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第1章 悪魔誕生編
02話 悪魔誕生
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静かな水の中を漂っているような、微睡の中にいるような不思議な感覚。
ここはいったい何処で、どんな状況なんだろう?
『ぴろん! 個体名────の願いを確認……受諾されました。
これより、記憶の整理を開始します』
あぁ、そうか思い出した……私は……死んだんだ。
私だけじゃない、お父様も、お母様も、兄様も、妹も、まだ赤ん坊だった弟も。
優しかったメイドや執事、従者の皆んなも、相談に乗ってくれた親友も……皆んな死んだ。
何で?
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で……
『精神の異常を確認、鎮静化を実行します。
個体名────は睡眠状態へ移行……処理を開始します』
流れるように再生される記憶の数々。
幸せだった小さい頃。
殿下の婚約者になってからの王子妃教育、王妃教育で辛くも充実した日々。
そして、強大な魔王の復活。
空を埋め尽くす魔王の軍勢が進軍して来たのが12歳の時だった。
アレから、全てが変わった。
王都からは笑顔が消え、不安と恐怖から人々の心は荒んでいった。
勇者である殿下……ノアール様は、そんな終わりの見えない暗闇の中にあって、人々を導き輝く希望の光。
けど……ノアール様が勇者として選ばれてからも、強大な魔王を相手に戦況は劣勢。
そして国王陛下達は、遂に禁忌に手を出してしまった……異世界召喚という禁忌に……
『処理が完了しました。
続いて、新たな種族の創造申告へ移行……開始します』
異世界召喚で現れたのは1人の少女。
聖女と呼ばれる彼女の力は凄まじく、その神聖な邪を払う力によって劣勢だった戦況は瞬く間に巻き返す。
聖女が召喚されてから僅か1年。
私が14歳の時に魔王はノアール様達によって討ち倒され、世界には平和が戻った……ハズだった。
いや、大多数の人にとっては、確かに平和は戻った。
けど……その大多数に私は含まれていなかった。
戻ってきた婚約者、勇者であるノアール様を出迎えた私が言われたのは……
〝君には申し訳ないが、聖女であるリナを正妻とする〟
別にそれでも構わなかった。
私は多少魔法が得意なこと以外は、礼儀作法などをのぞいて付与と言う世間では無能やハズレと言われているスキルしか持っていない。
そんな私よりも聖女である彼女の方が正妃に相応しい、私だって仮にも妃教育を受けてきた身。
そんな事はわかりきっていたし、周囲がそう判断するだろうことも当然理解していた。
そもそも、ノアール様との婚約は我が筆頭公爵家と縁を結びノアール様の後ろ盾としたかった王家から持ちかけてきた縁談。
王妃の座なんて欠片の興味もない。
感情を殺して常に冷静沈着。
お茶会や夜会に他国との外交。
常に重大な責任が付き纏う王妃なんて百害あって一利無し。
ノアール様との婚約が解消され周りに何と陰口を言われようと、大切な家族と一緒に笑って生きていければそれで良かった。
しかし……あの聖女はそうは思わなかった。
『申請が受理されました。
個体名ーーーーーの転生が開始されます』
私の存在を邪魔に思った聖女は、同じく公爵家を邪魔に思う貴族達と結託。
ノアール様との婚約解消と今後の話し合いのために王宮に出向いた時、偶然出会った彼女が突然悲鳴をあげて倒れ込み……即座に駆け込んできた騎士達によって私は捕縛された。
旅の中で聖女と恋仲になっていたノアール様は、私の言葉には耳を傾けもせず。
国としても英雄と呼べる実力を持つ聖女を国に繋ぎ止めたかった事から私の主張は一蹴された。
それから先は地獄だった。
地下牢に囚われ、何時の間にか〝悪魔〟と言う名の悪の化身とさて、人々は魔王の復活も私のせいだと声高に叫ぶ。
嫉妬から聖女を殺そうとしたと、国家転覆を企んでいたなどと荒唐無稽な冤罪をかけられ。
