付与って最強だと思いませんか? 悪魔と呼ばれて処刑されたら原初の悪魔に転生しました。とりあえず、理想の国を創るついでに復讐しようと思います!

フウ

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第3章 大陸統一編

70話 忠誠を誓う

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「んぅ~」

 広々としたベッドで眠っている美しい少女の目蓋がピクリと動き、ゆっくりとその目が開けられる。

「ここは……?」

 少女が身を起こすと同時に、純白のシーツに広がっていた黒い髪が持ち上がる。
 まだ少しぼうっとした様子で周囲を見渡し……

「じぃー」

「……」

 ベッドのすぐ横で自身を真っ直ぐに見つめる瞳と目が交差する。
 ぼうっとしていた少女の意識が急速に浮上する。

「むむ、お目覚めですか?」

 目が覚めたらすぐ隣でジッと見つめてくる存在。
 雪のように真っ白な三角の耳をピコピコと動かし首を傾げる存在に、完全に意識が覚醒した少女が思わず驚愕の声を上げようと口を開き……

「わっ、ダメです!」

 バッ!  っとその口を押さえられた。

「静かにお願いします。
 別に私は怪しい者でも無いですし、誓ってミリアさんに何もしないので、ぜった~いに声を荒げないで下さい。
 わかりましたか?」

 その言葉を受けて驚きながらも少女……四魔王が一柱、血王ミリアがコクコクと頷くと、ゆっくりと口を押さえていた手が離される。

「横、横を見て下さい」

 声を潜めて言われた言葉に従って自らの隣に視線を向けると……

「これは……」

 そこには規則正しく胸を上下させる、煌めくような白銀の髪に整った容姿の少女の姿。

「レフィー様?」

「ふふふ、ミリアさんが目を覚ますのを待っておられたのですが。
 お疲れだったようで、そのまま眠ってしまわれたようなのです」

 そう言って愛おしそうな視線を向ける先では、僅か半年足らずで数百年以上にも及ぶ均衡を崩した少女。
 恐るべき力を誇る悪魔が……ミリアの主人となったレフィーが微塵の警戒心も無く安心し切った面持ちで寝息を立てていた。






 *






 レフィーが眠るベッドの脇にあるソファーにローテーブルを挟むようにして3人の眷属達が腰を下ろして向かい合う。

「ではまずは自己紹介から致しましょう。
 初めましてミリアーナさん、私の名はシルヴィア、レフィーお嬢様の眷属にして専属メイドです。
 これからよろしくお願いしますね」

「じゃあ次は私ですね!
 改めまして私の名前はミーシャ、私もミリアさんと同じでご主人様の眷属です。
 つまりはミリアさんの先輩です!」

「こ、この度、レフィー様の眷属となりました。
 吸血鬼のミリア……ミリアーナです。
 その、こちらこそよろしくお願いします」

 シルヴィアが礼儀正しく。
 ミーシャが元気に。
 そして最後にミリアーナが困惑しながら頭を下げる。

「ミーシャが突然、先輩だなんて言うから困惑してしまったようですね。
 安心して下さい、我ら眷属の間に上下関係なんてありませんから」

 事実、ミリアーナは困惑していた。
 とは言え、ミーシャが言った先輩がどうのといったことにでは無く……

 えっ?  えっ!?  
 シルヴィアさんも、ミーシャさんもちょっと強過ぎませんか!?
 気のせいかな……普通に私と、四魔王と同格に見えるんですけどっ!??

「では、ミリアーナさん」

「は、はい!」

「まず最初にレフィーお嬢様の眷属となった貴女に、お嬢様の目的と過去をお話ししましょう……」






 *






「ふぅ……ん」

 ふぁ、ベッドふかふか、お布団暖かい……気持ちいい……あれ?
 ベッド?  お布団??
 私は進化の眠りについてるミリアを見てたハズ、何で私がベッドで寝てるんだろ?

「……ミリア?」

 いつの間にか隣にいたハズのミリアまでいなくなってるし……う~ん、わからん。
 とりあえずシルヴィアかミーシャを……

「むへっ!?」

「レフィー様ぁっ!!」

 こ、この顔に押し付けられる柔らかな感触!  これは紛れも無くおっぱいっ!?
 けどこの感じはシルヴィアでも無いしミーシャでも無い、それよりももっと小さな……

「み、みいあミリア?」

「うぅ、ミリアは、ミリアーナは絶対にレフィー様を裏切らないから!
 わたしがレフィー様の事を絶対に守ってみせるっ……!!」

「う、うん?
 ありがと??」

 な、何で目が覚めたらいきなりミリアが泣いてるの!?
 意味が……って、ミーシャも!  シルヴィアまで涙ぐんでるっ!?

 も、もしかして私のせい?
 私がミリアが起きるまで見てるとか言っときながら寝落ちしたから心配をかけちゃったの……!?

「あ、あの……えっと、その……」

 いやもう!  わけわからないんですけどっ!?
 えっ?  うそ、待ってヤバイっ!  何か混乱してパニックになったせいか視界が滲んで……

「うぅ……っ!」

「レフィーお嬢様!?」

「ご主人様っ!!」

「レフィー様っ!??」




 パニックに陥り泣き出したレフィーを眷属3人で必至にあやすと言う騒動があったものの。
 この日、終焉の大地を支配していた四魔王が一角たる血王ミリアは、恐ろしいまでの力を秘めつつも幼なく可憐な主人に忠誠を誓った。
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