました。
 まず間違いなく事実だと思われます」

 淀む事なくそう断言した騎士の言葉に、重苦しい沈黙が舞い降りる中。
 六英雄が1人、冒険王ガスターは内心で舌打ちをしつつ一人呟く……始まったか、と。

 彼の脳裏に甦るは、まるで煩わしい羽虫でも見るような、取るに足らないゴミでも見るような冷たくも美しいアメジストの瞳。
 基本的に無表情ながらも寸分の狂いもなく整った容姿の幼い少女。

 そのまさしく神の如き美貌をとても楽しげに、愉しげに歪め。
 笑い、そして嗤いながら遊びと称して人類最強の一角である自身を圧倒した原初の悪魔。
 まだ幼い外見ながらも絶大な力を持った可憐な魔神の姿。

「わかった。
 報告ご苦労様、下がって構わないよ」

「はっ!」

 ノアール言葉を受けて報告を告げた騎士が退出し……仲間達が。
 自身を含め救世の六英雄と謳われる、6人の人類最強の存在達が皆一様に浮かべる難しい表情を眺め。

 5人と共に自分が真剣な面持ちで話し合っている事すら何処か他人事のように感じながら、声に出さない言葉を。
 原初の悪魔……魔王が一柱ヒトリである魔神レフィーによって施された魔法によって仲間達には伝える事ができない言葉を紡ぐ。

 ついに、動き出したか。
 自らを貶め、殺した俺達に対する復讐すらも愉しむ悪魔の遊びが。
 国を……この大陸を巻き込んだ魔神のゲームが始まったか……


『ふふ、ふふふ、あはは!
 あぁ、やっとこれで一人目だわ……ふふ、ざまぁみろ!!』


 楽しそうに。  愉しそうに。  満足そうに。
 そして嬉しそうに笑い、狂ったように嗤う可憐な少女の姿と声が。
 絶対に敵対してはならない圧倒的強者の姿がガスターの脳裏をよぎった……





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 勇者を筆頭とする救世の六英雄によって呼びかけに応じ、大陸に存在する殆どの国家が出席した緊急国家会議。
 その会議において決議された大陸国家連合による魔国……悪魔王国ナイトメアへの宣戦布告。

 後に聖戦……聖魔大戦と呼ばれる大戦の幕開けとされるグローリー王国、フラン帝国、アウストロ皇国による3カ国連合と悪魔王国ナイトメアによる戦いから約2週間。

 その日。
 五大国を始めとする全ての国々へと、超多国籍機関にして国際組織である冒険者ギルドから大陸中の人々に。
 人類に関与する程の重大事項の場合のみ発令される最重要緊急伝達によって……

 悪魔族デーモン、魔神、名称不明。
 獣人族ライカンスロープ、獣魔王レオン。
 竜種ドラゴン、暗黒竜王セイヴァエル。
 吸血鬼ヴァンパイア、鮮血姫ルーナ。
 巨人族ジャイアント、大地の支配者ソルエール。
 妖精族ピクシー、妖精女王カトレア。

 六柱の魔王の誕生が。
 魔王と言う新たな勢力の誕生と台頭が、六柱の魔王による声明と共に通達された。
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