存在するハズの無い情報を吐かせるための拷問、暴力、辱め………そして、私の心は死んだ。
鞭で打たれようと。
爪を剥がされようと。
殴る蹴るの暴行を受けようと。
回復できるからと、指や手足を切断されようと。
辱めを受けようと。
何も感じなくなった。
牢の前に聖女やノアール様、国王陛下が来て何か言っていたけど、その言葉ももう聞こえない。
ただただ、早く死にたい。
一秒でも、一瞬でも早く楽になりたいと……
『記憶の統合が完了しました。
転生により、全ての生態情報が初期化……実行します』
そして、私の処刑が決まり。
奴隷よりもみすぼらしい格好で王都中を連れ回されて見世物にされ。
磔にされて、そしてやっと断頭台に立たされた……
人々に石を投げられようと。
〝悪魔〟と蔑まれ、罵声を浴びせられようと、最早どうでも良かった。
けど……もう既に枯れ果てたと思っていた涙が流れた。
余計な事を喋らないようにと潰された喉から、声にならない嗚咽が漏れた。
私の大切な家族も、私を守ろうとしてくれた使用人のみんなも、唯一私を庇ってくれた親友も。
全員が苦痛に歪んだ表情で、その首だけが晒されていた……
〝悪魔を殺せっ!!〟
醜い。
私は、こんなにも醜い奴らの幸せを守ろうと、必死になって辛く厳しい教育をこなして来たの?
こんな奴らの為に、みんなは殺されたの?
ふざけるな……!!
自分の中で死んだと思っていた心がドス黒い激情に染まって塗り潰されていく。
絶対に許さない。
たとえ何があったとしても──お前らの言う〝悪魔〟となって必ず報いを! 復讐してやるっ!!
断罪の刃が振り上げられ……その瞬間、私は……
『……転生が完了しました。
これにより、願いの全プロセスが終了します』
思い出した、私は……
この世界には存在しなかった概念。
異世界より召喚された聖女が広めた〝悪魔〟と言う名称で呼ばれた少女。
勇者にして大国アルタイル王国の王太子ノアールの元婚約者にして、筆頭公爵家の御令嬢であった少女が処刑された日。
後に聖炎祭と呼ばれる事となるその日。
人々が誰も知らないとある大陸にて、この世界には存在しなかった……
そうか、悪魔になったんだ。
最古にして始まり──原初の悪魔が誕生した。
ここはいったい何処で、どんな状況なんだろう?
『ぴろん! 個体名────の願いを確認……受諾されました。
これより、記憶の整理を開始します』
あぁ、そうか思い出した……私は……死んだんだ。
私だけじゃない、お父様も、お母様も、兄様も、妹も、まだ赤ん坊だった弟も。
優しかったメイドや執事、従者の皆んなも、相談に乗ってくれた親友も……皆んな死んだ。
何で?
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で……
『精神の異常を確認、鎮静化を実行します。
個体名────は睡眠状態へ移行……処理を開始します』
流れるように再生される記憶の数々。
幸せだった小さい頃。
殿下の婚約者になってからの王子妃教育、王妃教育で辛くも充実した日々。
そして、強大な魔王の復活。
空を埋め尽くす魔王の軍勢が進軍して来たのが12歳の時だった。
アレから、全てが変わった。
王都からは笑顔が消え、不安と恐怖から人々の心は荒んでいった。
勇者である殿下……ノアール様は、そんな終わりの見えない暗闇の中にあって、人々を導き輝く希望の光。
けど……ノアール様が勇者として選ばれてからも、強大な魔王を相手に戦況は劣勢。
そして国王陛下達は、遂に禁忌に手を出してしまった……異世界召喚という禁忌に……
『処理が完了しました。
続いて、新たな種族の創造申告へ移行……開始します』
異世界召喚で現れたのは1人の少女。
聖女と呼ばれる彼女の力は凄まじく、その神聖な邪を払う力によって劣勢だった戦況は瞬く間に巻き返す。
聖女が召喚されてから僅か1年。
私が14歳の時に魔王はノアール様達によって討ち倒され、世界には平和が戻った……ハズだった。
いや、大多数の人にとっては、確かに平和は戻った。
