107 / 436
第6章 魔国進出編
107話 邂逅 その1
しおりを挟む
国土の多くを海に面した海洋商業国家アクムス。
商業の中心地、商人の聖地と呼ばれ。
この国で手に入らない物は無いとすら呼ばれるアクムス王国の首都フェニル。
海に面する海岸にて賑わう港は世界最大の規模を誇り、街には多くの商会や商店が立ち並ぶ。
緩やかな小高い丘の頂上には、フェニルの街並みを一望できる立派な王城が聳え立つ。
そんな活気に満ち溢れて、多くの人で賑わう街道を多くの騎士を引き連れた馬車がゆっくりと走る。
豪華絢爛。
一目で上位貴族かそれに準ずる存在が乗っている事が察せられる馬車の中……
「はぁ……」
金髪碧眼の幼い少年が外見に見合わない大人びた態度で僅かに目を付してため息をこぼす。
そんな将来は多くのご令嬢達を虜にするだろう少年に、隣に腰掛ける少女が声を掛ける。
「フィル様どうかしたのですか?」
「ん? いや何でも無いよ」
「むむ、ダメですよフィル様、また難しい事をお考えになっていましたね?
今は息抜きの時間なのですから、フィル様は難しい事は考えずに楽しんでください」
ビシッと論するように言い放つ少女にフィルと呼ばれた少年は柔らかな笑みを浮かべる。
「そうだね……うん、アリシアの言う通りだ。
せっかく国外に来たのだから、楽しまないと」
「ふふ、そうですよ!
せっかくの機会なのですから、楽しまないと勿体無いです!
そ、それにフィル様とお出掛けなんて滅多に無いですし……」
恥じらうように頬を染める少女。
フィルと同じくまだ幼く幼女と呼べる年齢ながらも非常に整った容姿の美少女であるアリシアは、恥ずかしさから逸らした視線をチラッと隣に座る少年へと向ける。
「プっ、ふふふ」
「むぅ、笑う事ないじゃ無いですか」
「ごめん、ごめん。
アリシアがあまりにも可愛かったからつい」
「かわっ」
柔らかな微笑みを浮かべるフィルにアリシアの顔が真っ赤に染まる。
「フィル様……あまり揶揄わないで下さい」
「僕は事実を言っただけだよ?」
「うぅ……」
柔らかな微笑みを浮かべるフィルと、恥じらうように頬を赤く染めるアリシアの視線が交わり……
「こほん、お2人とも私も同乗しているのですが……」
2人の対面に腰掛ける、メイド服に身を包み苦笑いを浮かべた女性の言葉にアリシアの動きがビシッと固まる。
対面に座っていた侍女の事を忘れてしまっていたことに対してか、侍女に見られていた事に対してか。
はたまたその両方か、アリシアの顔がゆっくりと真っ赤に染まって行き……
「ご到着したようです」
侍女の言葉と同時に馬車が停車した。
「もう少し可愛いアリシアを見ていたかったけど……仕方ないね。
さぁお嬢様、参りましょうか」
「は、はぃ……」
外から軽装の騎士が開けた扉からフィルにエスコートされ、消え入りそうな声で下車したアリシア。
そんな2人の随行している美女、護衛兼アリシアの侍女であるエリーは……
「お2人とも早熟すぎですよ。
これでまだ5歳だなんて……」
凛と澄ました顔をしながら、誰にも聞こえない程度の声でポツリと呟き。
見ている私の方が恥ずかしくなってしまいます! と内心愚痴を漏らしながら2人の後を追い……
「っ!!」
目的地である首都フェニルで最高級の品質と信頼を誇るジュエリーショップに足を踏み入れた瞬間。
その存在に、白銀の髪をした少女に息を呑む。
この店にいる事から貴族か大商人の息女だとは思われるがそれだけ。
特に危険は感じないし、魔力も感じ取れない。
脅威でもなんでも無い普通の客と変わらない、ただの普通の少女。
なのに……そのハズなのに。
店に入った瞬間から……その少女を視界に入れた瞬間から、視線が釘付けにされたように動かせず。
手足には震えが走り、全身から嫌な汗が滲み出す。
「エリー? どうかしましたか?」
店に入った瞬間から動かないエリーにアリシアが不思議そうに声を掛けるも、応える事も出来ずにただ唖然と硬直するエリーの視線の先で……
「ふふ」
少女が笑った。
「っ!」
「エリーっ!」
膝から崩れ落ち、まるで首を絞められていたかのように激しく咳き込むエリーにアリシアが駆け寄り……
「……これなら問題ないか」
護衛の騎士達が騒然とし剣に手をかけ周囲を警戒する中、まだ少し幼さを残す凛とした声が鳴り響き。
「この子が……ふふふ」
輝くような白銀の髪の少女が、軽く笑みを浮かべた。
商業の中心地、商人の聖地と呼ばれ。
この国で手に入らない物は無いとすら呼ばれるアクムス王国の首都フェニル。
海に面する海岸にて賑わう港は世界最大の規模を誇り、街には多くの商会や商店が立ち並ぶ。
緩やかな小高い丘の頂上には、フェニルの街並みを一望できる立派な王城が聳え立つ。
そんな活気に満ち溢れて、多くの人で賑わう街道を多くの騎士を引き連れた馬車がゆっくりと走る。
豪華絢爛。
一目で上位貴族かそれに準ずる存在が乗っている事が察せられる馬車の中……
「はぁ……」
金髪碧眼の幼い少年が外見に見合わない大人びた態度で僅かに目を付してため息をこぼす。
そんな将来は多くのご令嬢達を虜にするだろう少年に、隣に腰掛ける少女が声を掛ける。
「フィル様どうかしたのですか?」
「ん? いや何でも無いよ」
「むむ、ダメですよフィル様、また難しい事をお考えになっていましたね?
