上 下
24 / 436
第2章 勢力拡大編

24話 オークは嫌い、けど魂は別

しおりを挟む
「そろそろ限界かな?」

 ズシン……

 魔法を解いた途端、重力に一切逆らう事なくオークエンペラーが崩れ落ちた。
 それはもう見事に、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 う~ん、本当はもうちょっと試したかったんだけど……まぁ仕方ないか。
 まだ何とか生きてはいるけど、地面に倒れ伏してピクリとも動かないし、傷の修復もされてない。

 まぁ、あれだけ一方的に攻撃した訳だし。
 流石のオークエンペラーと言えども、瀕死になるのも当然か。
 本当は接近戦も試したかったんだけど……それは違うヤツで試すとしよう。
 ぶっちゃけ、あの豚には触れたくないし。

 とは言え、この初戦闘での収穫は非常に大きい。
 深窓の御令嬢である私が魔法とスキルを使った戦闘をこなせた事は勿論……
 今の私は特Aランク、厄災級であるオークエンペラーよりも強い!!

 うんうん、実に満足のいく結果だ。
 自業自得とは言え、ここまで検証に付き合ってくれたオークエンペラー君には感謝……はしないけど、せめて苦しむ事なく一瞬で終わらせてあげるとしよう。

「バレット」

 オークエンペラーの頭部が弾け飛び、辺り一帯に血の匂いが充満する。
 いやー、荒事とは縁遠い深窓の御令嬢だったのに、この光景を前に何も思わないなんて……

 本当に悪魔になってて良かったわ。
 精神の構造が悪魔クオリティになってなかったら、絶対に吐いちゃってる自信がある。

 とは言っても、別にオークエンペラーの死体なんて見たくもないし。
 かなり魔力を消耗して怠い。
 ぶっちゃけ、もう帰って寝たい。
 と言うか、これだけ頑張ったんだから惰眠を貪る程度の褒美はあって然るべきだ。

 よし、帰ろう。
 ここにいてもする事は無いしね。
 今すぐ!  すぐに帰ろう!!

「シルヴィア、帰る」 

「お嬢様、ダメですよ」

 無言でシルヴィアから視線を逸らした私は悪く無い。
 と言うか、これが普通の反応だと思う。
 だって……

「殺した者の魂は、責任を持ってお食べ下さいませ」

 和やかな微笑みを浮かべて、大量の魂を掌の上に浮かべてるんだよ?
 私の専属メイドが悪魔に見える……いやまぁ、悪魔だけども。

「だって……」

「だって、じゃありません」

「うぅ……」

 ヤバい、涙目になって視界が歪む!  
 くっ、やはりテンプレよろしくこの幼女の身体に精神が引っ張られるのか……しかし、こは好都合!!

 今の私はイヤイヤって駄々をこねる幼児に見える事だろう。
 けど思い出して欲しい。
 今の私は立派な幼児!  誰もが認める幼女なのだ!!

 ふっ、ぐずるのは幼児の専売特許。
 例え魂と言えど、触れたくないオーク共の魂から逃げ果せるためにはプライドなんて捨ててやる!

「そんなに嫌なのですか?」

 勝った。
 多少卑怯だったかも知れないけど、勝手に涙が出てきたんだから仕方ない。

「そうですか……でしたら、致し方ありませんね。
 この魂は私が頂くとしましょう。
 んっ、美味しい!  この濃厚かつ深く、何とも形容し難い味わい!  非常に美味です!!」 

「ゴクリ……」

 そ、そんなに美味しいのかな?
 はっ!?  いやいやいや、騙されるな私!!

「んっ、こっちの魂はまた違った美味しさがありますね」

「ち、違った……」

「はい、どうやら魂はその者の持つスキルや保有する魔力量などによって異なる様です。
 例えば最初に食べた魂はお肉の様な旨味で、その次の物はケーキの様な甘さでした。
 十人十色と言いますが、魂でも同様の様ですね」

 た、食べたい。
 でも、ついさっき食べないって公言しちゃったし……いったいどうすれば……

「うぅ……」

「ふふ、レフィーお嬢様もお召し上がりになりますか?」

「っ!  食べるっ!!」

 笑いたければ笑うがいい!
 前世や前前世では高価な食材や香辛料を使った料理を食べてはいたけど、自分の好きな物なんて滅多に食べれない生活を送ってたんだ。
 今世では好きなだけ食べたい物を食べてやる!!

「はい、どうぞ召し上がって下さいませ」

「んっ、美味しい!」

 美味しい物を好きな時に好きなだけ食べる。
 これぞ至福の時間っ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

100倍スキルでスローライフは無理でした

ふれっく
ファンタジー
ある日、SNSで話題に上がっていた [ Liberty hope online ] 通称リバホプと呼ばれているMMORPGのオンラインゲームが正式にサービスを開始した。 そのプレイヤーの一人である月島裕斗は、誰も倒す事が出来なかった期間限定のボスモンスターに挑み続け、長期にわたる激戦の末に勝利する。しかしその直後、過度な疲労によって深い眠りへと落ちてしまった。 次に目を覚ますと、そこは見知らぬ世界。さらにはゲームで使っていたアバターの身体になっていたり、桁違いなステータスやらおかしなスキルまで……。 これは、 美少女として異世界に転生した彼(?)のほのぼのとした日常……ではなく、規格外な力によって様々な出来事に巻き込まれる物語である。 ※表紙イラストはテナ様より。使用、転載の許可は事前に得ています。

処理中です...