最強幼女は惰眠を求む！ 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

第１５章 学園入学編

257話 実技試験です！ その１

「うぅ、何であんな事言っちゃったんでしょうか？」

　魔力量計測試験の試験会場では余裕ある態度を崩しませんでしたけど……不安です。
　アイリースさんとの一件で、余計な注目を集めてしまった様ですし。

「ふふふ、お嬢様なら大丈夫ですよ」

　最後の実技試験の試験会場に向かう道中。
　非常に機嫌が良いメルヴィーにギュッと抱きしめられる。

　これは可笑しい、明らかに可笑しい！
　さっきまではかなりイライラしてたのに、今では柔らかな聖母の様な微笑み。

　一緒に移動している一団の至る所から黄色い溜息が！
　このメルヴィーの笑顔で、一体何人の男子受験生が恋に落ちたのか……

　しかも、明らかに女性の声も大量に混じってるこの事実！
　流石は他者を魅了する吸血鬼！  その魔性の美は神ですら魅了するっ！！

「それにしても、この試験で真剣に戦いになるお嬢様のお姿を拝見できるとは考えておりませんでした。
　その点のみは、あのアイリースと言う者に感謝しなければなりません」

　な、なる程……だからスキップでもしそうな程、嬉しそうだったんですか。
　しかしメルヴィーもですけど、何で皆んな僕が戦う所を見たがるのでしょうか？  謎ですね。

「この学園の入学試験程度でお嬢様がお怪我する事はまずあり得ませんし。
　心置きなく、お嬢様の惚れ惚れする御技を拝見できます！
　ふふふ、帰ったら皆様にお謝りしなければなりませんね」

　おぉ！  メルヴィーが珍しくウキウキしてます！！
　もう十分に目立って注目を集めてますし、これは実技でも頑張らねばなりませんね！

　それで褒めてもらって。
　ご褒美でゴロゴロ権利と好きに時に好きな物を食べる権利を獲得するっ！
　完璧な計画！  何としても遂行しなければ！！

「皆さん、到着しました。
　こちらが実技試験の試験会場となります」

　ある程度の予想はしていましたが、やはり来ましたか……円形闘技場っ！！
　予想を裏切らないテンプレさん、流石です！

「この訓練場には学園長の手により幾重もの結界が張り巡らされており、我々教員でも１人で破壊するのは不可能。
　ナンバーズ高位の神々ですら破壊困難な程の強度を誇ります」

　何か先程も聞いたような説明ですね。
　統一神城の結界も壊してしまいましたし、多分ここも……
　試験官さんや教員の方々には悪いですけど、うん、細かい事は気にしないでおきましょう。

「この観覧席には一切の危害は及びませんので、心置きなく全力を尽くして下さい」

　闘技場内部もしっかりと空間拡張されていて、広さは十分。
　常人なら観客席から闘っている人を目視するのは厳しい程です。
　流石は全員が神に至った超越者クオリティーですね。

「学園内はこの様な訓練場が多数存在し、他の組みの受験生の方々はそちらで試験を受けています。
　試験は１人ずつ行いますが、順番によって有利不利はありませんのでご安心ください」

「試験官、１つ宜しいでしょうか？」

　闘技場の観覧席に座り、その観覧席の座席とは思えない座り心地の良さに感動している僕を睨みつつ、手を上げるアイリースさん。

「何でしょうか？  アイリースさん」

「実技試験と言うからには、戦闘を行うはずです。
　順番があるなら最後の方が相手の攻撃パターンなどを見る事ができ、有利となるのではないでしょうか？」

「アイリースさんの疑問は尤もですね。
　しかしご安心を、どれだけ見ようとも受験生レベルで太刀打ちできる相手ではありませんので」

　ほうほう、かなりの自信ですね。
　もしかして、この実技試験でも過去誰一人として相手を倒した受験生はいないのでしょうか？

「仮に勝利を収めれば、例え筆記や魔力計測が０点であったとしても合格は勿論、特待生も確実でしょう。
　この実技試験の相手はそれ程の強敵なのです」

　受験生と言えど、全員が超越者。
　そんな受験生程度の実力では、いくらその戦い方を見ようが勝てないと断言できる相手……楽しみですねっ！

「勿論、危なくなれば私を含めた教員が止めに入りますのでご安心下さい。
　他にご質問はありませんか？
　……では、実技試験の皆さんの相手をご紹介しましょう」

　訓練場の中央にデカデカと浮かび上がる巨大な魔法陣。
　なかなかにカッコいい演出！  
　今度アニクスでも武道大会を開催して、この演出をやってやりましょうっ！！

「こちらが、皆さんの相手となる……」

　転移で現れた、魔法陣に見劣りしない巨体。
　漆黒の体躯に、殺気立ち血走った黄色い眼。

　グルァァァアッ！

　低く背筋を凍らす様な重厚感のある唸り声、大きな牙が覗く口からは涎が滴り落ちる。
　そして、何より特徴的なのが……

「ケルベロスです」

　３つの首を持つ地獄の番犬の鋭い視線が、試験官さんの背後から僕達、受験生を捉えた。