けど……その大多数に私は含まれていなかった。
戻ってきた婚約者、勇者であるノアール様を出迎えた私が言われたのは……
〝君には申し訳ないが、聖女であるリナを正妻とする〟
別にそれでも構わなかった。
私は多少魔法が得意なこと以外は、礼儀作法などをのぞいて付与と言う世間では無能やハズレと言われているスキルしか持っていない。
そんな私よりも聖女である彼女の方が正妃に相応しい、私だって仮にも妃教育を受けてきた身。
そんな事はわかりきっていたし、周囲がそう判断するだろうことも当然理解していた。
そもそも、ノアール様との婚約は我が筆頭公爵家と縁を結びノアール様の後ろ盾としたかった王家から持ちかけてきた縁談。
王妃の座なんて欠片の興味もない。
感情を殺して常に冷静沈着。
お茶会や夜会に他国との外交。
常に重大な責任が付き纏う王妃なんて百害あって一利無し。
ノアール様との婚約が解消され周りに何と陰口を言われようと、大切な家族と一緒に笑って生きていければそれで良かった。
しかし……あの聖女はそうは思わなかった。
『申請が受理されました。
個体名ーーーーーの転生が開始されます』
私の存在を邪魔に思った聖女は、同じく公爵家を邪魔に思う貴族達と結託。
ノアール様との婚約解消と今後の話し合いのために王宮に出向いた時、偶然出会った彼女が突然悲鳴をあげて倒れ込み……即座に駆け込んできた騎士達によって私は捕縛された。
旅の中で聖女と恋仲になっていたノアール様は、私の言葉には耳を傾けもせず。
国としても英雄と呼べる実力を持つ聖女を国に繋ぎ止めたかった事から私の主張は一蹴された。
それから先は地獄だった。
地下牢に囚われ、何時の間にか〝悪魔〟と言う名の悪の化身とさて、人々は魔王の復活も私のせいだと声高に叫ぶ。
嫉妬から聖女を殺そうとしたと、国家転覆を企んでいたなどと荒唐無稽な冤罪をかけられ。
存在するハズの無い情報を吐かせるための拷問、暴力、辱め………そして、私の心は死んだ。
鞭で打たれようと。
爪を剥がされようと。
殴る蹴るの暴行を受けようと。
回復できるからと、指や手足を切断されようと。
辱めを受けようと。
何も感じなくなった。
牢の前に聖女やノアール様、国王陛下が来て何か言っていたけど、その言葉ももう聞こえない。
ただただ、早く死にたい。
一秒でも、一瞬でも早く楽になりたいと……
『記憶の統合が完了しました。
転生により、全ての生態情報が初期化……実行します』
そして、私の処刑が決まり。
奴隷よりもみすぼらしい格好で王都中を連れ回されて見世物にされ。
磔にされて、そしてやっと断頭台に立たされた……
人々に石を投げられようと。
〝悪魔〟と蔑まれ、罵声を浴びせられようと、最早どうでも良かった。
けど……もう既に枯れ果てたと思っていた涙が流れた。
余計な事を喋らないようにと潰された喉から、声にならない嗚咽が漏れた。
私の大切な家族も、私を守ろうとしてくれた使用人のみんなも、唯一私を庇ってくれた親友も。
全員が苦痛に歪んだ表情で、その首だけが晒されていた……
〝悪魔を殺せっ!!〟
醜い。
私は、こんなにも醜い奴らの幸せを守ろうと、必死になって辛く厳しい教育をこなして来たの?
こんな奴らの為に、みんなは殺されたの?
ふざけるな……!!
自分の中で死んだと思っていた心がドス黒い激情に染まって塗り潰されていく。
絶対に許さない。
たとえ何があったとしても──お前らの言う〝悪魔〟となって必ず報いを! 復讐してやるっ!!
断罪の刃が振り上げられ……その瞬間、私は……
『……転生が完了しました。
これにより、願いの全プロセスが終了します』
思い出した、私は……
この世界には存在しなかった概念。
異世界より召喚された聖女が広めた〝悪魔〟と言う名称で呼ばれた少女。
勇者にして大国アルタイル王国の王太子ノアールの元婚約者にして、筆頭公爵家の御令嬢であった少女が処刑された日。
後に聖炎祭と呼ばれる事となるその日。
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