今は息抜きの時間なのですから、フィル様は難しい事は考えずに楽しんでください」
ビシッと論するように言い放つ少女にフィルと呼ばれた少年は柔らかな笑みを浮かべる。
「そうだね……うん、アリシアの言う通りだ。
せっかく国外に来たのだから、楽しまないと」
「ふふ、そうですよ!
せっかくの機会なのですから、楽しまないと勿体無いです!
そ、それにフィル様とお出掛けなんて滅多に無いですし……」
恥じらうように頬を染める少女。
フィルと同じくまだ幼く幼女と呼べる年齢ながらも非常に整った容姿の美少女であるアリシアは、恥ずかしさから逸らした視線をチラッと隣に座る少年へと向ける。
「プっ、ふふふ」
「むぅ、笑う事ないじゃ無いですか」
「ごめん、ごめん。
アリシアがあまりにも可愛かったからつい」
「かわっ」
柔らかな微笑みを浮かべるフィルにアリシアの顔が真っ赤に染まる。
「フィル様……あまり揶揄わないで下さい」
「僕は事実を言っただけだよ?」
「うぅ……」
柔らかな微笑みを浮かべるフィルと、恥じらうように頬を赤く染めるアリシアの視線が交わり……
「こほん、お2人とも私も同乗しているのですが……」
2人の対面に腰掛ける、メイド服に身を包み苦笑いを浮かべた女性の言葉にアリシアの動きがビシッと固まる。
対面に座っていた侍女の事を忘れてしまっていたことに対してか、侍女に見られていた事に対してか。
はたまたその両方か、アリシアの顔がゆっくりと真っ赤に染まって行き……
「ご到着したようです」
侍女の言葉と同時に馬車が停車した。
「もう少し可愛いアリシアを見ていたかったけど……仕方ないね。
さぁお嬢様、参りましょうか」
「は、はぃ……」
外から軽装の騎士が開けた扉からフィルにエスコートされ、消え入りそうな声で下車したアリシア。
そんな2人の随行している美女、護衛兼アリシアの侍女であるエリーは……
「お2人とも早熟すぎですよ。
これでまだ5歳だなんて……」
凛と澄ました顔をしながら、誰にも聞こえない程度の声でポツリと呟き。
見ている私の方が恥ずかしくなってしまいます! と内心愚痴を漏らしながら2人の後を追い……
「っ!!」
目的地である首都フェニルで最高級の品質と信頼を誇るジュエリーショップに足を踏み入れた瞬間。
その存在に、白銀の髪をした少女に息を呑む。
この店にいる事から貴族か大商人の息女だとは思われるがそれだけ。
特に危険は感じないし、魔力も感じ取れない。
脅威でもなんでも無い普通の客と変わらない、ただの普通の少女。
なのに……そのハズなのに。
店に入った瞬間から……その少女を視界に入れた瞬間から、視線が釘付けにされたように動かせず。
手足には震えが走り、全身から嫌な汗が滲み出す。
「エリー? どうかしましたか?」
店に入った瞬間から動かないエリーにアリシアが不思議そうに声を掛けるも、応える事も出来ずにただ唖然と硬直するエリーの視線の先で……
「ふふ」
少女が笑った。
「っ!」
「エリーっ!」
膝から崩れ落ち、まるで首を絞められていたかのように激しく咳き込むエリーにアリシアが駆け寄り……
「……これなら問題ないか」
護衛の騎士達が騒然とし剣に手をかけ周囲を警戒する中、まだ少し幼さを残す凛とした声が鳴り響き。
「この子が……ふふふ」
輝くような白銀の髪の少女が、軽く笑みを浮かべた。
10
お気に入りに追加
758
あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』~リエナIf~異世界を救って帰還したら聖女がついてきたのでイチャコラ同棲して面倒をみようと思います。
マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
ファンタジー
◆1行あらすじ
異世界を救った勇者(元陰キャ)が、ともに戦った可愛い聖女と地球に帰還して甘々ラブコメしつつ学校などで無双します。
◆あらすじ
織田修平は学校カースト底辺の陰キャ男子高校生。
修平はある日突然、異世界『オーフェルマウス』に召喚され、召喚した神官リエナとともに5年をかけて魔王を倒し、世界を救った。
そして地球に帰還する瞬間、なんとリエナが一緒に着いてきてしまったのだ――!
修平は鍛え上げた身体能力や勇者スキルによって学校で大活躍。
家でも学校でも好意を寄せてくるリエナと甘々ライフを送ります。
(一緒に寝たり、遊園地で甘々デートをしたり)
ついでにこの世界までやってきた魔王も、勇者の力で余裕で粉砕!
――――
本来は異世界に残り負けヒロインルートをたどるはずのリエナが、最初の段階で着いてきてしまった「もしも」のストーリー。
つまりリエナがヒロインバージョンのリスクールです。
これ単体で完全に完結した1つの物語になっています。
でも本編とリンクしたシーンも所々ありますので、本編を読んでからの方が「ああこれはあのシーンね!」と少しだけニヤリとできるかと思います(*'ω'*)b
本編である
『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』はカクヨムなどで連載しています。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる